介護報酬の「地域区分」、2027年度改定で見直しへ|5区分化・市町村の級地は未決定
2027年度介護報酬改定では「地域区分」の見直しが政府方針として決まっています。ただし、介護報酬の5区分化や各市町村の新しい級地はまだ決まっていません。
政府は、介護・障害福祉・保育の地域区分について、隣接する市町村との級地格差が人材確保へ与える影響も踏まえ、 次期報酬改定までに必要な見直しを行う 方針をすでに示しています。 [4]
2026年9月6日時点では、見直しの方向は決まっているものの、その制度設計を議論している段階です。
2027年度改定までに、地域区分について必要な見直しを行う。
国家公務員の地域手当は7区分から5区分へ再編。
公務員地域手当の変更を介護報酬へどう反映するか。
人材確保、隣接自治体との格差、経過措置をどう扱うか。
介護報酬を5区分にするか。
各市町村が何級地になるか。
新しい上乗せ割合・経過措置。
そもそも、介護報酬の「地域区分」とは
同じ介護サービスを、同じ単位数だけ提供しても、事業所の所在地によって実際の介護報酬額が異なることがあります。
その理由の一つが、 「地域区分」 です。
介護サービスを提供するために必要な人件費には地域差があります。 その差を介護報酬へ反映するため、地域ごとに上乗せ割合が設定されています。 [1]
現在の2024~2026年度介護報酬では、 1級地~7級地+「その他」 の8区分です。
地域区分が違うと、なぜ介護報酬が変わるのか
介護報酬は、サービスごとに定められた単位数に、地域・サービスごとに設定される「1単位の単価」を掛けて計算します。
1単位単価
例えば、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援など、人件費割合70%のサービスでは、1単位単価は次のようになります。 [1]
同じ1,000単位のサービスでも、単純計算では1級地なら11,400円、その他地域なら10,000円となります。
介護サービス費の1割、2割または3割は利用者の自己負担です。 そのため、1単位単価が変われば、同じ単位数のサービスを利用していても、利用者の自己負担額が変わる可能性があります。 [1]
地域区分は「事業所の収入」だけでなく、「利用者がいくら負担するか」にも関係する制度です。
なぜ今、地域区分を見直すのか
大きなきっかけは、2024年8月の人事院勧告です。
国家公務員の地域手当は、従来の市町村単位を中心とした設定から、 都道府県単位を基本 とする、より広域的な仕組みへ見直されました。 [3]
さらに、級地区分も7区分から5区分へ再編されています。
なぜ「公務員が5区分なら介護も5区分」で済まないのか
現在の介護報酬と、新しい公務員の地域手当を並べると、その理由が見えてきます。
| 比較 | 現在の介護報酬 | 見直し後の公務員地域手当 |
|---|---|---|
| 区分数 | 8区分 | 5区分 |
| 1段階目 | 20% | 20% |
| 2段階目 | 16% | 16% |
| 中間帯 | 15%・12%・10%・6%・3% | 12%・8%・4% |
| その他 | 0%区分あり | 地域設定の仕組みが異なる |
ただし、現在の介護報酬の「3級地」と、新しい公務員制度の「3級地」が同じ自治体を意味するわけではありません。
この表から分かるのは、単純に「介護の3級地15%が12%になる」ということではなく、 区分数も中間帯の割合も対象地域も異なるため、公務員の新制度をそのまま介護報酬へ移すことはできない ということです。
地方公務員は、さらに自治体ごとの差が広がる可能性
介護報酬が参考にしてきたのは、国家公務員の地域手当だけではありません。
地方公務員の地域手当も対象です。
地方公務員についても同様の見直しが進んでいますが、2025年度から、国の基準を超える地域手当を設定した自治体への 特別交付税の減額措置が廃止 されました。 [2]
厚生労働省は、この変更によって、国家公務員とは異なる独自の支給割合を設定する自治体が増える可能性があるとしています。
資料では、すでに 90市町村 が、国家公務員の地域手当や総務省から示された支給割合とは異なる独自の支給割合を設定しているとされています。 [2]
つまり今回の地域区分見直しは、「国家公務員の5区分を介護へ移す」というだけの問題ではありません。
国家公務員、地方公務員、市町村ごとの賃金事情、隣接自治体との格差、介護人材の確保を、どのように一つの制度へ落とし込むかが問われています。
経過措置や特例は、実際に多くの自治体で使われている
介護報酬には、級地が変わったときの急激な報酬変動を避けるための経過措置があります。
また、隣接自治体との関係で公平性を欠く場合などには、
- 完全囲まれルール
- 4級地差ルール
- 複数隣接ルール
- 5級地差ルール
- 広域連合ルール
- 他制度との均衡ルール
といった特例も設けられています。 [1]
準拠する自治体
適用する自治体
級地を引上げ
級地を引下げ
これは令和6年4月1日時点の状況です。 2024年度介護報酬改定では、合計38自治体で級地変更があり、35自治体が引上げ、3自治体が引下げでした。 [1]
経過措置や特例は、ごく一部だけの例外的な仕組みではありません。
公務員の地域手当を原則にしながら、地域事情に合わせて調整することも、現在の地域区分の重要な仕組みです。
現在の経過措置は「2026年度末」まで
現在の地域区分に関する経過措置は、 2026年度末まで 延長されています。 [1]
時間軸で見ると、
2027年3月31日 現在の経過措置の期限
↓
2027年4月 2027年度介護報酬改定
となります。
そのため2027年度改定では、「新しい級地をどうするか」だけでなく、級地が大きく変わる自治体にどのような移行措置を設けるかも重要になります。
しかも、公務員側もまだ移行の途中
国家公務員の新しい地域手当は、2025年度から段階的に支給割合の引上げ・引下げが進められています。
完全施行は2028年度以降です。 [2]
つまり、2027年4月の介護報酬改定を迎える時点でも、公務員側は新制度への移行途中です。
今回の改定は、 「完成した公務員制度を介護が後からコピーする」 という単純な関係ではありません。
公務員制度自体も動いている途中で、介護報酬側の制度を設計することになります。
実は、2015年度改定でも似た流れがあった
公務員の地域手当が見直され、その後の介護報酬改定で地域区分を見直すという流れには前例があります。
2014年の人事院勧告で国家公務員の地域手当が見直され、その後の2015年度介護報酬改定では、国家公務員または地方公務員の地域手当に準拠する形で、現在につながる8区分へ地域区分が再編されました。 [1]
ただし、今回も同じ結論になるという意味ではありません。
今回は都道府県単位への広域化、5区分化、地方自治体の独自設定、人材確保への影響など、前回とは条件が異なります。
「財政中立」という条件もある
人材不足が深刻だからといって、すべての地域区分を単純に高くすればよい、という制度でもありません。
令和6年度介護報酬改定の審議報告では、地域差を報酬へ反映する費用の範囲について、 財政中立を原則として そのあり方を検討する考え方が示されています。 [1]
これは、「どこかを上げれば必ず同額を別の自治体から下げる」という単純な意味ではありません。
ただし、地域区分だけを一律に上げれば終わる話ではなく、限られた介護報酬全体の中で、何をどこまで地域差として反映するのかを考える必要があります。
政府は「必要な見直しを行う」とすでに決めている
ここが今回の記事で最も重要な現在地です。
2025年6月13日に閣議決定された 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」では、 介護・障害福祉・保育の地域区分について、隣接する市町村等との級地格差による人材確保への影響も踏まえ、 次期報酬改定までに必要な見直しを実施する 方針が示されています。 [4]
したがって現在は、
「地域区分を見直すのかどうか」
を議論しているのではありません。
「どのような地域区分へ見直すのか」
を議論している段階です。
2027年度改定までの工程
厚生労働省は2025年12月の第252回介護給付費分科会で、2027年度地域区分の検討スケジュールを示しました。 [2]
2~3月 市町村への意向調査 2027年度以降の地域区分に関する意向や、各市町村における公務員地域手当の支給割合などを調査する予定が示されました。
年末頃 2027年度からの地域区分を市町村へ提示予定 各市町村の新しい級地が具体化していく大きな節目になると考えられます。
4月 2027年度介護報酬改定 新しい地域区分の運用開始が予定される時期です。
なお、2026年9月6日時点で、今回確認した公表資料からは、市町村意向調査の結果そのものまでは確認できませんでした。
9月6日時点で、具体的な級地案はまだ出ていない
2026年8月5日の第262回介護給付費分科会では、「地域区分」が2027年度介護報酬改定の議題として取り上げられました。 [1]
厚生労働省は、現在の地域区分、公務員の地域手当、経過措置、特例、政府方針などを整理したうえで、2027年度改定での対応を論点として示しました。
しかし、新しい地域区分表や市町村ごとの級地案は示していません。
その後の第263回、第264回では地域区分は議題になっておらず、2026年9月6日時点でも具体案は確認できません。 [5]
地域区分は「誰にとっての公平か」という問題でもある
ここまで制度を見ていくと、地域区分が単なる計算式ではないことが分かります。
地域区分を高く設定すれば、事業所の収入条件は改善し、人材確保にもプラスに働く可能性があります。
一方で、利用者負担が増える可能性があります。
市町村単位で細かく設定すれば、その地域の賃金水準を反映しやすくなる一方、隣接自治体との級地差が人材移動につながるかもしれません。
都道府県単位で広く設定すれば隣接自治体との格差は縮小しますが、同じ県内でも都市部と地方部の賃金水準は同じではありません。
どの方法にも、メリットと課題があります。
「何級地になるか」だけでなく、その決め方を見たい
地域区分の議論で大切なのは、自分の市町村が上がるのか下がるのかだけではありません。
なぜ、その級地になるのか。
その結果、誰にどのような影響が出るのか。
急激な変化を和らげる仕組みはあるのか。
そして、その地域で介護を必要とする人が、これからも必要なサービスを利用し続けられるのか。
地域区分は、人件費の地域差を調整する制度であると同時に、 「地域で介護を続けられる条件をどうつくるか」 を考える制度でもあります。
なぜ介護職にも知っておいてほしいのか
地域区分というと、経営者や管理者、事務担当者だけが知っていればよい制度に見えるかもしれません。
しかし、地域区分が変われば、
- 事業所収入
- 職員採用
- 人件費
- 人員配置
- サービス提供地域
- 事業継続
- 利用者負担
に影響する可能性があります。
そして事業所が地域でサービスを継続できるかどうかは、そのまま「必要な人が介護サービスを受けられるか」という問題につながります。
地域区分は「1単位が何円になるのか」という計算であると同時に、地域の介護基盤をどう維持するかという制度でもあります。
まとめ|「見直すか」ではなく「どう見直すか」の段階へ
2027年度介護報酬改定では、地域区分について必要な見直しを行うことが政府方針としてすでに決まっています。
一方、2026年9月6日時点では、
- 介護報酬を5区分にするのか
- 各市町村が何級地になるのか
- 新しい上乗せ割合をどうするのか
- どのような経過措置・特例を設けるのか
といった具体的な制度設計はまだ決まっていません。
国家公務員の地域手当は7区分から5区分へ変わりましたが、その5区分を介護報酬へそのまま移すことはできません。
現在の介護報酬とは級地構成も割合も異なります。 地方公務員では独自の地域手当を設定する自治体もあります。 経過措置や特例も実際に多く使われています。
さらに、事業所収入、人材確保、利用者負担、財政、地域のサービス基盤を同時に考える必要があります。
だからこそ、これから見るべきなのは、 「5区分になるのか」だけではありません。
2027年度からの地域区分を、誰にとって、何を基準に、どのような移行措置を設けながら組み直すのか。
厚生労働省は、2026年末ごろに市町村へ2027年度からの地域区分を提示する予定を示しています。 [2]
福祉教育ラボでも、具体的な地域区分案、市町村別の級地、上乗せ割合、経過措置などが公表された段階で、決まったことと議論中のことを分けながら更新していきます。
一次資料
本記事は、2026年9月6日時点で公表されている一次資料をもとに整理しています。
- 厚生労働省|第262回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3「地域区分」 現在の地域区分、1単位単価、経過措置・特例の適用状況、公務員地域手当の見直し、2027年度改定の論点を確認できます。 資料3「地域区分」(PDF)を確認する / 第262回分科会の資料一覧を確認する
- 厚生労働省|第252回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2「地域区分について(報告)」 市町村意向調査、2026年末頃までの工程、地方公務員の地域手当、独自の支給割合を設定する自治体などを確認できます。 資料2「地域区分について(報告)」を確認する
- 人事院|令和6年 人事院勧告・報告 国家公務員の地域手当について、都道府県単位を基本とする広域化や、7区分から5区分への再編を確認できます。 令和6年人事院勧告・報告を確認する
- 内閣官房|新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版 隣接市町村等との級地格差による人材確保への影響を踏まえ、次期報酬改定までに地域区分について必要な見直しを行う政府方針を確認できます。 2025年改訂版(PDF)を確認する
- 厚生労働省|社会保障審議会 介護給付費分科会 第262回以降を含む、2027年度介護報酬改定の最新の審議状況を確認できます。 介護給付費分科会一覧を確認する


