制度・ニュースメモ02|LIFEと介護過程から学びに変える

LIFEのデータ入力はなぜしなければならない?

LIFEと聞くと、まず「入力しなければならないもの」という印象を持つ方もいるかもしれません。

・評価項目を確認する
・期限までに入力する
・加算の要件に関わるため、漏れがないように提出する
・入力担当者を決める
・誰がどこまで確認するのかを調整する

現場が忙しい中では、LIFEが「ケアを良くするための仕組み」というより、「入力する業務」として受け止められることもあります。

LIFEのデータ入力は、現場の業務負担?

特に導入初期には、システムに慣れること自体が大きな負担でした。

・何を入力すればよいのか。
・誰が入力するのか。
・入力した情報が、どのように現場に返ってくるのか。
・返ってきた情報を、誰が、どの会議で、どう扱えばよいのか。

そこが見えにくいまま進むと、「結局、加算のための作業なのではないか」と感じるのも自然です。ただ、活用事例を見ていくと、入力された情報やフィードバックは、現場の気づきや実践知と重ねることで、介護過程を振り返る材料にはなり得ます。

このページのポイント

大切なのは、LIFEのデータそのものよりも、そのデータをどう読み、どう現場の支援に戻すかです。

・LIFEは、入力作業そのものが目的ではない
・フィードバックは、現場の実践を振り返る材料になり得る
・LIFEを有用にできるかどうかは、専門性と実践知にかかっている
・感覚知に加えて、観察、記録、評価、対話を重ねることが重要である
・LIFEは介護過程を置き換えるものではなく、介護過程を深めるための一つの材料として捉えられる

LIFEは何を目指しているのか

LIFEは、科学的介護情報システムのことです。介護現場で評価・記録された利用者の状態等の情報を提出し、その情報をもとにフィードバックを受ける仕組みです。LIFEは、PDCAサイクルの中で活用するものとして整理されています。

つまり、利用者の状態を評価し、記録し、情報を提出する。
その後、返ってきたフィードバックを、ケアプランや介護計画と照らし合わせて確認する。
そして、行った支援を振り返り、必要に応じてケアを見直す。

この流れは、介護過程ととても近い

介護過程でも、まず情報を集める
アセスメント
課題の整理
計画の立案
ケアの実施
評価、モニタリング
そして、必要に応じて計画や支援を見直す

LIFEは、この流れの中にある「評価」「記録」「フィードバック」「見直し」を支える材料として見ることができます。

LIFEが介護過程そのものを代わりにやってくれる?

LIFEに入力するだけで、アセスメントが深まるわけではありません。フィードバックを見るだけで、ケアが変わるわけでもありません。そこに必要なのは、現場で利用者を見ている職員の気づき、専門職としての解釈、チームでの対話、そして支援を見直す仕組みです。

事例1 口腔ケアの変化に気づく

LIFEの活用事例の中には、口腔ケアに関するものがあります。

ある施設では、LIFEのフィードバックを確認する中で、「歯の汚れあり」の割合が増えていることに気づきました。もしここで、「数字が増えている」という確認だけで終われば、LIFEは単なる報告資料にとどまります。

しかし、その事例では、そこから現場の口腔ケアの状況を振り返り、職員への注意喚起や改善状況の確認につなげています。この流れを、介護過程の視点で見るとどうなるでしょうか。まず、「歯の汚れあり」が増えているという情報があります。次に、その背景を考えます。

・口腔ケアの手順は共有されているか
・介助が必要な利用者に、十分な支援が行えているか
・本人の拒否や不安はないか
・認知機能や身体機能の変化が影響していないか
・職員体制や時間帯によって、ケアのばらつきが出ていないか
・記録の仕方や評価の仕方が変わっただけではないか

こうした問いが出てきます。

数値化されたものをどう活用するか

ここで必要なのは、数字をきっかけに、現場で何が起きているのかを見に行くことです。

口腔ケアは、単に清潔を保つためだけのものではありません。食べること、話すこと、表情、誤嚥予防、感染予防、生活の質ともつながります。だからこそ、「歯の汚れあり」という一つの情報から、本人の生活や支援のあり方を振り返ることができます。

この事例では、LIFEが答えを出したのではありません。LIFEのフィードバックが、現場に問いを返したのだと思います。

事例2 ADLのデータと現場感覚のズレ

もう一つ、ADLに関する事例があります。ある事業所では、LIFEの事業所フィードバック上、「維持」の割合が高く出ていました。しかし、現場の実感としては、「改善している利用者もいるのではないか」という違和感がありました。

この違和感が、とても重要です。もしフィードバックだけを見れば、「維持が多い」という結果で終わるかもしれません。しかし、現場には日々の関わりがあります。

・以前より立ち上がりが安定している
・歩行器を使えば移動できそうな場面が増えている
・本人も少し自信を持ち始めている
・リハビリ場面ではできている動作が、日常生活ではまだ使われていない
・転倒を心配して、職員が車椅子介助を続けている

こうした現場の感覚があります。

事例では、多職種で検討する中で、リハビリ職と介護職の間で自立度の見方にズレがあるのではないか、介護職が転倒予防の観点から車椅子介助を続けているのではないか、といった仮説が立てられています。そして、日中の一部時間帯で歩行器を使う「お試し期間」を設けるなど、支援方法の見直しにつなげています。

LIFEとチームケアを考える

今回のケースでも、LIFEのフィードバックと現場感覚のズレが、チームで考えるきっかけになっています。このズレをどう扱うかに、専門性が表れます。

データが正しい。
現場の感覚が正しい。

そのどちらかを決めることが目的ではありません。大切なのは、なぜズレが生じているのかを考えることです。

・評価の視点が職種によって違うのか
・できる能力と、実際に生活の中で使っている動作に差があるのか
・安全への配慮が、本人の能力発揮を妨げていないか
・支援方法を少し変えれば、本人の生活の可能性が広がるのか

こうした問いを立てることが、介護過程の深まりにつながります。

LIFEのデータは、現場の実践に何を与えるのか

介護の現場には、数字や様式だけでは捉えきれない気づきがあります。

・朝の声かけに対する返事が、いつもより少し弱い。
・食事の手が止まる時間が、昨日より長い。
・立ち上がるときに、足を出すタイミングが少し遅い。
・入浴を嫌がる理由が、単なる拒否ではなく、寒さや不安にあるのかもしれない。
・いつも穏やかな人が、今日は職員の声かけに強く反応している。

こうした変化は、日々関わっている職員だからこそ気づけるものです。それは、現場で積み重ねられてきた感覚知であり、実践知でもあります。ただ、その気づきが一人の中だけに留まっていると、次の勤務者やチーム全体には伝わりにくいことがあります。

だからこそ、感覚知に加えて、観察したことを言葉にする力が必要になります。「なんとなく元気がない」だけでは、次の支援につながりにくいかもしれません。しかし、「朝食時、声かけへの返答が小さく、食事摂取が半量程度で止まった。右手で箸を持つ動作に時間がかかっていた」

と記録されていれば、次の職員も同じ視点で確認できます。そして、その記録をもとに、声かけの方法、食事環境、体調変化、介助方法、他職種への相談の必要性を考えることができます。

根拠に基づく介護とは、感覚知や経験知を脇に置くことではない

つまり、根拠に基づく介護とは、感覚知や経験知を脇に置くことではありません。

・現場で生まれた気づきを、チームで共有できる言葉にすること
・記録をもとに、支援の結果を振り返ること
・振り返りを通して、次の関わりを少しずつ整えていくこと

現場実践で、観察、記録、評価、対話を重ねていくことで、介護の実践はチームで共有できる専門性になっていきます。

LIFEを介護過程の視点で考える

LIFEは、現場の感覚知を置き換えるものではありません。むしろ、現場で積み重ねられてきた気づきに、評価、記録、フィードバック、対話を重ねるための材料です。入力された情報だけで、ケアが良くなるわけではありません。

・その情報をどう読み取るか
・現場の違和感とどう照らし合わせるか
・多職種でどのように解釈するか
・次の支援にどう生かすか

そこに、介護職の専門性と実践知が表れます。フィードバックを、アセスメントや計画、実施、評価の流れに位置づけることです。

たとえば、口腔ケアの事例であれば、「歯の汚れあり」という情報を、本人の生活、食事、認知機能、介助方法、職員体制、記録の視点と重ねて考えることです。

ADLの事例であれば、「維持」というデータと「改善している気がする」という現場感覚のズレを、多職種で検討し、支援方法の見直しにつなげることです。

このように考えると、LIFEは入力作業で終わるものではなく、介護過程を深めるための材料になっていきます。

専門性と実践知が問われる

LIFEの活用で問われるのは、フィードバックされた返情報をどう読み解くかです。

・数字の変化を見て、現場のどの場面と関係しているのかを考える。
・現場の違和感を、記録や評価と照らし合わせる。
・職種ごとの見方の違いを、チームで共有する。
・本人の生活にとって、どの支援が望ましいのかを考える。
・必要であれば、支援方法を試し、再評価する。

介護過程と専門性

この専門性は、教科書の言葉だけで成り立つものではありません。

・日々の関わりの中で積み重ねられてきた実践知
・利用者の小さな変化に気づく感覚
・生活の中で本人を見続けてきた経験
・それをチームで共有し、言葉にし、次の支援につなげていく力

そこに、介護の専門職としての力があります。

福祉教育ラボとしての整理

福祉教育ラボでは、LIFEを単なる制度情報としてではなく、介護過程を考えるための素材として見ていきたいと考えています。

LIFEは、入力業務として受け止められやすい面があります。その実感は、現場の忙しさや導入初期の負担を考えれば、とても自然なものです。しかし、LIFEのフィードバックや活用事例を見ていくと、そこには別の可能性も見えてきます。LIFEは、現場に答えを与えるものではありません。むしろ、現場に問いを返すものです。

・なぜこの数値になっているのか
・現場の実感と合っているのか
・職種によって見方に違いはないか
・本人の生活にとって、今の支援は適切なのか
・次に何を試し、何を記録し、何を評価するのか

この問いに向き合うことで、LIFEは介護過程という専門性と合致していきます。

参考情報

・厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」
厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)説明会資料」
厚生労働省「LIFEフィードバック活用事例」
厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)を活用した介護過程実践」