【調査結果】福祉用具の貸与・販売「選択制」 購入割合とモニタリングの実態が明らかに

厚生労働省は2026年3月30日、第255回社会保障審議会介護給付費分科会で、福祉用具の貸与と販売の「選択制」に関する調査結果を公表しました。

選択制は2024年4月に導入された制度です。利用者の負担軽減と制度の持続可能性を図りながら、福祉用具を適切かつ安全に利用できるようにすることを目的としています。今回の調査は、導入後の利用状況や事業所の対応を把握し、今後の検討に向けた基礎資料とするものです。

対象はスロープ、歩行器、歩行補助つえの一部

選択制の対象となるのは、固定用スロープ、歩行車を除く歩行器、歩行補助つえの一部です。

歩行補助つえでは、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖が対象となります。車輪やキャスターの付いた歩行車、持ち運んで使用する可搬型スロープ、松葉杖などは対象に含まれません。

ケアマネジャーや福祉用具専門相談員は、利用者に制度の趣旨を説明したうえで、身体状況、生活環境、利用期間の見通し、医師や専門職の所見などを踏まえ、貸与と販売の両方を提案します。最終的にどちらを利用するかは、協議内容を踏まえて利用者が選択します。

販売件数は導入初年度より減少

介護保険総合データベースに特定福祉用具販売のデータが登録されている499保険者を分析したところ、対象用具の販売件数は、制度導入後の2024年6月には2,165件でしたが、2025年6月には1,007件となりました。

同じ期間の総販売額も、2,111万円から1,116万円へ減少しています。一方、貸与では、固定用スロープと歩行器の件数が減少し、歩行補助つえは増加していました。

これらは499保険者の各年6月分を比較した結果であり、全国すべての利用実績を示す数値ではない点には注意が必要です。

購入が多かったのは固定用スロープ

調査に回答した福祉用具貸与事業所の利用者について、購入を選んだ割合が最も高かったのは固定用スロープでした。

固定用スロープを購入した割合は、2024年度が15.2%、2025年4月から6月が7.5%でした。歩行器は、それぞれ1.6%と1.2%でした。

購入を選んだ主な理由としては、いずれの用具でも「長期利用が想定されるため」「貸与より購入の方が経済的であるため」が多く挙げられています。

説明は金額だけでなく、状態変化の見通しも必要

利用者への説明で「必ず提供している」と回答した割合が最も高かったのは、貸与と購入それぞれの負担額の違いで66.4%でした。

次いで、短期間の利用が見込まれる場合には、状態に応じて用具を交換できる貸与が適しているという説明が60.3%でした。

貸与か購入かは、現在の費用だけで決められるものではありません。身体機能や住環境が変化する可能性、用具の調整や交換、修理、継続的な確認の必要性まで含めて検討することが求められます。

モニタリングは「利用者一律」が83.9%

対象用具を貸与した場合、利用開始時から6か月以内に少なくとも1回、モニタリングを実施する必要があります。

調査では、モニタリングの時期を「利用者一律に定めている」事業所が83.9%でした。そのうち、利用開始後6か月以内に実施するよう設定している事業所は92.1%でした。

モニタリング後に貸与内容を見直した利用者は15.2%で、そのうち19.3%は貸与を終了し、7.0%は購入へ切り替えていました。

制度上の期限を守るだけでなく、疾患の進行、退院直後の状態、生活環境の変化などに応じて、確認時期を個別に設定できているかが今後の課題です。

多職種からの情報収集に難しさも

事業所と保険者へのヒアリングでは、医師や多職種から、選択に必要な意見を得ることが難しい場合があるとの声も示されました。

専門職が実際の住環境を把握していないことや、医師の所見を得るために利用者の受診へ同行する必要が生じることもあります。一方で、日頃から生活場面を把握している訪問看護師やリハビリテーション専門職の意見は、利用者への説明にもつながりやすいと報告されています。

ただし、これは福祉用具貸与事業所、居宅介護支援事業所、保険者をそれぞれ2者ずつ対象にしたヒアリング結果であり、すべての事業所に共通する状況ではありません。

福祉教育ラボの視点

選択制で問われているのは、貸与と購入のどちらが得かという単純な比較ではありません。

購入は、長期間使用できる場合には利用者負担を抑えられる可能性があります。一方、貸与には、身体状況や生活環境の変化に応じて、用具を交換・調整しやすいという特徴があります。

重要なのは、今の状態だけでなく、これから起こり得る変化まで見通し、利用者が納得して選べるよう支援することです。

モニタリングも、6か月以内に訪問したという事実だけで終わらせてはいけません。用具が生活に適合しているか、安全に使用できているか、本人の活動や自立を支えられているかを確認し、必要に応じて支援を組み直すことが求められます。

選択制は、福祉用具を「物として提供する制度」から、利用者の生活の変化に合わせて継続的に支える仕組みへとつなげられるかが問われています。

出典

厚生労働省「第255回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」

厚生労働省「一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入に関する調査研究事業(結果概要)」

厚生労働省「福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について」

厚生労働省「福祉用具・住宅改修」