介護施設の食費・居住費が2026年8月から変更
全員が同じように上がるわけではない|補足給付で確認したいこと
8月分の請求書を見た家族が、食費や居住費の金額が変わっていることに気づくかもしれません。
「介護施設の費用が、一律に値上がりしたのだろうか」
しかし、今回の変更は、すべての利用者に同じ金額が加算されるものではありません。
2026年8月1日から、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院やショートステイにおける食費の基準費用額と、低所得者を対象とする補足給付の負担限度額が一部見直されました。

8月1日から何が変わったのか
大きな変更点は、次の三つです。
1.食費の基準費用額が1日100円引き上げ
食費の基準費用額は、1日1,445円から1,545円へ引き上げられました。
基準費用額とは、食事の提供に必要となる平均的な費用を踏まえて国が定める標準額です。施設がすべての利用者に一律で請求する金額そのものではありません。
2.第3段階①・②の食費負担が引き上げ
補足給付の対象者のうち、第3段階①と第3段階②では、食費の負担限度額が変更されました。
| 利用者負担段階 | 2026年7月まで | 2026年8月から | 変更額 |
| 第1段階 | 300円 | 300円 | 据え置き |
| 第2段階 | 390円 | 390円 | 据え置き |
| 第3段階① | 650円 | 680円 | 30円増 |
| 第3段階② | 1,360円 | 1,420円 | 60円増 |
いずれも施設入所時の1日当たりの負担限度額です。
ショートステイでは金額が異なり、第3段階①は1,000円から1,030円へ、第3段階②は1,300円から1,360円へ変更されています。
3.第3段階②では、居住費も一部変更
居住費については、第3段階②に該当する人を対象として、多くの居室区分で負担限度額が1日100円引き上げられました。
主な変更は次のとおりです。
| 居室区分 | 2026年7月まで | 2026年8月から |
| 多床室・特養等 | 430円 | 530円 |
| 従来型個室・特養等 | 880円 | 980円 |
| 従来型個室・老健、介護医療院等 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室 | 1,370円 | 1,470円 |
老健や介護医療院の多床室は、施設類型や室料を徴収する区分によって、引上げの対象となる場合と、430円に据え置かれる場合があります。
第1段階、第2段階、第3段階①の居住費負担限度額は、今回の見直しでは変更されていません。
補足給付とは何か
介護保険施設の食費と居住費は、原則として介護保険の施設サービス費とは別に、利用者が負担します。
ただし、所得や預貯金額などが一定の要件を満たす人については、所得に応じた負担限度額が設定されます。
国が定める基準費用額と、本人が支払う負担限度額との差額を、介護保険から施設へ給付する仕組みが「補足給付」です。制度上の名称は、特定入所者介護サービス費または特定入所者介護予防サービス費です。
補足給付の主な対象は、生活保護受給者や、世帯全員が市町村民税非課税で、所得・預貯金などの要件を満たす人です。
単に本人の年金額だけで判断するのではなく、配偶者を含む世帯の課税状況や預貯金額なども確認されます。
所得区分の基準も一部変更
2026年8月から、第2段階と第3段階①を分ける所得基準が、80万9,000円から82万6,500円へ見直されました。
2025年の老齢基礎年金の満額が従来の基準を上回ったことを受け、年金額の改定だけを理由に低所得者の負担段階が上がらないようにするための変更です。
第2段階は、年金収入金額と合計所得金額の合計が82万6,500円以下、第3段階①は82万6,500円を超え120万円以下が一つの基準となります。
ただし、非課税年金や預貯金額、世帯の課税状況なども関係するため、本人や家族だけで段階を判断することはできません。

全員が同じように上がるわけではない
今回の変更で注意したいのは、「介護施設の利用者全員が一律に同じ金額だけ値上がりする」とは限らないことです。
実際の負担は、次の条件によって異なります。
1.補足給付の対象になっているか
2.利用者負担段階が第1から第3段階②のどこに該当するか
3.施設入所かショートステイか
4.多床室、従来型個室、ユニット型個室など、どの居室を利用しているか
5.施設との契約で食費・居住費がどのように定められているか
補足給付の対象ではない第4段階の人などが負担する食費・居住費は、施設と利用者との契約に基づいて決まります。
そのため、基準費用額が1日100円引き上げられたからといって、実際の請求額が自動的に100円上がるとは限りません。施設が契約額を変更しているかどうかを、料金表や契約書、施設からの通知で確認する必要があります。
請求額が変わったときに確認すること
8月以降の請求額に疑問がある場合は、まず次の書類を確認します。
- 介護保険負担限度額認定証
- 施設から届いた料金改定のお知らせ
- 入所契約書や重要事項説明書
- 食費・居住費の請求明細
- 利用している居室の区分
認定証が手元にない、補足給付の対象になるか分からない場合は、市区町村の介護保険担当窓口へ確認します。
請求額の内訳が分からない場合は、施設の生活相談員や事務担当者に、食費、居住費、介護保険サービス費、日常生活費を分けて説明してもらうことが大切です。
福祉教育ラボの視点
食費や居住費の変更は、単なる請求事務の問題ではありません。
月々の負担が増えることで、本人が今の施設で生活を続けられるか、家族がどのように費用を支えるかという問題につながります。
だからこそ、支援者は「制度が変わったので仕方がない」と説明して終わるのではなく、
- 何が変更されたのか
- 本人はどの負担段階なのか
- 他に利用できる負担軽減制度はないか
- 今後も無理なく生活を続けられるか
を、本人や家族と一緒に確認する必要があります。
制度の数字を理解する目的は、請求額を計算することだけではありません。
その人が、経済的な理由によって必要な生活や支援を失わずに済むよう、制度を暮らしにつなげることです。


