有料老人ホームの登録制、基準案が具体化|対象・13㎡・人員配置・囲い込み対策を整理
有料老人ホームへの「登録制」導入そのものは法律で決まっています。一方、この記事で紹介する人員・設備・運営などの具体的な登録基準は、2026年9月18日に示された案です。今後の検討や政省令、都道府県条例によって具体的な内容が変わる可能性があります。
厚生労働省は2026年9月18日、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の第9回会合を開き、一定の有料老人ホームに導入される「登録制」の具体的な基準案を示しました。
今回の検討事項は、大きく4つです。
登録基準、登録手続きや情報公表、登録制の対象となるホームの範囲、そして入居者紹介事業者の優良認定制度。
登録制そのものは、2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」によって、すでに導入が決まっています。
ただし、9月18日に示された人員・設備・運営などの具体的な基準は、まだ最終決定ではありません。
今回の議論で重要なのは、単に「有料老人ホームへの規制が増える」ということではありません。
高齢者が住む場所を選び、その後にどの介護や医療サービスを利用するのか。そして、心身の状態が変わった後も、その人の住まいと選択をどう守るのか。
そこまで踏み込んだ制度設計になっています。
まず押さえたい「決まったこと」と「まだ案のこと」
今回の制度は、少し整理して読む必要があります。
法律によって「登録制を導入すること」自体は決まっています。
一方、9月18日に示された13㎡という居室面積、人員配置、オンコール体制、囲い込み対策などは、今後の政省令や条例へつなげるための基準案です。
さらに改正後の制度では、国がすべての細かな基準を全国一律に決めるわけではありません。
改正後の老人福祉法では、登録を行う主体は都道府県知事とされ、登録基準は都道府県の条例で定めます。
その際、人員配置や適切な介護サービス利用の確保、入居者の処遇・安全などに密接に関係する一部の運営事項は、国が定める基準に「従うべき基準」として扱われます。
これに対し、設備などについては国の基準を「参酌すべき基準」として条例を定めます。
「国の資料に13㎡と書かれているから、全国どこでも一律に13㎡になる」と現時点で言い切れるわけではありません。
登録制の対象はどのホーム?
今回、登録制の対象についても、かなり具体的になりました。
これまで想定されていた「中重度の要介護者を入居対象とするホーム」に加え、
- 要介護者で、認知症の日常生活自立度がⅢ以上の人を入居対象とするホーム
- 重度の医療ニーズを有する人や、一定の医療行為を受ける人を入居対象とするホーム
についても登録制の対象とする案が示されています。
医療ニーズについては、「特掲診療料の施設基準」の別表7・8に該当する人が想定されています。
例えば、末期の悪性腫瘍、在宅酸素療法を行っている状態、在宅人工呼吸を行っている状態などが含まれます。
そして今回、かなり重要なのが「現在の入居者だけで判断するわけではない」という点です。
登録対象は入居要件で判断するため、現在、中重度の要介護者が実際に入居していなくても、「中重度になっても住み続けられるホーム」は登録対象になります。
厚生労働省資料では、この考え方から「既存のホームのうち大半が登録制の対象になる」と整理されています。
現在の入居者像だけではなく、ホームがどのような人を入居対象としているのか、重度化後も住み続けられる設計なのかが関係します。
一方、自立した入居者が各居室のキッチンで自炊し、必要に応じて本人の意思で併設食堂を利用するような場合については、老人福祉法上の「食事の提供」とは判断しない案も示されています。
今後は、
「そもそも有料老人ホームに該当するのか」
「そのうえで登録制の対象になるのか」
という二段階で整理する必要があります。
人員基準案|「24時間ホーム職員常駐」ではない
人員配置についても具体案が示されました。
管理者と生活相談員は1名以上。ただし、業務に支障がなければ施設内や他施設の職務との兼務を可能とする案です。
介護職員・看護職員については、提供する介護等の内容や入居者の健康管理などを踏まえ、介護等を安定して提供できる職員体制を確保します。
そして重要なのが、職員の常駐時間です。
原則、夜間を除き、ホーム職員が常駐。
夜間・緊急時は、必要な場合に職員や連携先が出勤できるオンコール体制を確保します。
つまり、
「登録ホームではホーム職員が24時間必ず建物内に常駐する」
という案ではありません。
食事を提供する場合には、栄養士または管理栄養士の関与のもとで献立作成などを行える体制を確保し、機能訓練を実施する場合には、その内容に応じて機能訓練指導員を確保する案も示されています。
新たに義務となる部分については、一定の経過措置を設ける方向です。
設備基準|「13㎡以上」は参酌基準
設備については、現行の有料老人ホームの標準指導指針などを踏まえ、居室は原則個室、入居者1人当たり13㎡以上とする案が示されました。
廊下は車いす等で安全かつ円滑に移動できる幅を確保し、浴室、便所、食堂なども入居者が利用しやすいものとし、緊急通報装置などを設ける方向です。
設備に関する事項は「参酌すべき基準」です。国の基準を踏まえながら、最終的には都道府県等が条例で定めます。
「参酌基準」だから無視してよいという意味ではありませんが、地域の実情などを踏まえ、条例で異なる基準を定める余地があります。
また、既存建物を活用したホームなどで基準を満たすことが難しい場合には、代替措置を講じ、入居者へ説明することなどを条件に、当面の特例を設ける案も示されています。
サービス付き高齢者向け住宅として登録されている施設については、高齢者の居住の安定確保に関する法律第7条第1項の登録基準による整理が想定されています。
虐待防止、BCP、協力医療機関も基準へ
運営面では、介護サービス事業所ではすでに馴染みのある内容が数多く並びました。
入居者の意思と人格の尊重、職員研修、虐待防止、身体的拘束等の適正化、事故発生時の対応、災害・感染症を想定したBCP、個人情報の取扱い、衛生管理などです。
さらに、協力医療機関を定めること、看取りまで行うホームでは看取り指針を整備すること、地域との交流に努めることなども示されています。
なお、上記の介護報酬上の協力医療機関等の仕組みと、今回の有料老人ホーム登録基準は同じ制度ではありません。それぞれの制度の中で、医療との連携や看取りをどう支えるかが議論されています。
登録制は、単に行政へ書類を提出する制度ではありません。
一定の介護・医療ニーズを持つ人が生活する「住まい」として、どのような質と安全を求めるのか。
その最低線を制度として明確にする仕組みでもあります。
「囲い込み」対策はかなり具体的になった
今回特に注目したいのが、いわゆる「囲い込み」への対応です。
住宅型有料老人ホームでは、住まいの契約と、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援などの契約は本来別々です。
入居者には、自分が利用する事業者を選ぶ権利があります。
しかし、ホームと同一・関連法人が介護サービス事業所などを運営している場合、特定の事業者の利用が事実上セットになることが問題視されてきました。
今回の案では、
- 併設・隣接する事業所や同一・関連法人、提携関係にある事業者等の利用を入居条件にすること
- かかりつけ医や担当ケアマネジャーの変更を強要すること
- 関連事業所を利用した場合に、家賃を安くするなどの優遇措置を設けること
などを不当な条件として扱う案が示されました。
ただし、地方部などで利用可能な事業所が限られ、特定事業所の利用が事実上不可欠になる場合については、それ自体を不当な条件とは扱わない考え方も示されています。
本人に選択肢があるか。他の選択肢が説明されているか。本人が希望するサービスを選ぶことを妨げていないか。そのプロセスが重要です。
入院や状態変化を理由に「住み続けられない」ことも問題に
今回の契約基準には、もう一つ重要な内容があります。
入居者が病院へ入院したことや、心身の状態が変化したことを理由として、本人との合意なく居室を変更したり、契約を解除したりするなど、入居者保護の観点から不当と認められる条件を付けないことです。
これは「囲い込み」とは少し性質が異なりますが、本人の選択を守るという点では同じ問題につながっています。
高齢になり、病気になったり、介護度が重くなったりすることは、特別な出来事ではありません。
状態が変わったときに住まいを失わないこと。
それも、高齢者の生活を支える制度を考えるうえで重要な視点です。
ケアマネジャーの独立性をどう守るのか
囲い込み対策は、ケアマネジメントそのものにも踏み込みました。
今回の案では、入居契約とケアマネジメント契約の独立性、ケアマネジャーの独立性を確保するため、
- 契約やケアプラン作成の手順書・ガイドラインを策定すること
- 重要事項説明で入居希望者へ明示すること
- 施設長・管理者へ研修を行うこと
- 相談担当者を置くこと
などが示されています。
さらに近隣の介護サービス事業所について情報提供し、ホームや関連事業者など特定の事業者のサービスへ限定・誘導せず、本人が希望するサービスの利用や選択を妨げないことも基準案に含まれています。
これは単に「ホームとケアマネ事業所を別法人にすればよい」という話ではありません。
ケアプランを作る過程で本人の選択が守られているのか。
ホームの経営上の都合が、本人の生活課題より先に置かれていないか。
そこが問われます。
「住まい」と「介護」の会計も分ける
今回の案では、有料老人ホーム事業の会計と、介護サービス等関連事業の会計を明確に区分することも示されています。
住宅型有料老人ホームは、制度上「住まい」と外部の「介護サービス」が分かれています。
一方、同じ法人グループが両方を運営するケースも少なくありません。
制度上別の事業である以上、どこから収益が入り、どこに費用が発生しているのかを明確にする。
囲い込み対策を契約だけでなく、事業運営の透明性からも支えようとしていると見ることができます。
入居者紹介事業者にも新しい仕組み
今回の第9回資料では、「入居者紹介事業者」についても独立した論点が設けられました。
高齢者や家族が、適切に運営されている紹介事業者を確認・選択できるよう、現在の紹介事業者届出公表制度を前提として、公益社団法人等が一定の基準を満たす事業者を「優良事業者」として認定する仕組みを創設する案です。
具体的な制度設計については、有料老人ホーム事業者、紹介事業者、有識者等による協議の場で検討する方向が示されています。
またホーム側の運営基準案でも、紹介事業者を利用するとき、入居希望者の介護度や医療の必要度などの属性に応じた手数料設定など、社会保障費の不適切な費消を助長すると誤解されるような設定を行わないことが示されています。
「どこのホームを紹介されるのか」という入口もまた、本人の選択に影響します。
今回の制度は、ホームに入居した後だけではなく、ホームを選ぶまでのプロセスにも目を向けています。
登録すると何が公表される?
登録申請・情報公表の仕組みも具体化してきました。
申請書には、施設名称などの基本情報だけでなく、入居対象者、ホームが提供する介護等の内容、他の介護サービス事業者との提携状況、紹介事業者を利用する場合の手数料設定の考え方などを記載する案です。
入居契約に関する約款、重要事項説明書、ケアマネジメントの独立性に関する書類、決算書・財務諸表などの提出も想定されています。
新しい登録システムでは、登録申請・届出、自治体による審査、情報公表までを一つの仕組みで完結させる方向が示されています。
現在の介護サービス情報公表システムについても、検索条件や視認性を改善する案があります。
利用者や家族にとっては、料金や部屋の広さだけではなく、
- どのような人を受け入れているのか
- どのような職員体制なのか
- どの事業者と連携しているのか
といった情報からホームを比較できる仕組みにつながる可能性があります。
有料老人ホームが「自治体の介護計画」に組み込まれる
今回の記事で、もう一つ見落としてはいけないのが自治体側の変化です。
改正後の介護保険法では、市町村の介護保険事業計画において、有料老人ホームの入居定員総数は、現在の「任意記載事項」から、介護サービスの必要量を見込む際に「勘案しなければならない事項」へ位置づけが強化されます。
つまり登録制は、「一つひとつのホームを規制する制度」だけではありません。
地域にどれだけ高齢者向け住まいがあり、そこにどの程度の介護ニーズがあるのか。
介護施設とのバランスをどうするのか。
必要であれば特定施設への移行をどう考えるのか。
そうした地域全体の介護サービス供給体制の中へ、有料老人ホームを明確に位置づけていく動きでもあります。
さらに第10期介護保険事業計画をめぐる議論では、まちづくりの「立地適正化計画」との調和や、医療・福祉・商業などの機能と公共交通を組み合わせる「コンパクト・プラス・ネットワーク」との連携も想定されています。
有料老人ホームの位置づけそのものが、地域政策の中へ組み込まれようとしています。
登録対象外のホームなら基準は関係ない?
登録制の対象にならないホームについても、何も規制されないわけではありません。
改正後の老人福祉法では、入居者の適切な処遇、安全の確保、秘密保持などのため、有料老人ホームの設置者が遵守すべき事項を厚生労働省令で定める仕組みが設けられます。
第9回資料では、登録対象外となる届出ホームについても、登録基準と概ね同様の遵守事項を設定する方向が示されています。
今後は、
「登録有料老人ホーム」と「届出有料老人ホーム」
という区分が生まれます。
ただし、
「登録ホームだから質が高い」
「届出ホームだから質が低い」
という格付けではありません。
登録制は、一定の介護・医療ニーズを持つ人を入居対象とするホームについて、事前の登録とより具体的な基準を設ける仕組みです。
「登録ホーム=介護付きホーム」ではない
一定の住宅型有料老人ホームが「登録有料老人ホーム」になっても、それだけで特定施設入居者生活介護、いわゆる「介護付き有料老人ホーム」になるわけではありません。
登録制は老人福祉法上の仕組みです。
特定施設入居者生活介護は介護保険法上の指定です。
別の制度として理解する必要があります。
そのため厚生労働省は、すでに特定施設の指定を受けているホームや、サービス付き高齢者向け住宅として登録されているホームについて、重複する手続きをできるだけ簡素化する方向も示しています。
登録施設介護支援も創設される
今回の法改正では、登録有料老人ホームの入居者を対象とする新しい介護保険上の相談支援として「登録施設介護支援」「登録施設介護予防支援」も創設されます。
これは第9回資料2で具体的な制度設計が示されたものではなく、2026年の法改正によって創設された別の仕組みです。
具体的な人員・運営基準や介護報酬については、今後の審議で確認する必要があります。
有料老人ホームの登録基準と、登録施設介護支援の制度設計はつながっていますが、同じものではありません。
「選べること」と「住み続けられること」
今回の登録制を見ると、人員基準、居室面積、BCP、協力医療機関、会計区分など、事業者が対応する項目が数多く並んでいます。
しかし、制度全体を少し引いて見ると、一つの問いが浮かびます。
高齢になり、認知症や医療ニーズが高くなれば、自分で情報を集め、複数のサービスを比較し、契約条件を読み込むことが難しくなる場合があります。
だからこそ、
- 選べる情報があること
- 他の選択肢が見えること
- ケアマネジメントが経営上の都合から独立していること
- 本人の意思を確認するプロセスがあること
- 病気や介護度の変化だけを理由に、簡単に住まいを失わないこと
それらを仕組みとして支える必要があります。
「囲い込み」の問題も、同一法人のサービスを使うこと自体が問題なのではありません。
本人に必要なサービスであり、選択肢について十分に説明を受けたうえで本人が選んだのであれば、それも一つの選択です。
問題なのは、他の選択肢が最初から見えないこと。
選ぼうとしても選べないこと。
そして本人の生活より先に、事業者側の事情で支援の形が決まってしまうことです。
今回の登録基準案は、「住宅型有料老人ホームをどう規制するか」という議論であると同時に、
支援を必要とするようになった後も、
「選べること」と「住み続けられること」をどう守るのか。
その仕組みをつくろうとする議論でもあります。
まだ決まっていないことに注意
9月18日の資料によって、制度の姿はかなり具体的になりました。
しかし、人員・設備・運営基準、対象範囲、経過措置などの具体的な規定は、まだ最終決定ではありません。
厚生労働省は、第10回検討会を10月頃に開催し、登録制施行に向けた対応を取りまとめたうえで、秋頃に社会保障審議会介護保険部会へ報告し、年内を目途に政省令を公布するスケジュールを示しています。
登録制の施行日は、法律公布から2年を超えない範囲で政令により定められます。
- 自分たちのサービス利用が入居と事実上セットになっていないか
- 本人に他のサービスを選べる情報を提供しているか
- 心身の状態が変わった場合の契約条件は適切か
- ホームとケアマネジメントの関係を説明できるか
- 住まいと介護サービス事業の会計を区分できているか
一方で、
「13㎡になった」
「夜間はオンコールでよいと決まった」
「自分のホームは登録対象だ」
と現段階で断定するのは適切ではありません。
今後公布される政省令、それを受けた都道府県条例、経過措置を確認する必要があります。
福祉教育ラボでは、今後の第10回検討会、介護保険部会、政省令、都道府県条例、登録施設介護支援の介護報酬などについて、引き続き確認していきます。
一次資料
- 厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第9回)」資料一覧 ↗
- 資料2「登録制の施行に向けた対応について」 ↗
-
参考資料1「登録基準に関する案と現行の標準指導指針等との比較」 ↗
現行の標準指導指針と、今回の登録基準案の違いを項目ごとに比較したい事業者に特に参考になる資料です。
- 厚生労働省|2026年改正法の概要(登録施設介護支援等) ↗
※本記事は2026年9月19日時点の公表資料をもとに整理しています。登録基準等は今後の検討、政省令・条例の制定によって変更される可能性があります。


