介護職がインフルエンザになったら何日休む?|出勤・復職ルールと「発症後5日・解熱後2日」を整理

学びの整理|2026年9月3日時点

「インフルエンザになったら、5日間は仕事を休まないといけない」

「熱が下がって2日たてば、もう出勤していい」

介護現場でも、こうした説明を聞くことがあります。

確かに「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」という基準があります。

ただし、これは学校保健安全法施行規則による児童生徒等の出席停止基準です。介護職などの成人労働者に、そのまま全国一律の法定出勤停止期間として適用されるわけではありません。

先に結論 介護職が季節性インフルエンザになった場合、「法律で全国一律に5日間出勤禁止」というルールはありません。本人の症状、発症からの経過、医師の指示、施設の感染管理、就業規則などを組み合わせて復職を判断します。

結論|介護職に「全国一律5日間」という法定出勤停止期間はない

季節性インフルエンザは、感染症法上の5類感染症です。

長野労働局の2026年版「労働条件ハンドブック」では、通常の季節性インフルエンザは感染症法による就業制限の対象ではなく、労働安全衛生法上の就業禁止についても通常は該当しないと整理されています。

したがって、季節性インフルエンザに罹患したことだけで、全国一律の日数について法律上の就業禁止がかかる仕組みではありません。

項目 学校の児童生徒等 介護職など成人労働者
基本となる制度 学校保健安全法 労働関係法令・就業規則・感染管理
発症後5日+解熱後2日 出席停止基準あり そのまま法定出勤停止期間にはならない
全国一律の日数 原則あり 季節性インフルエンザには一律規定なし
復帰判断 出席停止基準等 症状・経過・医師の指示・施設方針等
治癒・陰性証明 不要 不要
ここが最も重要です 「介護職も法律で5日休む」は正確ではありません。一方で、「法律に日数がないから熱が下がればすぐ出勤してよい」という意味でもありません。

「発症後5日・解熱後2日」は何のルール?

学校保健安全法施行規則では、インフルエンザの出席停止期間について、

発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで

としています。幼児では解熱後3日です。

例えば月曜日に発症した場合、月曜日が発症日、つまり0日目です。

月曜日に発症した場合の数え方
発症日
0日目
1日目
2日目
3日目
4日目
5日目
最短候補

「5日を経過する」必要があるため、発症日からの条件だけを見れば、最も早くても日曜日以降になります。

さらに「解熱した後2日」という条件も同時に満たす必要があります。

学校の基準にも例外があります 病状により、学校医その他の医師が「感染のおそれがない」と認めた場合には、この限りではありません。「5日・2日」は、医学的判断を一切許さない絶対的な数字ではありません。

ただし、この例外も含め、あくまで学校の出席停止基準の話です。

なぜ熱が下がっただけでは判断できない?

厚生労働省の2026年度夏期Q&Aでは、インフルエンザは一般的に、

発症前日から発症後3〜7日間、鼻や喉からウイルスを排出する

と説明しています。

ウイルス量は解熱とともに減りますが、解熱した後もウイルスを排出する場合があります。

咳やくしゃみが続く場合には、不織布マスクを着用するなど、周囲への感染を防ぐ配慮も求められています。

解熱=感染リスクゼロ、ではありません 「今日は平熱だから働ける」という本人の体調だけでなく、周囲へ感染させる可能性も含めて考える必要があります。

では、介護職はいつまで休めばいい?

参考になるのが、厚生労働省が2026年6月30日付で公表した「急性呼吸器感染症(ARI)に関する施設等内感染予防の手引」です。

手引では、咳のみの場合にはマスクや咳エチケットなどを行いながら就業することを検討する一方、咳に加えて発熱等の症状がある場合には、

症状が改善するまで就業を控える

よう指導することなども検討するとしています。

つまり、厚労省の施設向け手引も、「インフルエンザなら必ず○日」とはしていません。

復職時には、少なくとも次の項目を確認します。

  • 発症してから何日経過しているか
  • 解熱してからどの程度経過しているか
  • 咳や強い倦怠感などが残っていないか
  • 医師から療養・外出について指示されていないか
  • 重症化リスクの高い利用者へ接する可能性があるか
  • 施設・事業所の就業規則や感染管理ルールはどうなっているか
「5日・2日」を施設が参考にすることは可能 学校の基準を感染管理上の参考として使うこと自体が問題なのではありません。「法律で介護職にも義務付けられている」と説明することと、施設が感染管理のために参考基準として採用することを区別する必要があります。

復職に「治癒証明書」「陰性証明書」は必要?

これは厚生労働省が明確に示しています。

2026年度夏期ARI Q&Aでは、インフルエンザなどの急性呼吸器感染症で休んでいた従業員が職場へ戻る際、

治癒証明書や陰性証明書の提出は不要

としています。

陰性であることを一般的に証明することが難しいことに加え、証明書を得るためだけの受診が医療機関へ過剰な負担をかける可能性があるためです。

施設の運用を確認 「インフルエンザで休んだ職員は、必ず治癒証明書を提出する」というルールがある場合には、現在の厚労省Q&Aと照らして見直す価値があります。

家族がインフルエンザになったら、本人も休む?

職員本人は無症状でも、同居家族がインフルエンザになることがあります。

この場合も、「家族が感染したら自動的に5日間休業」という全国一律の法的ルールはありません。

長野労働局は、本人ではなく家族が感染している場合、保健所等から休業させるよう指導があるなどの事情がなければ、使用者の判断で休ませる場合には休業手当が必要と解されるとしています。

介護施設では、本人に症状がない場合でも、次の点を踏まえて判断します。

  • 本人に症状がないか
  • 勤務前後の健康観察をどうするか
  • マスク・咳エチケット等の感染対策
  • 施設内の流行状況
  • 接する利用者の重症化リスク
「家族が感染=自動的に休む」でも、「本人が元気=何も考えなくてよい」でもありません。

インフルエンザで休んだ日の給与はどうなる?

ここは感染管理とは別に、「誰の判断で、なぜ休むのか」という労務管理の問題になります。

状況 基本的な確認事項
本人が発症し、体調不良で働けない 就業規則、年休、病気休暇等を確認
医師から療養を指示され、労務不能 本人の疾病による休業として整理
本人は働けるが、会社判断で休ませる 休業手当が問題になる
家族が感染しただけで、無症状の本人を会社判断で休ませる 休業手当が必要となる場合が一般的
本人が年休利用を希望する 年次有給休暇として処理

長野労働局は、通常の季節性インフルエンザは感染症法上の就業制限対象ではないため、使用者の判断で休業を命じた場合、休業手当が必要となるケースが一般的としています。

会社が年休を勝手に充ててよいわけではない

年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与える制度です。

厚生労働省は、感染症を理由として「一律に年休を取得したことにする」ような扱いについて、使用者が一方的に年休を取得させることはできないとしています。

「会社から休めと言われた=自動的に有休」ではありません 年休を利用する場合には、本人の意向を確認して扱う必要があります。ただし、年休には計画的付与など別の制度もあるため、実際には就業規則や労使協定も確認します。

傷病手当金は使える?

インフルエンザで数日以上休む場合には、健康保険の傷病手当金が関係する場合もあります。

ただし、傷病手当金は「業務外」の病気やけがによる療養が対象です。

協会けんぽでは、主に次の条件を満たす場合に対象となります。

  • 業務外の病気・けがで療養中である
  • 仕事に就くことができない
  • 連続する3日間の待期を含め4日以上休んでいる
  • 休業期間について給与の支払いがない

待期3日間の後、4日目以降が支給対象となります。給与が一部支払われる場合には、傷病手当金との差額調整が行われる場合があります。

業務上の感染は別の整理 業務上・通勤による病気やけがは、健康保険の傷病手当金ではなく、労災保険の対象となる可能性があります。介護施設内で感染したから直ちに労災認定されるという意味ではなく、個別に判断されます。

「人が足りないから出勤して」は感染対策なのか

介護現場では、制度論だけでは解決できない問題があります。

「今日休まれると夜勤が組めない」

「熱は下がったなら出てきてもらえないか」

「自分が休むと、ほかの職員に迷惑をかける」

人手不足の職場では、こうした状況が起こります。

しかし、感染対策を職員本人の責任感や我慢だけに任せることはできません。

職員が体調不良を申告する
決められた担当者が就業判断する
休業中の勤務体制を調整する
復職条件を確認して戻る

「本人が出られると言ったから出勤してもらった」だけでは、組織としての感染管理にはなりません。

管理者が決めておきたい「休業・復職ルール」

全国一律の日数が決まっていないからこそ、施設側のルールが曖昧だと、その日の管理者によって判断が変わります。

最低限、次の項目は整理しておきたいところです。

  • 発熱・咳・倦怠感等が出た場合の連絡先
  • 勤務中に症状が出た場合の対応
  • インフルエンザと診断された場合に報告する内容
  • 発症日・解熱日をどのように記録するか
  • 復職時に確認する症状と経過
  • 医師から療養指示がある場合の扱い
  • 復職後も咳等が残る場合の感染対策
  • 治癒証明書・陰性証明書を求めないこと
  • 年休・病気休暇・欠勤・休業手当等の扱い
  • 同居家族が感染した場合の対応
  • 管理者不在時に誰が判断するか
目標は「何日休むか」だけを決めることではありません 職員が迷わず休めて、管理者も迷わず判断でき、必要なタイミングで安全に復職できる仕組みをつくることです。

まとめ|「何日休む?」より「何を確認して戻るか」

介護職が季節性インフルエンザになった場合、「法律で必ず5日間休まなければならない」という全国一律の法定出勤停止期間はありません。

学校で使われる「発症後5日・解熱後2日」は、学校保健安全法施行規則による出席停止基準です。

一方、インフルエンザでは発症後もしばらくウイルス排出が続き、解熱しただけでは感染リスクがなくなったとは言えません。

さらに介護現場では、高齢者など重症化リスクの高い人へ接します。

だからこそ、復職判断では次の要素を組み合わせます。

  • 本人の症状
  • 発症からの経過
  • 解熱後の経過
  • 医師の指示
  • 利用者への感染リスク
  • 施設の感染管理ルール

また、職場復帰時の治癒証明書や陰性証明書について、厚生労働省は提出不要としています。

必要なのは、「証明書を集めること」ではなく、職員が安全に休み、安全に戻れる仕組みです。

福祉教育ラボの視点|「休めること」も感染対策の一部

感染対策というと、手洗い、マスク、消毒、換気を思い浮かべることが多いかもしれません。

けれど、介護現場ではもう一つ、大切な感染対策があります。

体調が悪い職員が、安心して休めること。

人手が足りない現場ほど、「自分が休んだら迷惑をかける」「少しくらいなら働ける」という気持ちは生まれやすくなります。

それは、利用者や一緒に働く仲間を大切に思う責任感から出てくることもあります。

しかし、感染症への対応を、一人ひとりの責任感や我慢だけに任せてしまえば、職員自身の健康も、利用者の安全も守りにくくなります。

だからこそ、休むときに誰へ伝えるのか。

休んだ人の仕事をどう支えるのか。

給与や休暇をどう扱うのか。

いつ、何を確認して復職するのか。

そして、「今日は休ませてください」と言える職場になっているのか。

そこまで含めて、感染症に強い組織を考える必要があります。

一人の職員が安心して休める仕組みは、その職員だけを守るものではありません。

一緒に働く仲間と、その先にいる利用者の暮らしを守る仕組みにもつながります。

一次資料・関連資料

※本記事は2026年9月3日時点の法令・公表資料をもとに一般的な考え方を整理したものです。実際の休業・復職・賃金・年次有給休暇等の取扱いは、症状、医師の指示、雇用契約、就業規則、労使協定、施設の感染管理方針などによって異なります。