障害児支援の新研修体系とは?2027年度から全国展開|全員受講・免除・2029年度まで整理

学びの整理

障害児支援に携わる人の「学び方」が、全国共通の仕組みとして整えられようとしています。

こども家庭庁が示しているのは、基礎的な学びから、事業所のリーダー、さらに地域のコア人材へと段階的に成長していく研修体系です。

この記事では、2026年度から始まった準備を起点に、2027年度、2028年度、2029年度へ何が予定されているのか、そして「全員受講なのか」「既存研修で免除されるのか」といった現場の疑問まで整理します。

QUICK ANSWER
最初に結論|研修体系は2026年度の指導者養成から、段階的に動き始めています
2026年度 国が自治体職員等を対象とした人材育成指導者養成研修を実施 準備段階
2027年度 障害児支援基礎・実践研修の全国展開を開始予定 開始予定
2028年度 障害児支援リーダー研修を開始予定 開始予定
2029年度 障害児支援コア人材研修を段階的に開始することを想定 開始想定
この記事を読む前に

2027年度以降の内容は、2026年9月時点では令和9年度予算の概算要求や検討会報告書などで示されている予定・想定を含みます。「2027年度から新しい法定研修が全職員に一斉義務化される」と決定したわけではありません。決定事項と今後具体化する事項を分けて読んでください。

なぜ、障害児支援に全国共通の研修体系をつくるのか

児童発達支援や放課後等デイサービスをはじめ、障害児支援の現場にはさまざまな専門職が働いています。

保育士、児童指導員、社会福祉士、心理職、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職など、それぞれが異なる専門性や経験を持っています。

この多様性は、障害児支援の大きな強みです。

一方、障害児通所支援を中心に事業所数・利用者数が増える中、国として人材育成が十分に体系化されておらず、「何を、どの段階で学ぶのか」は各事業所や地域の取組に委ねられてきました。

こども家庭庁の検討会では、全国どの地域でも質の高い障害児支援を提供するため、障害児支援に共通する理念・価値・知識・技術を体系的に学べる仕組みが必要だと整理しています。

全員を「同じ専門職」にする仕組みではありません

それぞれの専門性を生かしながら、その前提として「こどもをどう捉えるか」「誰を主体として支援するか」「権利や倫理をどう考えるか」といった共通の土台をつくることが、新しい研修体系の大きな目的です。

公式には「3階層」、基礎・実践を分けると実質4段階

検討会報告書では、新しい研修体系を「3階層による段階的な研修体系」と整理しています。

1

基礎・実践研修Ⅰ

障害児支援に従事し始めた段階。支援者としての基本姿勢や権利、倫理などを学びます。

2

基礎・実践研修Ⅱ

本人支援を中心に担う段階。発達、アセスメント、家族支援、地域連携などへ広げます。

3

リーダー研修

事業所の中心として、多職種をつなぎ、チームで支援する力を高めます。

4

コア人材研修

一つの事業所を越え、地域の支援者・関係機関をつなぐ役割を担います。

公式には「基礎・実践研修」「リーダー研修」「コア人材研修」の3階層ですが、基礎・実践研修がⅠとⅡに分かれるため、現場から見ると実質4段階の成長過程として捉えると分かりやすいでしょう。

研修 主な対象者像 実施時間の目安 実施主体
基礎・実践研修Ⅰ 障害児支援に従事し始めた人 約7時間/7科目 事業者
基礎・実践研修Ⅱ 主に本人支援を中心に担う人 約22時間/22科目 事業者
リーダー研修 事業所で中心的役割を担う人 約37~43時間/19科目+演習2日間×2 都道府県・指定都市
コア人材研修 地域で中心的役割を担う人 約32~40時間/12科目+演習2日間×2 都道府県・指定都市

基礎・実践研修Ⅰ|まず「支援者としてどうあるか」を学ぶ

基礎・実践研修Ⅰは、障害児支援に従事し始めた人を主な対象として想定しています。

目安は約7時間、7科目です。

特徴的なのは、最初から障害特性別の支援技法だけを学ぶ構成にはなっていないことです。

こどもの権利、障害児支援の意義、支援者としての基本姿勢や倫理、安全管理、虐待防止など、障害児支援を行ううえでの土台となる内容が置かれています。

POINT
「どう支援するか」の前に、「誰を中心に支援するのか」を学ぶ

技術は大切です。しかし、何のために使う技術なのかという土台がなければ、本人を支えるためではなく、本人を支援者側の都合へ合わせる手段にもなり得ます。研修の入口に権利や倫理が置かれている意味は小さくありません。

基礎・実践研修Ⅰの受講期間は、障害児支援に初めて従事する人について、入職後から最長半年程度までが基本的なイメージとして示されています。

基礎・実践研修Ⅱ|「障害を知る」から「一人のこどもを理解する」へ

基礎・実践研修Ⅱでは、主に本人支援を中心とした役割を担う人を想定し、より実践的な内容へ進みます。

目安は約22時間、22科目です。

発達や障害特性の理解だけでなく、アセスメント、本人支援、家族支援、地域支援・地域連携、チームアプローチなどへ学びが広がっていきます。

報告書では、倫理的姿勢を持ちながら、こどもの発達や特性を理解し、「ひとりのこども」として個々のニーズに応じた支援を行うことが重視されています。

例えば、自閉スペクトラム症という診断を知ることは、支援を考えるための大切な情報です。

しかし、それだけでは、その子が何を好きなのか、誰といると安心するのか、どんなときに力を発揮できるのか、何を伝えようとしているのかまでは分かりません。

「障害について知ること」と「そのこどもを理解すること」は同じではありません。

その二つをつなぎ、実際の支援へ落とし込む段階が、基礎・実践研修Ⅱだと考えると分かりやすいでしょう。

2028年度開始予定|障害児支援リーダー研修

基礎・実践研修の次に位置づけられているのが、障害児支援リーダー研修です。

2027年度概算要求では、2028年度からの開始を予定し、その前年度に研修実施体制の構築、指導者人材の養成、教材整備、研修の質の確保・向上などを進める方向が示されています。

リーダー研修は約37~43時間。約19科目の講義に加え、2日間程度の演習を2回行う構成が想定されています。

しかも、演習を受けて終わる設計ではありません。

1 講義・演習で学ぶ 事業所のリーダーとして必要な知識・視点を学びます。
2 一定期間、現場で実践する 研修内容を実際の支援やチーム運営へ戻します。
3 次の演習で成果と課題を振り返る 実践した結果を共有し、次の改善につなげます。

ここでいうリーダーは、単に勤務年数が長い人や役職者という意味ではありません。

包括的なアセスメントを行い、こどもと家族のニーズを捉え、多職種による支援を調整し、他の職員へ助言しながら必要な関係機関と連携することが期待されています。

リーダー=「指示を出す人」だけではない

異なる専門性や情報をつなぎ、チームとして支援できる状態をつくる人。このように捉えると、今回想定されているリーダー像が見えやすくなります。

2029年度開始想定|障害児支援コア人材研修

さらにその上に位置づけられるのが、障害児支援コア人材研修です。

2027年度概算要求では、2029年度から段階的に開始することが想定されています。

実施時間は約32~40時間。約12科目の講義に加え、2日間程度の演習を2回行う構成です。

リーダーが主に「事業所」で中心的な役割を担うのに対し、コア人材は「地域」へ視野を広げます。

児童発達支援、放課後等デイサービス、児童発達支援センター、相談支援、保育所、認定こども園、学校、医療機関、行政などをつなぎ、地域全体の障害児支援の質を高めていく役割です。

支援者の視野の広がり
本人を見る → 支援をつくる → チームをつなぐ → 地域をつなぐ

今回の研修体系は、知識の「初級・中級・上級」という序列だけではありません。経験や役割が広がるにつれて、支援者が見る範囲そのものを広げていく構造になっています。

研修は「動画を見て終わり」ではない

基礎・実践研修の講義動画は、原則として1科目15~20分程度とする方向が示されています。

しかし、15~20分の動画を見るだけで研修が終わるわけではありません。

1 講義前の取組 自分の支援や経験を振り返ります。
2 全国共通の講義 1科目15~20分程度の動画等で学びます。
3 講義後の取組 上司・先輩職員との対話や職員同士の学び合い、現場実践へつなげます。

これらを合わせ、1科目あたり約60~90分程度での実施が想定されています。

大切なのは「動画を見たか」だけではありません。

こどもの見方が変わったか。声のかけ方が変わったか。アセスメントが変わったか。職員同士の話し合いが変わったか。

つまり、「研修によって支援がどう変わったのか」までを含めた設計です。

基礎・実践研修Ⅱは、一気に22科目を受けなくてもよい

報告書では、日常業務と並行して受講することを踏まえ、複数年かけて修了できる運用を想定しています。

基礎・実践研修Ⅱは、Ⅰ修了後から最長3年目程度までが基本的な受講期間です。

例えば毎月1科目ずつ進めれば、約2年以内に全科目を修了することができます。

全国共通のカリキュラムだからといって、全国すべての事業所が同じ日に、同じ時間割で受講する仕組みではありません。

誰が研修を実施するのか

基礎・実践研修Ⅰ・Ⅱ

実施主体は事業者。事業所内のOJTや職員同士の対話と結びつけやすい設計です。

リーダー・コア人材研修

実施主体は都道府県・指定都市。地域の他事業所・関係機関との学び合いも重視されます。

基礎・実践研修は、必ず各事業所が単独で行わなければならないわけではありません。

国の標準カリキュラムを活用し、児童発達支援センターや事業者団体などが複数事業所の職員を集めて実施することも想定されています。

一方、リーダー・コア人材研修では、研修そのものが地域の支援者同士の関係づくりにつながることも期待されています。

2027年度から「全員受講」になるの?

ここは、今後現場で最も気になる部分でしょう。

検討会報告書は、基礎・実践研修について、職種や実務経験等を問わず「全ての支援者が受講することを基本」としています。

報告書が示していること

基礎・実践研修は、職種や実務経験を問わず全ての支援者が受講することを基本とする研修体系です。

まだ同じ意味ではないこと

「全ての支援者が受講することを基本」と、「法令によって2027年度から全員に受講義務が課される」は同じではありません。

保育士だから対象外、経験10年だから不要、専門職だから基礎研修を受けなくてよい、という設計ではありません。

一方、リーダー研修とコア人材研修は、それぞれの役割等に応じた任意受講として整理されています。

「義務化」と断定しない

2026年9月現在、2027年度から全国の全支援者に法令上の受講義務が生じることまで確定したわけではありません。今後の正式な実施要領や制度上の位置づけを確認する必要があります。

児発管研修などを受けていても免除される?

本格実施当初は、既存研修を修了していることによる一部免除を導入しないことが適当と整理されています。

既存研修には実施主体や内容の違いがあり、全国共通研修と同じ内容を十分に修得しているかを一律に判断することが難しいためです。

そのため、児童発達支援管理責任者研修などを修了していることだけで、新しい研修の一部が自動的に免除される仕組みには、少なくとも本格実施当初はしない方向です。

ただし、新しい研修が安定して実施された後、既存研修との内容整理や効果検証を行い、一部免除について改めて検討する余地は残されています。

「合格・不合格」を競う研修ではない

研修の修了評価では、資格試験のように修了の可否を競うことよりも、受講者が必要な知識・技能をどの程度身につけたかを確認する考え方が示されています。

振り返り、理解度確認、チェックリストなどを通して、「何を学び、何が身につき、次の実践に何が必要か」を確認していく方向です。

転職・転居したら、もう一度受け直す?

一度修了した研修については、都道府県を越えて転居したり、勤務する事業所が変わったりしても、再度受講する必要がない仕組みとする方向です。

そのため、修了を証明する仕組みや、受講情報を登録する仕組みの整備も想定されています。

研修履歴を「勤務先」ではなく「支援者本人」が持つ

全国共通の研修だからこそ、どこで働いても学んだことが引き継がれる設計が考えられています。人材の移動を考えても重要なポイントです。

研修を受けると加算がつく?費用はどうなる?

現時点で「この研修を修了すれば加算が取れる」「2027年度から配置要件になる」と決まっているわけではありません。

検討会では、研修に取り組む事業所を見える化することや、報酬上のインセンティブなども議論されています。

一方で、研修修了を報酬上の評価要件にすると、「研修修了者だけを集めようとする事業所」が生じる可能性も指摘されています。

そのため、報酬上のインセンティブについては慎重な検討が必要とされています。

事業所の費用負担への支援も予定

2027年度概算要求では、人材確保・育成・定着を支援する事業の中で、障害児支援に係る全国共通研修の実施に必要な費用も支援対象とすることが予定されています。具体的な対象や運用は今後の情報確認が必要です。

「全国共通」は、全国で同じ支援をするという意味ではない

「全国共通の研修体系」と聞くと、全国どこでも同じ支援方法に統一するように感じるかもしれません。

しかし、共通化しようとしているのは、「この方法で支援すれば正解」という一つの支援技法ではありません。

こどもの権利、倫理、発達や障害の基本的理解、アセスメント、本人支援、家族支援、地域連携など、支援を考えるための土台です。

そのうえで、地域によって異なる資源や課題を踏まえ、一人ひとりのこどもに合った支援を考える。

福祉教育ラボの視点
全国共通になるのは「支援の答え」ではなく、「考えるための土台」

こどもの発達も、障害特性も、家族も、生活環境も、大切にしていることも一人ひとり違います。共通の土台があるからこそ、その違いを丁寧に見て、それぞれの専門性を生かした支援を考えることができます。

現場はいま、何をしておけばいい?

現時点では、職員を新しい全国共通研修へ申し込む段階ではありません。

それでも、事業所として今から確認できることはあります。

  • 新人職員は、何をどの順番で学んでいるか
  • こどもの権利や支援者の倫理を学ぶ機会があるか
  • 研修で学んだことをOJTで振り返る仕組みがあるか
  • 職員同士で支援について対話する時間があるか
  • アセスメントについて事業所内で共通理解を持てているか
  • 新人からリーダーまで、人材育成の道筋が見えているか

全国共通のカリキュラムが具体化すると、現在それぞれの法人・事業所で行っている研修との間に、「すでにできていること」「足りないこと」「重複していること」が見えてくるはずです。

新しい研修が始まってから「誰を受けさせるか」だけを考えるのではなく、これを機会に、「私たちの事業所では、どのような支援者に育ってほしいのか」を考えておくことにも意味があります。

よくある質問

Q.2027年度から障害児支援の職員全員に研修が義務化されますか?

現時点で、2027年度から全国の全支援者に法令上の受講義務が生じることまで確定したわけではありません。一方、基礎・実践研修は職種や実務経験を問わず、全ての支援者が受講することを基本とした制度設計です。この二つは分けて理解する必要があります。

Q.児童発達支援管理責任者研修を受けていれば免除されますか?

本格実施当初は、既存研修による一部免除を導入しない方向です。すでに別の研修を修了していることだけで、自動的に一部科目が免除される設計ではありません。

Q.22科目を1年間ですべて受講しなければなりませんか?

その想定ではありません。基礎・実践研修Ⅱは複数年での受講も想定されており、例えば毎月1科目ずつ進めると約2年以内で全科目を修了できます。

Q.転職や県外への転居後は、研修を受け直しますか?

一度修了した研修は、勤務先や都道府県が変わっても再度受講しなくてよい仕組みとする方向です。修了証明や登録の仕組みも検討されています。

Q.研修を修了すると加算がつきますか?

現時点では決まっていません。報酬上のインセンティブは検討事項の一つですが、修了者だけを集める事業所が生じる懸念もあり、慎重な検討が必要とされています。

まとめ|本人を見るところから、地域をつなぐところまで

障害児支援の全国共通研修体系は、2026年度の国による指導者養成を起点として、段階的に準備が進んでいます。

2026年度 国による指導者養成
2027年度 基礎・実践研修の全国展開予定
2028年度 リーダー研修開始予定
2029年度 コア人材研修の段階的開始を想定

公式には3階層。基礎・実践研修をⅠ・Ⅱに分けると、実質4段階の学びの体系です。

そして、その流れを支援者の視野として整理すると、

1 本人を見る 支援者としての姿勢、権利、倫理を共有する。
2 支援をつくる 一人のこどもを理解し、アセスメントから実践へつなぐ。
3 チームをつなぐ 異なる専門性を生かし、事業所全体で支える。
4 地域をつなぐ 一つの事業所を越えて、地域全体の支援力を高める。

全国共通になるのは、「この方法で支援すれば正解」という答えではありません。

一人ひとり異なるこどもを前にしたときに、

「この子にとって、いま何が必要なのだろう」

と考えるための土台です。

新しい研修体系が、単に「受けなければならない研修」を増やすものになるのか。それとも、支援者が学び、実践し、対話しながら育ち、その学びが事業所から地域へ広がる仕組みになるのか。

福祉教育ラボでも、正式な実施要領、教材、受講方法、修了・登録の仕組みなどが公表され次第、この記事を更新していきます。

主な一次資料

本記事は2026年9月6日時点で公表されているこども家庭庁資料をもとに整理しています。2027年度以降の実施内容には、概算要求・予定・想定段階の事項が含まれます。正式な制度内容が公表された場合は更新します。
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