高齢者の生活困窮支援|三重県の食料支援と全国データ

2026年8月13日更新|福祉ニュース
三重県は2026年8月11日、 「三重県生活困窮高齢者等支援事業補助金」の第2回募集 を公表しました。 対象となるのは、生活困窮に直面する高齢者等への食料・生活必需品の提供と、 相談支援につながっていない人を支援へつなぐ相談会・交流会などです。

ただし、このニュースは三重県だけの話として読むより、 高齢者の生活困窮、食料支援、買物の困難、孤立、そして相談支援をどう結びつけるか という全国的な課題として見ることができます。

この記事では三重県の取り組みを入口に、 厚生労働省、農林水産省、総務省、内閣府の全国データと、 三重県が公表した実際の事業計画から、高齢者の生活困窮支援を整理します。
この記事のポイント
POINT 01 三重県は食料支援だけでなく、 相談につなげる活動も補助
POINT 02 全国の高齢者世帯の 52.1%が生活意識を「苦しい」と回答
POINT 03 食の困難には 「買うお金」と「買いに行く手段」の両面 がある
POINT 04 三重県内では食料支援を 相談・アウトリーチの接点として使う計画 も公表

01 三重県、生活困窮高齢者等への支援を追加募集

三重県は2026年8月11日、 「三重県生活困窮高齢者等支援事業補助金」の 第2回募集を公表しました。

申請できるのは、 三重県社会福祉協議会と県内の市町社会福祉協議会 です。 個人の高齢者、介護サービス事業所、地域包括支援センターなどが 直接県へ申請する補助金ではありません。

項目 第2回募集の内容
申請主体 三重県社会福祉協議会、県内の市町社会福祉協議会
対象事業① 生活困窮に直面する高齢者等への食料・生活必需品等の提供
対象事業② 相談支援につながっていない生活困窮高齢者等を支援につなげる相談会・交流会等
補助率 補助対象経費の10分の10以内
申請期間 2026年8月10日~9月30日(必着)
事業期間 2026年11月1日~2027年1月31日に実施・完了し、支払いまで終える事業

補助上限額

市町社会福祉協議会の上限額は、 市町の65歳以上人口の規模によって異なります。

事業 1万人未満 1万~3万人未満 3万人以上
食料等の支援物資提供 430万円 650万円 1,300万円
相談会・交流会等 120万円 180万円 350万円

三重県社会福祉協議会については、 食料等の支援物資提供事業が1,300万円、 相談会・交流会等が350万円を上限としています。

第2回募集では事前着手に注意 第2回募集では、交付決定日前の事前着手は認められていません。 また、2026年3月23日から7月31日まで行われた当初募集とは、 事業期間・基準額・補助対象経費などが異なります。

02 注目したいのは「食料+相談」を支援する制度であること

この補助金で注目したいのは、 食料や生活必需品を届けることだけが目的ではない点です。

三重県の募集要領では、 生活困窮に直面する高齢者世帯を主な対象として、 緊急的な食料・生活必需品の提供とともに、 相談支援につながるための相談会・交流会等 を補助対象としています。

「物を渡す」と「支援につなぐ」を分けない 今日必要な食料を届ける緊急支援と、 その背景にある家計、住まい、健康、介護、孤立などの課題を把握し、 必要な支援へつなぐこと。 今回の制度は、この二つを同じ支援の流れの中に置いています。

03 三重県で計画されている3つの生活困窮支援

三重県は、第1回募集で交付決定した事業について、 県社会福祉協議会と20の市町社会福祉協議会、 計21協議会の事業計画書を公表しています。

ここでは、食料支援を相談やアウトリーチへつなぐ設計が分かりやすい 3つの計画を紹介します。

三重県社会福祉協議会

食料を届け、必要なら支援機関へ

既存事業や関係機関から対象者を把握し、 必要に応じてアウトリーチで生活状況を確認する計画です。

緊急時には食料・生活必需品を提供し、 継続支援が必要な場合は適切な支援機関へつなぐとしています。

四日市市社会福祉協議会

地域の集まりに支援を持っていく

住民主体サービス通所B、 民生委員児童委員の活動、 ふれあいいきいきサロンなどを活用。

フードパントリーと生活支援相談会を組み合わせ、 福祉サービスや関係機関への接続を図る計画です。

松阪市社会福祉協議会

食料をアウトリーチの接点に

コロナ特例貸付利用者や生活困窮高齢者等への 食料配布を通して生活状況を確認。

相談窓口を周知するとともに、 要支援者へのアウトリーチ時にも 食料品を活用する計画です。

ここで紹介しているのは「実績」ではなく事業計画です 三重県が公表した第1回分の事業計画書をもとに整理しています。 計画された事業がどのように実施され、どのような成果につながったかは、 今後の実績報告等を確認する必要があります。

04 全国データで見る高齢者世帯の暮らし

三重県の取り組みの背景にある課題は、 一つの地域だけに限られません。

厚生労働省の2025年「国民生活基礎調査」から、 全国の高齢者世帯の状況を見てみます。

全国の高齢者世帯 1,754.6万世帯 全世帯の31.9%。2025年6月5日現在。
高齢者世帯の単独世帯 933.5万世帯 高齢者世帯の53.2%。
生活意識が「苦しい」 52.1% 「大変苦しい」「やや苦しい」の合計。2025年7月10日現在の生活意識。
高齢者世帯の平均所得 336.1万円 2024年1年間の1世帯当たり平均所得。
52.1%は「高齢者の貧困率」ではありません これは世帯が現在の暮らしをどう感じているかという 「生活意識」の調査結果です。 相対的貧困率とは異なる指標なので、 「高齢者の半数が貧困」と読み替えることはできません。

※国民生活基礎調査における「高齢者世帯」は、 65歳以上の者のみで構成する世帯、 またはこれに18歳未満の者が加わった世帯です。

05 年金中心の家計と、続く食料品価格の上昇

2024年の高齢者世帯の1世帯当たり平均所得は336.1万円でした。 所得の内訳を見ると、 公的年金・恩給が平均所得の61.3% を占めています。

また、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、 総所得の100%を公的年金・恩給が占める世帯は41.3% でした。

高齢者世帯の所得構成 61.3% 公的年金・恩給が1世帯当たり平均所得に占める割合。
年金等が総所得の100% 41.3% 公的年金・恩給を受給している高齢者世帯の構成割合。

一方、総務省の2026年6月の消費者物価指数では、 「生鮮食品を除く食料」は前年同月比3.1%上昇 しています。

こうした物価上昇は、 年金を主な収入源とする世帯の生活を考えるうえで 無視できない背景の一つです。

平均所得だけで生活実態を判断しない 高齢者世帯と全世帯では世帯人数や家計構造が異なります。 平均所得額だけを単純に比較して、 個々の生活水準や困窮状態を判断することはできません。

06 高齢者世帯の半数以上が「ひとり暮らし」

2025年の高齢者世帯1,754万6千世帯のうち、 単独世帯は933万5千世帯で、 高齢者世帯全体の53.2%を占めています。

ひとり暮らしそのものを「問題」と捉える必要はありません。 自分らしく一人で暮らしている人も数多くいます。

一方で、体調の変化、買物、家計、住まい、 手続き、人とのつながりなどで困りごとが生じたとき、 身近に相談できる相手や支援との接点があるかどうかは重要です。

「ひとり暮らし」と「孤立」は同じではありません 世帯構成だけから社会的孤立を判断することはできません。 支援では、一人暮らしかどうかだけでなく、 本人が必要なときに誰かへ相談できるか、 地域やサービスとのつながりがあるかを見ることが大切です。

07 「食べられない」は、お金だけの問題ではない

高齢者への食料支援を考えるとき、 「食べるものを買うお金がない」という経済的な問題だけでは 十分ではありません。

農林水産省は、食品アクセスの問題について、 経済的な理由で十分な食料を入手できない問題と、 店舗までの距離や移動手段などによる物理的な問題の 両面から取り組みを進めています。

食料へたどり着くための「2つのアクセス」
経済的アクセス

買うためのお金

  • 収入が少ない
  • 物価上昇で家計が圧迫される
  • 医療費や住居費など他の支出との両立が難しい
  • 十分な食料を購入する余力がない
物理的アクセス

買う場所へ行く手段

  • 近くに食料品店がない
  • 自動車を利用できない
  • 公共交通が使いにくい
  • 身体状況などにより買物へ行きにくい

食料品アクセス困難人口は2020年推計で904万人

農林水産政策研究所は、 2020年の「食料品アクセス困難人口」を 全国で約904万人と推計しています。

ここでいう食料品アクセス困難人口とは、 店舗まで500m以上離れ、かつ自動車の利用が困難な65歳以上の人 です。

904万人は「低所得高齢者」の人数ではありません この推計は店舗までの距離と自動車利用の可否から算出された 「物理的アクセス」に関する指標です。 経済的な生活困窮人口を示す数字ではありません。

全国の市町村も食品アクセスを課題と認識

農林水産省の令和7年度全国市町村アンケートでは、 回答した市町村の 89.3%が食品アクセス対策を「必要」または「ある程度必要」 と回答しています。

大都市では宅配・買物代行サービス等への支援、 中小都市ではコミュニティバスや乗合タクシーの運行等への支援が 多いとされています。

同じ「食べるものがない」でも、必要な支援は違う 食料を買うお金がないのか。 店まで行けないのか。 重い荷物を運べないのか。 誰かに頼ることが難しいのか。

結果が同じでも背景が違えば、 必要な支援も変わります。

08 全国には「生活困窮者自立支援制度」がある

三重県の補助金は県独自の事業ですが、 生活に困窮した人への相談支援は全国で制度化されています。

生活困窮者自立支援制度では、 生活に困りごとや不安を抱える人の相談を受け、 本人の状況に応じて支援プランを考えます。

相談内容に応じて、 家計改善、住まい、就労などの支援や 関係機関への接続が行われます。

2025年度・全国速報値 31万3,416件 生活困窮者自立支援制度の新規相談受付件数。 高齢者だけを対象とした件数ではありません。
制度の基本理念 包括的・早期の支援 尊厳を保持し、就労・心身・地域社会からの孤立等の状況に応じて支援。

生活困窮者自立支援法は、 本人の尊厳の保持を図りながら、 就労の状況、心身の状況、 地域社会からの孤立の状況などに応じ、 包括的かつ早期に支援することを基本理念に掲げています。

「生活が苦しい」という一つの表現の背景に、 家計、住まい、健康、介護、家族関係、 社会とのつながりなど複数の課題がある可能性を 制度そのものが想定しています。

全国の相談窓口については、 厚生労働省の「生活困窮者自立支援制度」のページから 地域の自立相談支援機関を確認できます。

厚生労働省|生活困窮者自立支援制度

09 なぜ「相談につながる接点」が必要なのか

支援制度が存在していても、 困っている本人が必ず自分から相談窓口へ来られるとは限りません。

内閣府の2026年版高齢社会白書に掲載された国際比較調査では、 日本の65歳以上の人に、 日常のちょっとした困りごとを一人でできなくなった場合に 同居家族以外で頼れる人を尋ねています。

友人を頼れる 13.7% 日本の65歳以上。複数回答。
近所の人を頼れる 12.9% 日本の65歳以上。複数回答。
頼れる人はいない 15.3% 「同居家族以外に頼れる人」に対する回答。
頼れる人がいる 82.1% 別居家族・親族、友人、近隣等のいずれかを回答した割合。
15.3%を「孤立している人の割合」とは読みません 質問は「日常のちょっとした困りごとについて、 同居家族以外に頼れる人がいるか」です。 社会的孤立そのものを直接測定した割合ではありません。

それでも、 支援を「相談窓口で待つ」だけではなく、 日常生活の中に接点をつくることを考える材料にはなります。

四日市市社会福祉協議会が、 通所Bやサロン、民生委員児童委員の活動の場に フードパントリーと相談を組み合わせていることや、 松阪市社会福祉協議会が食料をアウトリーチのツールとして位置付けていることは、 その具体的な一例と見ることができます。

10 ケアマネ・地域包括・介護事業所にできること

三重県の補助金を直接申請するのは社会福祉協議会です。 しかし、生活の変化に最初に気づくのは、 ケアマネジャー、地域包括支援センター、 介護事業所、医療機関、民生委員などかもしれません。

現場で生活困窮の可能性に気づいたとき、 次のような視点が考えられます。

1 変化に気づく

食事量、買物、公共料金、受診控え、 生活用品の不足など日常生活の変化を見る。

2 背景を決めつけずに聞く

「お金がない」と決めつけず、 買物手段、体調、家計、家族関係などを本人と確認する。

3 介護保険だけで抱え込まない

自立相談支援機関、社会福祉協議会、 福祉事務所など他制度・他機関への接続を検討する。

4 つないだ後も確認する

「紹介した」で終わらず、 本人が実際に支援へつながれたかを必要に応じて確認する。

支援先を知っていることも専門性の一部 介護保険サービスだけでは解決できない生活課題に気づいたとき、 地域にどのような相談窓口、社会福祉協議会の事業、 食料支援、家計支援などがあるかを知っておくことは、 本人を必要な支援につなぐための地域資源の理解につながります。

11 福祉教育ラボの視点

福祉教育ラボの視点

「食べる → 話せる → つながる」

食料支援は、生活困窮そのものを 一度に解決する制度ではありません。

しかし、今日必要な食料を届けることには、 それ自体に重要な意味があります。

そして、その支援が人との接点となり、 本人が自分の暮らしについて話せる機会となり、 必要な制度や人、地域へつながっていくことがあります。

食料支援から相談支援へ
食べる 今日の生活を支える
緊急的な食料・生活必需品
話せる 困りごとを表出できる
人との接点をつくる
つながる 必要な制度・専門職・
地域の支援へ

大切なのは、 「食料を何個渡したか」だけで 支援の価値を測らないことだと考えます。

その支援をきっかけに、 本人が誰と出会い、 何を話すことができ、 その後どのような支援や地域とのつながりを得られたか。

反対に、相談支援につなげることを優先するあまり、 目の前の緊急的な困りごとを軽視してもいけません。

今日を支えることと、その先を支えることを切り離さない。

三重県の取り組みは、 生活困窮支援におけるその接続を 地域の中でどうつくるかを考える材料になります。

12 高齢者の生活困窮・食料支援についてのよくある質問

Q1.三重県の補助金は、高齢者本人が申請できますか?

できません。 第2回募集の補助対象者は、 三重県社会福祉協議会と県内の市町社会福祉協議会です。 個人向けの現金給付制度ではありません。

Q2.介護事業所や地域包括支援センターは申請できますか?

この補助金の直接の申請主体ではありません。 ただし、生活困窮がみられる高齢者に気づいた際、 地域の社会福祉協議会や自立相談支援機関などへつなぐ役割を担うことは考えられます。

Q3.高齢者の生活が苦しいとき、全国共通で利用できる相談制度はありますか?

生活困窮者自立支援制度があります。 地域の自立相談支援機関で生活全般の相談を受け、 状況に応じて家計、住まい、就労などの支援や 他機関への接続を行います。

実際の窓口は地域によって異なるため、 厚生労働省が案内する自立相談支援機関の情報をご確認ください。

Q4.社会福祉協議会なら全国どこでも食料をもらえますか?

いいえ。 食料支援の実施状況、対象者、利用要件、提供内容は 地域や社会福祉協議会によって異なります。 お住まいの地域の社会福祉協議会等へ確認する必要があります。

Q5.食料が買えない場合だけが「食の困難」ですか?

そうとは限りません。 経済的な理由だけでなく、 店舗までの距離、自動車の利用、公共交通、 身体状況などにより食料へアクセスしにくい場合もあります。

Q6.生活保護が必要かもしれない場合はどうすればよいですか?

生活保護については、 お住まいの地域を所管する福祉事務所が相談・申請の窓口です。 自立相談支援機関などへの相談をきっかけに、 必要に応じて福祉事務所等へつながる場合もあります。

まとめ|食料支援を「その先の支援」とどう結ぶか

三重県の「生活困窮高齢者等支援事業補助金」は、 食料や生活必需品を届ける緊急支援だけでなく、 相談支援につながっていない人を支援へつなぐ 相談会や交流会も補助対象としています。

全国を見ると、 高齢者世帯は1,754万6千世帯、 その53.2%が単独世帯です。 また、高齢者世帯の52.1%が 現在の生活意識を「苦しい」と回答しています。

さらに食の問題には、 食料を購入するための経済的なアクセスだけでなく、 店舗へ行くための物理的なアクセスという側面もあります。

だからこそ生活困窮支援では、 一つの問題だけを切り取るのではなく、 本人の暮らし全体を見る必要があります。

「何を渡したか」から「何につながったか」へ 食料を届ける。 そこで人と出会う。 暮らしについて話せる。 必要な制度や人へつながる。

その一連の流れをどう地域の中につくるか。 三重県の事例は、全国の高齢者支援を考えるうえでも 一つの実践的な材料になります。

一次資料・公的資料

本記事は2026年8月13日時点で公表されている国・三重県の資料をもとに整理しています。 三重県の補助金、地域の食料支援、生活困窮者支援の利用条件や実施状況は今後変更される場合があります。 個別の支援については、お住まいの自治体、自立相談支援機関、社会福祉協議会、福祉事務所等へご確認ください。