住宅改修と福祉用具購入はどう違う?介護保険を利用するときの流れを学ぼう

福祉教育ラボ|学びの整理

「玄関の段差を直したい」「お風呂で安全に座りたい」。 二つの生活上の困りごとから、介護保険の住宅改修と福祉用具購入の違い、 利用までの流れを整理します。

「退院は決まった。
でも、この家で本当に暮らしていけるのだろうか。」

脳梗塞で入院していた70代のAさんは、自宅への退院を控えていました。

久しぶりに家へ戻ってみると、これまで何とも思わなかった玄関の 上がりかまちが、大きな壁になっていました。 手すりにつかまっても足が上がりにくく、転倒しそうになります。

浴室でも同じでした。立ったまま身体を洗うことが難しくなり、 家族も「一人で入浴させるのは心配だね」と不安を感じます。

玄関での困りごと

上がりかまちが高く、足を持ち上げるときに転倒しそうになる。

浴室での困りごと

立ったまま身体を洗うことが難しく、本人も家族も不安を感じている。

「介護保険で何かできると聞いたことがあるけれど、 どうすればいいのだろう。」

そこで家族は、担当のケアマネジャーへ相談しました。

ケアマネジャーと生活環境を確認する

ケアマネジャーはAさんの自宅を訪問し、歩く様子や玄関の段差、 浴室の環境などを本人や家族と一緒に確認しました。

担当のケアマネジャー

「玄関は、住宅改修を利用できそうです」

「浴室には、シャワーチェアがあると安心ですね」

介護保険では、住まいを安全に整えるための「住宅改修」と、 日常生活を支える特定の福祉用具を購入する 「特定福祉用具購入」という仕組みがあります。

今回のAさんの場合は、玄関の上がりかまちの改修と、 浴室で使うシャワーチェアの購入を検討することになりました。

ケアマネジャーが見ているのは、
制度だけではなく、Aさんの暮らしです。

住宅改修と福祉用具購入の違い

住宅改修
生活上の困りごと 玄関の上がりかまちが高く、上がりにくい
今回の対応 玄関の段差を上がりやすくする改修
重要なポイント 原則として工事を始める前に申請する
特定福祉用具購入
生活上の困りごと 浴室で立ったまま身体を洗うことが難しい
今回の対応 入浴用のシャワーチェアを購入する
重要なポイント 対象となる福祉用具と販売事業者を確認する

どちらも共通しているのは、「介護保険が使えるから利用する」 のではなく、Aさんの生活上の困りごとを解決するために 本当に必要かどうかを確認しながら進めることです。

制度は目的ではありません。 安心して生活を続けるための手段です。

相談から利用までの流れ

  1. 1
    生活上の困りごとに気づく 玄関の段差や浴室での立ち座りに不安を感じる。
  2. 2
    ケアマネジャーへ相談する 本人と家族が感じている困りごとや希望を伝える。
  3. 3
    身体状況と自宅環境を確認する 歩行や立ち座りの状態、玄関や浴室の環境を確認する。
  4. 4
    必要な支援をケアプランに位置づける 生活課題と目標を整理し、住宅改修や福祉用具の必要性を確認する。
  5. 5
    住宅改修の事前申請を行う 理由書や見積書など、必要な書類をそろえて市町村へ申請する。
  6. 6
    工事と福祉用具購入を行う 申請内容に沿って工事を行い、身体状況に合うシャワーチェアを購入する。
  7. 7
    支給申請を行う 領収書などの必要書類を提出し、介護保険給付分の支給を受ける。

毎日の不安が、少し小さくなった

工事が終わった日、Aさんは手すりを使いながら、 ゆっくりと玄関の段差を上がりました。

浴室にはシャワーチェアが置かれ、 座った状態で身体を洗えるようになりました。

家族も「これなら、少し安心できそうだね」と話します。

利用する前
  • 玄関で転びそうになる
  • 立ったまま身体を洗うことが難しい
  • 本人も家族も入浴に不安を感じている
利用した後
  • 玄関の段差を上がりやすくなった
  • 座って身体を洗えるようになった
  • 本人と家族の不安が少し軽くなった

大きく生活が変わったわけではありません。

それでも、「転ばないだろうか」という毎日の不安は、 少しずつ小さくなっていきました。

今回は「償還払い」を利用

今回、Aさんは「償還払い」という方法で介護保険を利用しました。

償還払いでは、利用者がいったん工事費や福祉用具の代金を支払い、 その後、市町村へ申請することで、介護保険から給付される分が 払い戻されます。

償還払いのお金の流れ
利用者が
いったん費用を支払う
市町村へ
支給申請を行う
介護保険給付分が
払い戻される

市町村によっては、利用者が自己負担分のみを支払い、 介護保険給付分を市町村から事業者へ支払う 「受領委任払い」を利用できる場合があります。 実際の利用方法は、お住まいの市町村や担当のケアマネジャーへ ご確認ください。

今回の学びの整理
  • 玄関の段差解消など、住まいに関する工事は 「住宅改修」の対象になる場合があります。
  • シャワーチェアなどの入浴補助用具は、 「特定福祉用具購入」の対象になる場合があります。
  • 介護保険による住宅改修は、原則として工事前の申請が必要です。
  • ケアマネジャーは、本人の生活課題を整理し、 ケアプランや手続きの支援を行います。
  • 制度は、本人の安全と、その人らしい生活を支えるために活用します。
「これからも、この家で暮らしたい。」

介護保険は、単に費用を補助するためだけの制度ではありません。

一人ひとりの願いを支え、その人らしい暮らしを続けられるように 後押しするための制度です。

制度を知ることは、不安を減らし、 安心して暮らし続けるための第一歩です。

住宅や日常生活の中に困りごとがあるときは、 一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーや 地域包括支援センターへ相談してみてください。