2027年度介護報酬改定|協力医療機関・ACP・看取りはどう変わる?第264回分科会を整理

2026年9月3日、厚生労働省は第264回社会保障審議会介護給付費分科会を開催しました。

今回議論されたテーマの一つが、「医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護」です。

協力医療機関との連携 / 感染症への対応 / ACP / 看取り

どれも介護現場にとって身近なテーマですが、今回の資料を読むときには注意が必要です。

すでに施行されている制度と、2027年度介護報酬改定に向けてこれから検討される論点が、同じ資料の中に並んでいるからです。

今回、新しい加算や単位数、全サービスへのACP義務化などが決まったわけではありません。

この記事では、「すでに決まっていること」「現場で起きていること」「2027年度改定に向けて検討されていること」を分けながら整理します。

最初に結論|4つのテーマは、いまどこまで進んでいるのか

協力医療機関

2024年度の基準見直しで義務規定を整備。2027年3月31日まで経過措置が続きます。

感染対策

加算はすでにありますが、医療機関との連携や時間確保が壁となり、未算定施設が多くあります。

ACP

サービスによって現在の位置づけに差があり、2027年度改定に向けて今後の制度上の扱いが検討されます。

看取り

サービスごとに評価方法が異なり、本人が望む場所での看取りをどう支えるかが論点です。

テーマ 現在の制度・状況 2027年度改定に向けた現在地
協力医療機関 2024年度の基準見直しで義務規定を整備。2027年3月31日まで経過措置 経過措置終了後を見据え、確保と実効的な連携をどう進めるか
感染対策 高齢者施設等感染対策向上加算などを整備 加算の未算定や医療機関との連携不足を踏まえ、感染対応力をどう高めるか
ACP サービスによって制度上の位置づけに差がある 各介護サービスでACPをどう位置づけるか
看取り サービスごとに加算の有無や評価方法が異なる 本人が望む場所での看取りと、各サービスの役割に応じた評価をどう考えるか

厚生労働省が今回示しているのは、こうした現状を踏まえた「問い」です。

今回の分科会を読むときのポイント

「新しい制度が4つ決まった」のではなく、「これまで整備してきた制度は、本当に現場で機能しているのか。その先をどう設計するのか」という段階に入っています。

出典: 厚生労働省 第264回社会保障審議会介護給付費分科会

第263回から第264回へ|2027年度改定の議論が具体化してきた

2026年8月28日の第263回介護給付費分科会では、処遇改善、生産性向上、虐待防止・安全管理、BCP、ハラスメント対策など、介護現場を支える基盤について議論されました。

福祉教育ラボでは、その5つの論点をこちらの記事で整理しています。

あわせて読みたい 2027年度介護報酬改定の5論点|処遇改善・生産性向上・虐待防止・BCP・ハラスメント

今回の第264回では、そこからさらに、医療との連携や人生の最終段階の支援へ議論が広がりました。

1.協力医療機関|2027年4月から経過措置が終わる

最も期限がはっきりしているのが、協力医療機関です。

2024年度介護報酬改定に伴う基準見直し等では、一定の高齢者施設について、次の3要件を満たす協力医療機関を定める仕組みが設けられました。

  1. 入所者の病状が急変した場合などに、医師または看護職員へ常時相談できる体制
  2. 診療が必要になった場合に、常時診療できる体制
  3. 医師が入院を必要と判断した入所者を、原則として受け入れる体制
3つ目の要件に注意

入院が必要と判断された入所者を原則として受け入れる体制を担う協力医療機関は、「病院」に限られます。

現在は経過措置期間

基準には、協力医療機関を「定めておかなければならない」という義務規定が設けられています。

ただし、3年間の経過措置があり、2027年3月31日までの間は努力義務として扱われています。

時期を整理すると

2026年9月現在は経過措置期間中です。2027年4月1日から経過措置が終了し、義務規定が本格的に適用されます。

自分の施設は「義務」なのか「努力義務」なのか

施設・サービス 求められる体制 要件を満たす協力医療機関を定めている割合
介護老人福祉施設
(地域密着含む)
3要件・義務規定+経過措置 67.9%
介護老人保健施設 3要件・義務規定+経過措置 83.3%
介護医療院 3要件・義務規定+経過措置 84.9%
養護老人ホーム 3要件・義務規定+経過措置 60.4%
軽費老人ホーム ①常時相談・②常時診療の2要件を満たす医療機関の設定を努力義務 59.5%
特定施設入居者生活介護 ①常時相談・②常時診療の2要件を満たす医療機関の設定を努力義務 73.6%
認知症対応型共同生活介護 ①常時相談・②常時診療の2要件を満たす医療機関の設定を努力義務 64.2%

なお、養護老人ホームは介護保険施設ではありませんが、今回の高齢者施設と医療機関との連携に関する基準見直しの対象に含まれています。

また、表の上4類型は3要件、下3類型は2要件についての割合なので、単純な横比較には注意が必要です。

整備は進んでいる

前年と比較すると、特養は56.6%から67.9%へ、老健は70.0%から83.3%へ、介護医療院は72.4%から84.9%へ、養護老人ホームは45.7%から60.4%へ、それぞれ上昇しています。

協力医療機関の整備そのものは進んでいるといえます。

一方、調査時点では、特養で約3割、養護老人ホームでは約4割が3要件すべてを満たす協力医療機関を確保できていません。

「施設が頑張ればよい」だけでは解決しない

要件を満たす協力医療機関を定めていない施設では、「周辺に医療機関が少ない、またはない」という回答が、全部過疎地域で37.3%、過疎地域型二次医療圏で36.6%に上っています。

地域によっては、そもそも連携できる医療資源が限られています。

さらに、第264回資料2が引用する「令和7年度入院・外来医療等における実態調査」では、協力医療機関を担うことを断った医療機関側の理由も示されています。

協力医療機関を担うことを断った主な理由 割合
常時診療を行う体制の確保が困難 30.1%
すでに複数の介護施設と連携しており、更なる連携先の拡充が困難 29.0%
常時相談対応を行う体制の確保が困難 25.8%

施設側と医療機関側、双方に現実的な制約があることが分かります。

連携できても「会議」が負担になっていた

協力医療機関連携加算を算定していない理由として、「定期的な会議の負担が重く、会議を行えていない」と回答した割合は、特養46.3%、老健52.9%、介護医療院40.3%でした。

こうした実態も踏まえ、2026年度には協力医療機関連携加算の定期的な会議について、一定の条件下で頻度を減らす見直しが行われています。

ここは混同しない

見直されたのは加算における会議頻度などの運用です。協力医療機関そのものに求められる3要件が緩和されたわけではありません。

自治体の役割もこれから

協力医療機関について施設から届け出られた情報を「特に活用していない」と回答した割合は、都道府県で53.2%、市区町村で77.5%でした。

また、協力医療機関との連携に向けて施設等への具体的な支援をすでに行っている市区町村は6.4%でした。

これは、自治体が何もしていないという意味ではありません。今後の活用や支援を予定している自治体もあります。

ただ、協力医療機関制度を「施設と病院が個別に契約する話」だけで終わらせるのではなく、地域の中で医療機関を把握し、連携先を探している施設を支援するなど、地域単位の仕組みも重要になってきます。

出典: 第264回分科会 資料2高齢者施設等と医療機関の連携体制等にかかる調査研究事業 結果概要

2.感染対策|「加算がある」だけでは連携は広がらない

2024年度介護報酬改定では、高齢者施設等感染対策向上加算が新設されました。

加算Ⅰは月10単位、加算Ⅱは月5単位です。

加算Ⅰでは第二種協定指定医療機関との連携や、一定の感染対策研修などへの参加が求められ、加算Ⅱでは一定の要件を満たす医療機関から、3年に1回以上、感染制御等に関する実地指導を受けることなどが要件となっています。

ところが、第264回資料では、老健と介護医療院でも約半数、その他の対象サービスでは7割以上が、高齢者施設等感染対策向上加算を算定していないと整理されています。

未算定の理由として相対的に多かったのは、研修や実地指導を行う医療機関との連携が難しいこと、そして研修や実地指導を行う時間の確保が難しいことでした。

第二種協定指定医療機関との体制も、まだ十分ではない

施設 新興感染症発生時に第二種協定指定医療機関と対応できる体制を確保
介護老人福祉施設 28.5%
介護老人保健施設 37.7%
介護医療院 50.4%

加算を算定しているかどうかだけでなく、その前提となる医療機関との連携体制そのものが、まだ十分に整っていない施設も少なくないことが分かります。

福祉教育ラボとしての読み

今回の制度設計から見えてくるのは、感染症対応を施設だけで完結させるのではなく、平時から医療機関と関係をつくり、感染症発生時に専門的な支援へつながれる体制を整えようとする方向です。

しかし、「連携してください」「研修を受けてください」と制度に書くだけでは、その仕組みは動きません。

地域に連携可能な医療機関があること。施設側にも研修や連携の時間があること。そして、医療機関側にも介護施設を支える余力があること。

こうした条件まで含めて考える必要があります。

3.ACP|「実施するか」から「介護の中でどう位置づけるか」へ

ACPとは、アドバンス・ケア・プランニングの略です。

将来の医療やケアについて、本人による意思決定を基本としながら、本人・家族等・医療・ケア関係者が繰り返し話し合っていく考え方です。

本人の意思は一度決めたら固定されるものではなく、心身の状態や置かれた状況によって変化する可能性があります。そのため、話し合いを繰り返すことが重要になります。

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にも、この考え方が盛り込まれています。

一方、第264回資料では、多くの介護サービスでこのガイドラインは看取り関連加算等における参考として位置づけられており、施設基準として原則入所者全員を対象にガイドラインに基づく対応を求めているのは介護医療院サービスのみと整理されています。

老健では「必ず実施」が28.0%、「全く実施しない」が21.6%

今回、老健におけるACPの実施状況も示されました。

令和7年度老人保健健康増進等事業「介護老人保健施設利用者等に対する急変時等の治療方針に関する意思決定支援にかかる調査研究事業」によるものです。

ACPの実施状況 割合
必ず実施している 28.0%
全く実施していない 21.6%

この実施状況についての回答施設数は825施設です。

一方、ACPの話し合いを行う時期について回答した628施設では、次のようになっています。

ACPの話し合いを行う時期 割合
状態悪化時 76.1%
看取り期 71.8%
入所時 59.9%
本人・家族等から求められたとき 29.9%
入所前 22.9%
定期的 15.4%
数字の母数に注意

ACPの実施状況はn=825、話し合う時期はn=628です。76.1%という数字は、「老健825施設の76.1%がACPを実施している」という意味ではありません。

2027年度改定で「ACP義務化」が決まったわけではない

厚生労働省が今回示した論点は、「各サービスにおけるACPの位置づけについてどのように考えるか」です。

現段階で、「全介護サービスでACPを義務化する」「ACPを実施すれば新しい加算を付ける」と決まったわけではありません。

今後、それぞれのサービスの役割や利用者像も踏まえながら、制度上どのように位置づけるかが議論されます。

ACPで大切にしたいこと

ACPは「説明して同意書を取ること」でも、「一度、終末期の希望を聞くこと」でもありません。

本人の意思を基本に、その意思が変化し得ることを前提として、必要なときに再び話し合えること。制度上の形式と、ACPの本質は分けて考える必要があります。

出典: 第264回分科会 資料2(ACP関連:34~35ページ)

4.看取り|サービスによって評価の仕組みが違う

看取りについても、現在の介護報酬ではサービスごとに異なる評価が設けられています。

第264回資料では、看取り関連加算について、事業所ベースの算定率が示されています。

サービス・加算 死亡日の算定率
特養・看取り介護加算Ⅰ 24.9%
老健・ターミナルケア加算 34.0%
特定施設・看取り介護加算Ⅰ 11.7%
認知症GH・看取り介護加算 3.7%
「老健の34%が施設で看取られた」という意味ではありません

この数字は、各加算を請求した事業所数を総請求事業所数で割った「事業所ベース」の算定率です。

しかも令和7年10月サービス提供分という1か月分の請求実績なので、その月に当該加算の算定対象となる看取りがなかった事業所も分母に含まれます。

そのため、認知症GHの3.7%を見て、「看取りに対応しているGHは3.7%しかない」と読むこともできません。

また、サービスによって利用者像や施設機能、加算要件が異なるため、単純に数字の高低だけで評価することもできません。

今回、厚生労働省が示した問いは、「本人が望む場所で、より質の高い看取りを実施できるようにするためには何が必要か」、そして「各サービスに期待される機能・役割に応じた評価をどう考えるか」というものです。

出典: 第264回分科会 資料2(看取り関連:41ページ)

4つの論点は、実は一つの時間軸でつながっている

ここまで、協力医療機関、感染症対応、ACP、看取りを別々に見てきました。

制度上は別の論点です。

しかし、一人の利用者の生活から見ると、これらは一本につながっています。

施設で日々の生活を送る。

病状が変化することがある。

感染症にかかることもある。

医療が必要になることもある。

入院が必要になることもある。

そして、人生の最終段階を迎えることもあります。

その過程で問われるのは、必要なときに医療につながれるのか、本人はどのような医療やケアを望んでいるのか、その思いを家族や専門職と共有できているのか、本人の考えが変わったときにもう一度話し合えるのか、そして最期まで本人が望む生活をどこまで支えられるのか、ということです。

今回の4つの論点は、別々の制度から、この一連の生活を支えようとしているとも読めます。

現場はいま何を確認しておけばよいのか

今回の第264回分科会を理由に、現時点で新しい加算への対応や、新たなACP制度への対応を始める必要はありません。まだ検討段階だからです。

一方で、すでに動いている制度については、今から確認できることがあります。

領域 いま確認しておきたいこと
協力医療機関 自施設に必要な要件を満たしているか。2027年4月に向けた準備はできているか
急変時対応 夜間・休日を含め、誰がどこへ連絡するのか職員が分かっているか
入院連携 医師が入院を必要と判断した場合の流れが実際に機能するか
感染対策 感染発生時に相談できる医療機関との関係が平時からあるか
ACP 意向確認が一度だけの手続きになっていないか
看取り 本人・家族との話し合いと医療・介護職間の共有が実際の支援につながっているか

特に協力医療機関については、2027年4月1日という具体的な節目があります。

  • 夜間に急変したとき、実際に連絡できるのか
  • 診療が必要なとき、どうつながるのか
  • 入院が必要になったとき、どのような流れになるのか
  • 状態が改善したあと、施設へ戻ることまで想定されているのか

医療機関の名前が書類に記載されているだけではなく、実際の動きまで確認しておくことが重要です。

福祉教育ラボの視点|介護を「医療化する」ことが目的ではない

福祉教育ラボの視点

医療との連携が強くなると、「介護施設が、より医療を担う方向へ進むのではないか」と感じるかもしれません。

しかし、介護施設が病院になることが目的ではないはずです。

介護が担っている中心には「生活」があります。

食べること。眠ること。人と話すこと。好きな時間を過ごすこと。自分で選ぶこと。

その生活の中で病気や老いと付き合い、必要なときには医療につながる。

そして人生の最終段階においても、本人の意思や価値観をできるだけ中心に置きながら支えていく。

そのために、医療と介護の間にある「切れ目」をどう減らすのか。

今回の議論の重要な意味は、そこにあるのではないでしょうか。

医療との連携を強くすることと、本人の生活を尊重することは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。

必要な医療につながれるからこそ、安心して生活を続けられる。

本人の思いを繰り返し確認しているからこそ、医療や制度だけを中心に支援を決めずに済む。

感染症が起きたときに外部の専門家へ相談できるからこそ、介護職員だけが抱え込まずに済む。

そうした関係を、何かが起きてからではなく、日常からつくっておくことが重要になります。

制度を実際の「支援」に変えるために
  • 人と人がつながれること
  • 組織と組織がつながれること
  • 必要な情報が共有されること
  • 話し合う時間が確保されること
  • その中心に本人の生活と意思があること

今回の調査を見ると、その難しさも見えてきます。

医療機関が少ない地域がある。医療機関側にも常時対応する余力がない。施設側には会議や研修の負担がある。自治体による支援体制も、まだ十分に広がっているとはいえない。

制度は、基準や加算を作っただけでは動きません。

制度を実際の「支援」に変えるのは、そうしたつながりなのだと思います。

まとめ|2027年度改定で問われているのは「制度を作った後」

第264回介護給付費分科会では、医療・介護連携と人生の最終段階をめぐって、大きく4つのテーマが示されました。

  • 協力医療機関は、2027年3月31日の経過措置終了が近づいている
  • 感染対策は、加算があっても医療機関との連携や時間確保が壁となっている
  • ACPは、各介護サービスで今後どのように位置づけるかが検討される
  • 看取りは、各サービスの役割に応じた評価のあり方が問われている

さらに厚生労働省は、令和8年度改定検証調査について、2026年秋ごろを目途に速報値を示す予定としています。

その結果によって、2027年度介護報酬改定の具体的な方向性も、さらに見えてくる可能性があります。

今の段階で見るべきこと

「新しい加算は何単位なのか」だけではありません。

現在の制度が現場で本当に機能しているのか。医療と介護が利用者の生活を中心につながれているのか。そして、本人の意思を支える仕組みになっているのか。

福祉教育ラボでは、今後も2027年度介護報酬改定について、「すでに決まったこと」と「これから検討されること」を分けながら、現場でどう受け止めればよいのかを追っていきます。

一次資料

今回の記事は、厚生労働省「第264回社会保障審議会介護給付費分科会」の資料2「医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護」を中心に、同資料で使用された令和7年度調査等を確認して整理しています。

資料2では、協力医療機関の前年度比較は4ページ、医療機関側が連携を断った理由は17ページ、ACPの制度上の位置づけは34ページ、ACPの実施状況は35ページ、看取り関連加算は41ページ、2027年度改定に向けた論点と2026年秋ごろの速報予定は71ページに掲載されています。