介護の自立支援とは?|「できることを増やす」だけではない本人主体の支援を考える

学びの整理 自立支援 本人主体 意思決定支援 リスクマネジメント 情報確認:2026年8月25日
PERSON-CENTERED SUPPORT|「何ができるか」より「何のために」
自立支援は、
「できることを増やす」だけなのか

「できることは、自分でやってもらいましょう」

介護現場ではよく聞く言葉です。 本人の能力を維持し、活かすことは大切です。

しかし、それだけで自立支援を説明できるのでしょうか。

時間をかければ一人で着替えられる。 けれども、それだけで疲れて朝食や人との会話を楽しめない。

転倒リスクが高い。 けれども本人は「自分で歩いてトイレへ行きたい」と望んでいる。

誤嚥リスクがある。 けれども本人には「もう一度、お寿司を味わいたい」という思いがある。

こうした場面から、 自立支援とは何を目標にする支援なのかを考えます。

ARTICLE CORE
本人がどのように暮らしたいのかを起点に、
その実現に必要な能力・環境・支援を一緒に考える。

厚生労働省の2026年改正後の介護予防ケアマネジメントでも、 心身機能の改善だけでなく「活動」「参加」を含め、 本人が生きがいや役割を持って生活できるよう支援することが重視されています。

「目標とする生活」についても、 本人自身の意思・意欲を尊重し、 生きがいや楽しみを話し合いながら 「その人らしい自己実現」を具体化する考え方が示されています。

一次資料: 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン等」

1 能力向上は「手段」

できることを増やすこと自体を、生活の最終目標にしません。

2 安全も大切な条件

本人主体を理由に、重大なリスクを放置するわけではありません。

3 本人と専門職で考える

専門知と本人の価値・希望をすり合わせ、実現可能な方法を探します。

1|自立支援とは「できることを増やすこと」なのか

心身機能が改善することは大切です。

一人で立てるようになった。 歩ける距離が伸びた。 服を自分で着られるようになった。 食事を自分で食べられるようになった。

こうした変化が本人の生活の可能性を広げることがあります。 そのため、能力を維持・改善する支援を否定する必要はありません。

しかし、能力の改善そのものが自立支援の最終目的になると、 「目的」と「手段」が逆転することがあります。

厚生労働省の現行の介護予防ケアマネジメントでは、 まず「本人が今後どのような生活を送りたいか」を具体化し、 その実現のために解決すべき課題や支援方法を検討する構造になっています。 本人の「○○できるようになりたい」「手伝ってもらえば○○したい」といった 意欲・意向を確認することも示されています。

能力向上は、自立支援の重要な「手段の一つ」

「能力訓練は自立支援ではない」という意味ではありません。 問われるのは、その能力を高めることが 本人のどのような生活につながるのか、という点です。

一次資料: 厚生労働省・介護予防ケアマネジメント関連資料

2|自立支援は「本人がどんな生活をしたいか」から始まる

支援者には専門知があります。

「この筋力なら、もう少し練習すれば歩ける」

「この人なら、一人で着替えられる」

「この運動をした方が身体機能にはよい」

そうした専門的な見立ては必要です。

しかし、 「できるのだから自分でしなければならない」 へ変わった瞬間、 専門職側が設定した目標が本人の生活目標より上位に置かれる危険があります。

自立支援を考える順序
本人が望む生活
何がその実現を妨げているのか
能力・環境・支援体制をアセスメント
専門職として具体策を提案
本人の意向とすり合わせる

厚生労働省のケアマネジメント様式でも、 専門職がアセスメントから提案する目標・具体策と、 本人・家族の意向を確認し、 相違点を踏まえて最終的な目標を合意する構造になっています。

専門職の提案は必要です。しかし、それは本人の義務ではありません

専門職の「こうした方がよい」という見立てを、 そのまま利用者の「こうしなければならない」へ変えない。 ここが、本人主体の自立支援を考える重要な分岐点です。

一次資料: 厚生労働省・介護予防ケアマネジメント関連資料

3|事例1 「一人で着替えられる」ことは、本当にこの人の自立なのか

CASE 01|着替え
時間をかければ更衣できる。でも本人が望む朝の時間が失われている

片麻痺があり、時間をかければ一人で服を着られる利用者がいます。

職員は 「できることは自分でしてもらう方が自立支援になる」 と考え、朝の更衣を見守っていました。

ところが、着替えるだけで疲れ切り、 朝食が進まず、楽しみにしていた他の利用者との会話にも加われなくなっていました。

本人が望んでいたのは、 「一人で着替えを完了すること」ではなく、 「朝はゆっくりご飯を食べて、みんなと話したい」という生活でした。

STEP 1|本人の望み 「どんな朝を過ごしたいのか」を確認する

更衣の自立だけでなく、朝食、交流、疲労など生活全体を見ます。

STEP 2|アセスメント 更衣能力と生活への影響を一緒に評価する

更衣時間、疲労、身体機能、認知機能、食事量、交流、本人の価値観等を確認します。

STEP 3|専門職提案 「全部自分で」以外の方法を出す

部分介助、衣服の工夫、更衣時間の変更、OT等による動作方法の検討などが考えられます。

STEP 4|リスク・不利益 介助量を増やすことの影響も考える

能力を使う機会が減る可能性と、全て自力で行うことで他の生活活動が失われる可能性の両方を見ます。

STEP 5|本人とのすり合わせ 本人が何を大切にしたいのかを確認する

更衣と朝食を単純な二択にせず、両方をできるだけ残す支援方法を探ります。

STEP 6|実施・再評価 生活全体がどう変わったかを見る

朝食、疲労、交流、更衣能力などを確認し、必要なら支援方法を変更します。

「本人の力を最大限使わせる」ことが、いつも最善とは限りません

本人の力を、本人が大切にしたい生活のためにどう使うのか。 その視点まで含めて、自立支援を考える必要があります。

4|自立支援とリスクマネジメントは対立するのか

転倒や誤嚥のように、 生命・身体への危険が関係する場合、 本人主体の支援はさらに難しくなります。

しかし、 「安全」と「本人主体」を最初から反対側に置く必要はありません。

厚生労働省の 「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン 第2版」 では、本人の意思形成・意思表明だけでなく、 その意思を実現するための支援まで含めて意思決定支援としています。

一方で、本人に見過ごすことのできない重大な影響が生じる可能性がある場合には、 その重大性や発生可能性等を慎重に検討する必要があります。

本人主体

本人が何を望み、何を大切にしているのかを支援の中心に置く。

リスクマネジメント

危険を評価し、説明し、低減策や代替案を専門職として検討する。

問いを「安全か、自立か」から変える

「本人が望む生活を実現するために、 どの安全を、どのように確保するか」 と考えることで、両者を一つの支援プロセスとして扱えます。

一次資料: 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン 第2版」

5|事例2 転倒リスクがある。それでも「歩きたい」

CASE 02|歩行
「また転ぶかもしれない」と「自分でトイレへ行きたい」の間で

転倒を繰り返している高齢者がいます。

職員は、転倒や骨折を心配しています。 一方、本人は 「自分で歩いてトイレへ行きたい」 と望んでいます。

World Guidelines for Falls Prevention and Management for Older Adultsでは、 高齢者の転倒予防について、 多因子的なリスク評価を行い、 本人の目標・価値観・好みを取り入れた shared decision makingによって個別の介入を組み立てることが推奨されています。

国際ガイドライン: World Guidelines for Falls Prevention and Management for Older Adults

STEP 1|本人の望み 「なぜ歩きたいのか」を確認する

トイレ、食堂、散歩、買い物など、歩行の先にある生活目標を確認します。

STEP 2|アセスメント 転倒リスクを多面的に評価する

歩行、バランス、筋力、薬剤、起立性低血圧、視覚・聴覚、認知、履物、環境、補助具等を確認します。

STEP 3|専門職提案 「歩かない」以外の安全策を探す

PT・OT・看護・介護・医師等で補助具、環境調整、運動、服薬、見守り方法等を検討します。

STEP 4|リスク 転倒をゼロにはできない場合もある

一方、歩行を全面的に制限することで活動や本人の生活目標が損なわれる可能性も考えます。

STEP 5|本人とのすり合わせ 本人がリスクをどう捉えているか確認する

危険と低減策を分かる形で説明し、本人が何を優先したいのかを一緒に考えます。

STEP 6|実施・再評価 歩行状況とリスクを継続的に確認する

ふらつき、転倒、本人の不安、筋力、体調、補助具、環境等を再評価します。

「転倒しても本人がよいと言ったから」で終わらせない

本人のリスク許容を意思決定の一要素として確認することと、 専門職が安全管理の責任を手放すことは別です。

6|本人は、どこまでのリスクを受け入れたいのか

本人がリスクをどう考えているかを確認することは重要です。

しかし、 「本人がいいと言ったから自己責任」 と整理するのは適切ではありません。

危険の内容 何が起こる可能性があるか
重大性 起きた場合の影響はどの程度か
発生可能性 どの程度起こり得るのか
低減策 安全性を高める方法はあるか
代替案 別の方法で希望を実現できないか
本人の優先順位 本人は何を大切にしたいのか

厚生労働省の意思決定支援ガイドラインでは、 本人の意思実現を支える際にも、 必要な情報提供、チームでのリスク共有、 社会資源の活用、記録、モニタリング、再評価が重視されています。

リスクのある選択を支えることは、リスクを本人へ押し付けることではありません

専門職・組織も支援責任を担いながら、 本人の意思と安全を一緒に考える必要があります。

7|事例3 誤嚥リスクがある。それでも「お寿司を食べたい」

CASE 03|食事
現在の嚥下状態では通常のお寿司は難しい。でも本人には食べたい理由がある

嚥下機能が低下し、誤嚥リスクが高くなっている利用者がいます。

本人は 「もう一度、お寿司が食べたい」 と話しています。

ここで、 「危ないので禁止です」 と終わることも、 「本人が食べたいのだから食べてもらう」 とすることも、 十分な意思決定支援とはいえません。

日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌の質的研究では、 本人・家族の食事への希望を確認し、 摂食嚥下機能だけでなく生活環境や介護力も評価しながら、 本人・家族・多職種で実現可能な目標をすり合わせる支援が報告されています。

査読研究: 日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌 「嚥下外来に関わる多職種の在宅療養高齢者と家族への支援の現状」

STEP 1|本人の望み 「寿司を食べたい」の意味を確認する

一人前食べたいのか、味を楽しみたいのか、家族と食卓を囲みたいのかを確認します。

STEP 2|アセスメント 現在の摂食嚥下機能を評価する

全身状態、覚醒、口腔、嚥下機能、姿勢、食形態、栄養、生活環境等を専門的に確認します。

STEP 3|専門職提案 「通常の寿司」以外の選択肢も検討する

食形態、量、味わい方等について、専門評価に基づき可能な方法を検討します。

STEP 4|リスク 誤嚥・窒息等の危険を具体化する

誤嚥、窒息、肺炎、低栄養等のリスクと、食べる楽しみが失われる側面の両方を見ます。

STEP 5|本人とのすり合わせ 「危険です」で終わらず選択肢を共有する

できること・難しいこと・代替案を本人と共有し、本人が何を大切にしたいのかを確認します。

STEP 6|実施・再評価 状態と本人の意思を繰り返し確認する

むせ、咳、疲労、摂取量、全身状態、本人の反応等を確認し、必要なら支援方法を変更します。

本人主体とは、必ず本人の希望どおりの結果にすることではありません

専門評価の結果、 現時点では本人が希望する形での経口摂取が難しいという結論になる場合もあります。 大切なのは、本人の希望を検討の外へ追い出さず、可能性を一緒に検討することです。

海外専門職ガイダンス: Royal College of Speech and Language Therapists 「Eating and drinking with acknowledged risks」
※日本の法制度ではなく、リスクを認識した経口摂取の意思決定に関する海外の多職種ガイダンスとして参照しています。

8|専門職の役割は「あなたはこうしなければならない」と決めることではない

専門職には専門知があります。

だからといって、 「何でも本人に決めてもらえばよい」 という話でもありません。

厚生労働省の介護予防ケアマネジメントでは、 専門職はアセスメントに基づいて目標・具体策を提案し、 その後で本人・家族の意向を確認し、 相違点を踏まえて最終的な目標を設定します。

専門的にアセスメントする
可能性を具体的に示す
本人には見えにくいリスクを説明する
複数の選択肢・代替案を提示する
環境や支援方法を調整する
本人の意向との違いを確認する
多職種で支援方法を検討する
実施後も評価し直す
専門職の提案 = 本人の「しなければならない」ではありません

「歩いた方がよい」が「あなたは歩かなければならない」にならない。

「自分で着替えられる」が 「できるのだから全部一人で着替えなければならない」にならない。

専門職の知識や技術は、 本人を「専門職が考える正しい生活」へ導くためではなく、 本人が望む生活の可能性を広げるために使います。

9|「本人主体」と「放任」は違う

本人主体という言葉も、慎重に使う必要があります。

「本人がそう言ったから」 と専門職が支援責任を手放すことは、 本人主体とは違います。

本人主体ではないもの

本人が希望したので、リスク評価も環境調整もせず本人の自己責任とする。

本人主体の支援

本人の意思を中心に置きながら、専門職が評価・情報提供・リスク低減・再評価まで担う。

厚生労働省の意思決定支援ガイドラインも、 本人の意思を尊重すると同時に、 重大な影響が想定される場合の慎重な検討、 支援過程の記録、 モニタリング、 再確認を重視しています。

本人主体と専門職責任は両立します

むしろ、本人が自分の生活について選択できるよう、 専門知を使って情報・環境・支援を整えることが専門職の役割です。

10|自立支援は「一度決めたら終わり」ではない

人は変化します。 生活も変化します。 本人の希望も変わります。

着替えの事例なら、 疲労が増えれば介助量を変える必要があるかもしれません。

歩行なら、 筋力、服薬、体調、転倒経験、環境が変わればリスクも変わります。

食事なら、 嚥下状態や全身状態が変われば、可能な食形態も変わります。

本人自身も、 「前は自分でやりたかったけれど、今は手伝ってほしい」 と考えが変わることがあります。

厚生労働省の意思決定支援ガイドラインでも、 本人の意思・選好は変化する可能性があるため、 支援過程を記録し、繰り返し確認することが重視されています。

「自立度」を固定するのではなく、今の本人を見る

「この人は自立している」「この人は介助が必要」と固定するのではなく、 今の本人にとって、今の生活で、何を大切にしたいのかを繰り返し確認します。

11|3つの事例に共通する、自立支援のプロセス

着替え、歩行、食事。 一見すると別の問題ですが、 支援の考え方には共通する流れがあります。

本人主体の自立支援|9つのプロセス
1 本人の望む生活

何ができるかより先に、どんな生活を送りたいか確認する。

2 アセスメント

身体、心理、認知、環境、生活歴、支援体制を確認する。

3 阻害要因を整理

能力、環境、道具、制度、リスク等を分けて考える。

4 専門職提案

専門知を使って目標、具体策、低減策を提示する。

5 本人とのすり合わせ

専門職の提案と本人の意向の違いを確認する。

6 リスクを共有

利益、危険、代替案、実施しない場合の影響も伝える。

7 一緒に決める

本人と必要な多職種で実現可能な方法を決める。

8 実施する

合意した方法を日常生活へ落とし込む。

9 再評価する

結果・状態・本人の意思を確認し、必要なら最初から考え直す。

リハビリテーション分野のsystematic reviewでも、 goal settingへ本人が参加し、 shared decision makingを行う重要性が整理されています。 一方、実際には十分にpatient-centredな目標設定を実現する難しさも報告されています。

研究資料: Systematic review|Goal setting and shared decision making in rehabilitation

12|福祉教育ラボの視点|「できること」ではなく、「何のために」を問う

福祉教育ラボの視点
「自分でできる」は大切。
でも、それ自体が生活の最終目的ではありません。

身体機能を維持することも大切です。

安全を守ることも大切です。

しかし、 「転ばないこと」だけが人生の目標ではありません。

「誤嚥しないこと」だけが食事の意味でもありません。

本人が、 どこで暮らしたいのか。 誰と過ごしたいのか。 何を楽しみたいのか。 何を自分で続けたいのか。 どこまで支えてほしいのか。

そこを先に考える。

その生活のために能力を高めた方がよいなら、専門職は力を尽くす。

環境を変えた方がよいなら、環境を変える。

道具が必要なら使う。

一部を介助した方が生活が広がるなら、介助する。

リスクを小さくできるなら、小さくする。

どうしても残るリスクについては、本人と一緒に考える。

そして、本人の状態や希望が変われば、また考え直す。

専門職の知識や技術は、
利用者を「専門職が考える正しい生活」へ導くためではなく、
本人が望む生活の可能性を広げるために使う。

自立支援を考えるとき、 「この人は何ができますか」 という問いだけでなく、

「この人は、何のためにそれをしたいのでしょうか」

と問い直す。

そこから、支援の形が変わることがあります。

自立支援とは、 できることを最大化することではなく、 本人が自分の生活の主人公であり続けられるように、 本人の力、専門職の力、環境、制度、周囲の支援を組み合わせていくこと。

福祉教育ラボでは、そう捉えていきたいと思います。

よくある質問|介護の自立支援

自立支援とは、自分でできることを増やすことですか?

能力を維持・改善することは、自立支援の重要な手段の一つです。 ただし厚生労働省の介護予防ケアマネジメントでは、 心身機能だけでなく活動・参加を含め、 本人が望む生活や自己実現を目標として支援することが重視されています。

できることは、全部本人にしてもらった方がよいですか?

一律には言えません。 本人が何を大切にしているか、その行為による疲労や、 生活全体への影響を含めて考える必要があります。 一部を介助することで、本人がより大切にしている活動へ力を使える場合もあります。

転倒リスクが高ければ、歩かない方が安全ではありませんか?

転倒リスクの低減は重要です。 一方、国際的な転倒予防ガイドラインでは、 本人の目標・価値・好みも取り入れ、 多因子的な評価とshared decision makingに基づき、 個別の転倒予防策を検討することが推奨されています。

本人が「転んでもいいから歩きたい」と言えば、自由に歩いてもらえばよいですか?

本人の希望だけで専門職の支援を終了するものではありません。 転倒リスクを評価し、本人へ説明し、 補助具、環境調整、見守り方法等の低減策を検討し、 実施後も再評価する必要があります。

誤嚥リスクがある場合、好きなものは禁止した方がよいですか?

一律には決められません。 まず専門的な嚥下評価が必要です。 本人が「食べたい」と言っているものが本人にとって何を意味するのかも確認し、 多職種で実現可能な方法があるかを検討します。

本人が食べたいと言えば、何でも食べてもらうのが本人主体ですか?

いいえ。 本人の意思は重要ですが、重大なリスクが想定される場合には、 リスクを評価・共有し、代替案や低減策を検討する必要があります。

本人主体と安全管理は両立できますか?

両立を目指すことが重要です。 本人が望む生活を起点に、 専門職が安全上のリスクを評価し、 低減策や代替案を提示しながら、 本人と一緒に実現可能な方法を検討します。

専門職の意見と本人の希望が違ったら、どちらを優先しますか?

単純にどちらかを優先するのではなく、 専門職はアセスメントに基づく提案とリスクを説明し、 本人は自身の価値や生活目標を伝えます。 その相違点を確認し、実現可能な目標を一緒に検討します。

本人が専門職から見て合理的ではない選択をしたらどうしますか?

支援者側の価値観だけで直ちに否定せず、 本人が何を大切にしているのか、 どのようにその意思が形成されたのかを確認します。 重大な影響が想定される場合は、その重大性や発生可能性を慎重に検討し、 多職種で支援方法を考えます。

一度決めた支援方針は、そのまま続けるべきですか?

本人の状態、生活環境、リスク、希望は変化します。 実施後も観察・記録・再評価を行い、 本人の意思を繰り返し確認しながら支援方法を見直します。

一次資料・専門資料・研究

本記事は2026年8月25日時点で確認できる厚生労働省資料、 国内外の専門ガイドライン、査読研究等をもとに構成しています。 転倒・摂食嚥下等の個別リスクについては、 必ず本人の状態を評価した専門職・多職種チームで検討してください。

  1. 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン等」 本人の望む生活、意欲・意向、活動・参加、専門職提案と本人との合意形成等。
  2. 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン 第2版」 本人の意思形成・意思表明・意思実現、リスク、記録、モニタリング、再確認等。
  3. World Guidelines for Falls Prevention and Management for Older Adults 多因子的転倒リスク評価、本人の目標・価値・好み、shared decision making等。
  4. 前川一恵ほか 「嚥下外来に関わる多職種の在宅療養高齢者と家族への支援の現状」 本人・家族の食事への意向、摂食嚥下評価、生活環境、多職種による目標のすり合わせ。
  5. RCSLT「Eating and drinking with acknowledged risks」 誤嚥等のリスクを認識した経口摂取に関する海外多職種ガイダンス。
  6. Goal setting and shared decision making in rehabilitation: a systematic review リハビリテーションにおける本人参加型目標設定とshared decision making。