そのケアプランは、誰のためのものか
住宅型有料老人ホームの「囲い込み」を考える
住宅型有料老人ホームをめぐり、同一法人の介護サービスを優先したり、区分支給限度基準額に近いサービス量を組み込んだりする、いわゆる「囲い込み」が問題視されています。
ただし、住宅型有料老人ホームそのものや、同一法人による一体的な支援を否定する話ではありません。
問われているのは、ケアプランが本人の生活課題から始まっているのか、それとも事業者側の運営や収益の都合から始まっているのかということです。
住宅型有料老人ホームの仕組み
介護付き有料老人ホームでは、ホームが介護サービスを包括的に提供します。
一方、住宅型有料老人ホームでは、住まいの契約と介護サービスの契約が分かれており、入居者は訪問介護、通所介護、居宅介護支援などを個別に利用します。
本来、利用者は地域の事業所から必要なサービスを選べます。しかし実際には、ホームと同一・関連法人の介護事業所が併設され、住まいと介護が事実上一体的に提供される場合も少なくありません。(厚生労働省)
こうした仕組みには、情報共有のしやすさや、緊急時に対応しやすいといった利点があります。独居生活が難しい人や、重度の介護を必要とする人の生活を支える重要な住まいでもあります。
「囲い込み」とは何か
問題となるのは、同一法人を利用することではなく、本人が他の選択肢を十分に説明されないまま、関連事業所の利用を事実上求められることです。
厚生労働省の調査では、住宅型有料老人ホームの11.7%が、関連法人のケアマネジャーにケアプランを作成してもらうことを入居要件としていました。また、27.2%が、入居後に関連法人の介護サービスを利用することを要件としていました。(厚生労働省)
別の調査では、ホーム側から「同一法人の介護サービスを限度額いっぱいまで利用するプランにしてほしい」と求められたケアマネジャーが約25%確認されています。要請に反対したことで、離職を迫られた事例も報告されています。(厚生労働省)
これは、単なる現場の噂ではありません。
事業者側の都合が、サービスの種類や量、事業所の選択に影響している可能性が、公的な調査でも示されています。
利益を上げることが問題なのではない
福祉事業にも利益は必要です。
職員の給与を払い、人材を確保し、建物を維持し、設備を更新しながら支援を続けるためには、安定した経営が欠かせません。
同じ建物内でサービスを提供すれば、移動時間や車両費を抑えられます。法人内の連携によって業務を効率化し、利益を確保すること自体は、適切な経営努力です。
しかし、利益を上げることと、介護保険サービスを増やして利益を作ることは同じではありません。
介護保険サービスは、売上目標から量を決めるものではなく、本人の状態、希望、生活課題をアセスメントした結果として組み立てるものです。
経営上の目標があることと、その目標をケアプランへ反映させることは、分けて考えなければなりません。
ケアマネジャー個人だけの問題ではない
ケアマネジャーには、利用者本位の支援を行う専門職としての責任があります。
一方で、ホームと居宅介護支援事業所が同一法人であれば、経営者や管理者の意向、入居者の紹介関係、組織内の評価などが判断に影響する可能性があります。
そのため、この問題を「ケアマネジャーが断ればよい」と個人の倫理だけに還元することはできません。
法人の収益目標から距離を取り、本人に必要な支援を専門職として判断できる環境が必要です。
同一法人や頻回利用が悪いわけではない
重度者には、1日に複数回の訪問介護が必要な場合があります。
同一法人による支援が、迅速な対応や安定した生活につながることもあります。
したがって、同一法人を利用していることや、利用回数が多いことだけで、不適切なケアプランとは判断できません。
確認すべきなのは、次の点です。
・本人の必要性からサービス量が決まったか
・他の事業所を含む選択肢が説明されたか
・同じホームの入居者に画一的なプランが並んでいないか
・そのサービスが必要な理由を説明できるか
・法人の運営上の都合が、アセスメントより先に置かれていないか
福祉教育ラボの視点
2024年度介護報酬改定では、同一建物の入居者へ集中的に訪問介護を提供する場合の減算が見直され、居宅介護支援にも同一建物に関する評価の見直しが導入されました。これは、同じ建物内で効率的にサービスを提供できる実態を、報酬へ反映するためのものです。(厚生労働省)
さらに、2026年8月5日の介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向けて、高齢者向け住まいにおけるケアマネジメントや報酬の在り方が議論されています。現時点では、具体的な新しい減算率や報酬水準が決定したわけではありません。(厚生労働省)
この問題を「利益か、福祉か」という二者択一で捉えるべきではありません。
利益がなければ、支援を続けることはできません。しかし、ケアプランは法人の収益計画でもありません。
問われているのは、経営を安定させながら、本人の必要性、希望、選択を守る仕組みになっているかということです。
そのケアプランは、誰のために作られているでしょうか。
一次資料
・厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会報告書」
・厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題・論点について」
・第262回社会保障審議会介護給付費分科会「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」


