介護職員等処遇改善加算は給与にどう届く?|パート・非常勤への配分と扶養内を解説

介護職の給与・処遇改善

「事業所は処遇改善加算を取っているはず。でも、自分の給与のどこに入っているのか分からない」 「正職員には手当があるのに、パートにはない」 「扶養内で働いているので、時給が上がるとかえって勤務時間を減らさなければならない」。 介護職員等処遇改善加算が、実際の給与へどう届くのか。 パート・非常勤への配分や扶養内勤務まで、2026年の制度から整理します。

最終確認:2026年8月28日

制度改正中のテーマです。
2026年6月には令和8年度介護報酬改定による処遇改善の期中改定が行われ、 2026年4月・10月には社会保険の「年収の壁」に関する制度変更もあります。 本記事は2026年8月時点の公表資料を基準としています。

QUICK ANSWER

最初に結論|処遇改善加算は「職員全員へ同額を配る制度」ではありません

給与への反映

基本給、毎月の手当、賞与・一時金などで賃金改善します。 給与明細に「処遇改善」と書かれるとは限りません。

パート・非常勤

非常勤だから自動的に対象外ではありません。 ただし、常勤と同額を一律に配る制度でもありません。

法人の裁量

配分には柔軟性がありますが、 職務や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は認められていません。

2026年6月、介護職員等処遇改善加算はどう変わった?

2026年6月の「令和8年度介護報酬改定」では、 令和9年度の本改定を待たずに期中改定が行われ、 介護職員等処遇改善加算が拡充されました。

厚生労働省は、 介護職員だけでなく介護従事者について幅広く 月1万円相当の賃上げを実現するための措置としています。

さらに、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員については 月7,000円相当を上乗せし、定期昇給を含めると 最大月1万9,000円相当の賃上げが可能な水準とされています。

これは「すべての介護職員の給与が毎月一律1万円、 または1万9,000円上がる」という意味ではありません。 実際の給与への配分方法は、処遇改善加算のルールに沿って 法人・事業所が設計します。

厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」

介護職員等処遇改善加算は、給与のどこに入る?

まず、処遇改善加算は国から職員個人へ直接振り込まれる給付金ではありません。

介護サービスを提供
介護報酬が事業所・法人へ支払われる
処遇改善加算が上乗せされる
法人・事業所が賃金改善を実施
基本給・時給・手当・賞与などとして職員へ

加算額を職員数で均等に割る制度ではない

例えば、ある法人が年間120万円の処遇改善加算を受け取り、 職員が10人いたとしても、 必ず一人12万円ずつ配らなければならないわけではありません。

事業者には、加算額に相当する賃金改善を行うことが求められます。 一方、具体的に誰へどの程度配分するかについては、 事業所内で柔軟な配分が認められています。

ここが重要

「全員同額でなければならない」わけではありません。 しかし、「法人が自由に好きな人へ配ってよい」わけでもありません。 職務内容や勤務実態に見合わない 著しく偏った配分は認められていません。

給与明細に「処遇改善手当」と書かれるとは限らない

処遇改善加算による賃金改善には、 基本給、毎月支払われる手当、賞与・一時金などを用いることができます。 退職手当は対象外です。

また、毎月支払う手当の名称も「処遇改善手当」である必要はありません。 職能手当、資格手当、役職手当、地域手当などとして 賃金改善されている場合もあります。

「給与明細に処遇改善と書いていない=もらっていない」ではありません

基本給そのものが上がっている場合や、 別名称の手当・賞与等へ反映されている場合があります。 まずは法人の配分方法を確認する必要があります。

パート職員の「時給アップ」も基本給の引上げ

厚生労働省Q&Aでは、 時給制職員の時給を引き上げることも 「基本給の引上げ」として扱えることが明示されています。

つまり処遇改善は、 常勤職員の月給だけを対象とする制度ではありません。 パート・非常勤職員の時給改善も制度上想定されています。

2026年度は「毎月の賃金」を重視

処遇改善加算には「月額賃金改善要件」があり、 加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、 基本給または決まって毎月支払われる手当の改善へ充てる仕組みがあります。

2026年度に新たに増えた加算額についても、 新たな賃金改善を実施し、 ベースアップによる改善を基本とする考え方が示されています。

ただし、ベースアップだけで対応できない場合には、 その他の手当や一時金を組み合わせることも可能です。

加算が始まった月と、給与が増える月は同じとは限らない

例えば6月分の処遇改善加算について、 厚生労働省Q&Aでは、 6月中に見込み額で支給する方法、 7月に支給する方法、 介護報酬が事業所へ入る8月に支給する方法の いずれも可能としています。

したがって、 「6月から制度が変わったのに、6月の給与が増えていない」 という事実だけで、直ちに制度違反とは判断できません。

研修費やICT機器の購入は「賃金改善」になる?

なりません。

処遇改善加算には研修や職場環境改善に関する要件がありますが、 その取組に必要な費用を 処遇改善加算上の「賃金改善額」に含めることはできません。

「職場環境を良くするためのお金」と、 「職員の賃金を改善するためのお金」は分けて考える必要があります。

本当に職員へ使ったかは実績報告で確認される

処遇改善加算は、計画書を出して加算を取得すれば終わりではありません。 年度終了後には実績報告が必要です。

加算額と実際の賃金改善額を比較し、 原則として賃金改善額が加算額以上となっていることを確認します。

つまり、処遇改善加算を法人が受け取ったまま 利益として残してよい制度ではありません。

パート・非常勤にも処遇改善加算は配られる?

「非常勤だから処遇改善加算の対象外」 という一律のルールはありません。

2026年度の制度では、介護職員以外の職種も含めて 事業所内で柔軟な配分を行うことができます。 時給制職員の時給引上げも、賃金改善として明示されています。

一方、 「常勤職員と非常勤職員へ同じ金額を配らなければならない」 という制度でもありません。

配分差の理由になり得るもの

勤務時間、職務内容、責任、経験・技能、 資格、役割、勤務形態などです。

注意したい考え方

「正社員だから」「パートだから」という 雇用形態の名称だけで機械的に決めるのではなく、 待遇差の理由を説明できることが重要です。

「非常勤には処遇改善を出さない」は認められる?

ここは「必ず違反」とも、 「法人の自由」とも一概には言えません。

処遇改善加算だけを見ると、 個々の非常勤職員へ一定額を必ず配らなければならない制度ではなく、 柔軟な配分が認められています。

一方、非常勤であることだけを理由に待遇差を設ける場合には、 パートタイム・有期雇用労働法も関係します。

同法では、正社員とパート・有期雇用労働者との間で、 基本給、賞与、各種手当などについて 不合理な待遇差を設けることは禁止されています。

「非常勤だから0円」だけでは判断できません。
職務内容、責任、配置変更の範囲、能力・経験など、 待遇の性質・目的と関係する事情から、 なぜその差になっているのかを見る必要があります。

非常勤職員は、待遇差の理由を尋ねることができる

パートタイム・有期雇用労働者は、 正社員との待遇差の内容や理由について 事業主へ説明を求めることができます。

事業主には説明義務があり、 説明を求めたことを理由とする不利益な取扱いも禁止されています。

処遇改善加算についても、 賃金改善の方法等を職員へ周知することが求められています。

実際、全職員を同じように賃上げしているわけではない

厚生労働省の 「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」では、 給与等の引上げ対象について次の結果が示されています。

給与等の引上げ対象 割合
施設・事業所の職員全員 58.2%
調査対象サービスの介護従事者全員 14.1%
調査対象サービスの介護職員全員 10.7%
何らかの要件に該当した調査対象サービスの介護従事者 15.6%

※複数回答。厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果のポイント」。

この調査から言えるのは、 「誰を賃上げ対象とするかは事業所によって違いがある」というところまでです。

「非常勤職員を対象外としている法人が何%ある」 とまでは、この統計から判断できません。

処遇改善でパートの時給が上がると、扶養内勤務はどうなる?

非常勤職員への処遇改善を考えるとき、 現場で実際に問題になりやすいのが「扶養内勤務」です。

時給が上がること自体は賃金改善です。 しかし、扶養内で働き続けたい人にとっては、 同じ勤務時間を続けると年間収入が一定基準を超える場合があります。

具体例

時給1,250円から1,400円へ上がった場合

改定前 1,250円 × 週19時間 × 52週 約123万5,000円
改定後 1,400円 × 週19時間 × 52週 約138万3,000円

社会保険上の被扶養者として130万円未満を意識する場合、 時給1,400円では単純計算で週約17.8時間以下まで 勤務時間を減らす必要が出るケースがあります。

年間では約60時間の勤務減になります。

※賞与・諸手当・他の収入等を含めない、制度理解のための単純例です。 実際の社会保険加入・被扶養者認定は個別条件によって異なります。

つまり、

賃金を上げる → 扶養内を希望する職員が勤務時間を減らす → 事業所で確保できる総労働時間が減る → 他職員の勤務増や新たな採用が必要になる

という構造が生じる可能性があります。

厚生労働省も、 一定の収入基準を意識して勤務時間を調整することを 「年収の壁」による就業調整として政策課題に位置づけています。

「扶養内」には税と社会保険がある

現場ではまとめて「扶養内」と呼ばれますが、 税制上の基準と、 健康保険・厚生年金など社会保険上の基準は別です。

2025年・2026年と制度改正が続いているため、 以前の「103万円だけ覚えておけばよい」という状況ではありません。

目安・基準 何の制度? 2026年8月時点のポイント
178万円 本人の所得税 給与収入のみで他に所得がない場合、 2026年分から所得税が生じない給与収入の目安。
約106万円 短時間労働者の社会保険 月額8.8万円以上という賃金要件に由来する目安。 この賃金要件は2026年10月に撤廃予定。
週20時間 短時間労働者の社会保険 2026年10月以降、より重要になる加入要件の一つ。 企業規模など他の要件も確認が必要。
130万円 社会保険の被扶養者 原則として基準は存続。 ただし勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合は、 130万円未満でも自ら加入対象となる場合がある。

※「年収の壁」は制度ごとに意味が異なります。 税と社会保険を同じ基準として扱わないことが重要です。

「106万円の壁」は2026年10月に変わる

現在、一定の企業で働く短時間労働者については、 週20時間以上などの条件に加え、 所定内賃金が月額8万8,000円以上であることが 社会保険加入要件の一つになっています。

この月額8万8,000円という賃金要件は 2026年10月に撤廃予定です。

そのため今後は、 「106万円を超えないようにする」という考え方よりも、 週20時間以上働くのかどうかがさらに重要になります。

企業規模要件も段階的に拡大

短時間労働者の社会保険適用に関する企業規模要件も、 今後段階的に縮小されます。

時期 企業規模の目安
現在 51人以上
2027年10月~ 36人以上
2029年10月~ 21人以上
2032年10月~ 11人以上
2035年10月~ 10人以下も対象へ

130万円の壁は残る

一方、健康保険の被扶養者については、 原則として年間収入130万円未満という基準が残ります。

2026年4月からは、 給与収入のみの場合、 労働条件通知書や雇用契約書などに記載された賃金から 見込まれる年間収入が130万円未満かどうかを用いて認定する 新しい取扱いが始まっています。

この賃金には、基本給だけでなく、 諸手当や賞与も含まれます。

「時給だけ130万円未満なら大丈夫」とは限りません

毎月の手当や賞与なども含めた年間収入、 さらに勤務先で社会保険加入要件を満たすかどうかまで 一緒に確認する必要があります。

「扶養を超えないよう、一時金で払えばいい」は単純ではない

法人側からすると、 「時給を上げると130万円を超えるなら、 処遇改善分を賞与や一時金として払えばよいのでは」 と考えるかもしれません。

しかし、被扶養者認定では 諸手当・賞与も年間収入を見込む際の賃金に含まれます。

処遇改善加算側でも月額賃金改善要件があり、 2026年度の新たな増加分については ベースアップを基本とする考え方があります。

そのため、 「扶養を守るため全部一時金にする」 という単純な解決にはなりません。

「処遇改善をもらえていない?」と思ったときに確認したいこと

処遇改善加算について疑問を感じたとき、 最初から「法人が加算を抜いているのでは」と考える必要はありません。

まず制度と給与の関係を順番に確認すると、 自分の処遇改善がどこに反映されているのか見えやすくなります。

職員側が確認したいこと

自分の事業所がどの処遇改善加算を取得しているか

基本給・時給・手当・賞与のどこが変わっているか

「処遇改善手当」以外の名称で反映されていないか

法人がどのような配分基準を設けているか

常勤と非常勤で差がある場合、その理由は何か

扶養内勤務を希望する場合、勤務時間・手当・賞与を含む年間収入がどうなるか

法人・管理者側が確認したいこと

配分基準が職務内容や勤務実態と整合しているか

賃金規程・就業規則と実際の配分が矛盾していないか

常勤・非常勤の待遇差を説明できるか

処遇改善の方法を職員へ周知できているか

扶養内勤務を希望する職員と、時給だけでなく勤務時間も含めて話し合えているか

社会保険適用拡大による今後の影響を確認しているか

処遇改善加算は、 単に年度末までにお金を配ればよい制度ではありません。

職員にとって、 「なぜこの給与になっているのか」が理解できる運用になっているかも 大切なポイントです。

福祉教育ラボの視点|「賃上げ」と「働き続けられる」は同じではない

処遇改善加算は、見る立場によって意味が変わります。

国から見れば、 人材不足を防ぎ、他産業との賃金差を縮めるための政策です。

職員から見れば、 自分や家族の生活を支える給与の問題です。

法人から見れば、 人件費、社会保険料、人員配置、採用、経営を 同時に考える問題です。

そして扶養内で働く非常勤職員にとっては、 「時給が上がること」だけが 必ずしも希望する働き方につながるとは限りません。

子育てや家族介護との両立。
家庭で担っている役割。
今の手取り。
将来の年金。
働ける時間。

同じ「パート職員」であっても、 その人の生活は一人ひとり違います。

だからこそ、 「全員同額なら公平」 とも、 「法人に裁量があるから何でもよい」 とも言い切れません。

制度として必要なのは、 加算額以上の賃金改善が適切に行われることです。

しかし、働く人の側から見た処遇改善には、 もう一つ大切なことがあります。

なぜ自分の給与がこの金額なのか。
どのような役割や経験が評価されているのか。
働き続けることで、これからどのように処遇が変わるのか。

それが見えることです。

処遇改善の目的は、 単に年度末までに加算を配り切ることではありません。

介護という仕事を、その人が自分の暮らしを守りながら、 安心して続けられる仕事にしていくこと。

賃金を上げる制度だからこそ、 その先にある「働き続けられる環境」まで 考えていく必要があるのではないでしょうか。

よくある質問|処遇改善加算・パート・給与

パートだから処遇改善加算をもらえないのは違法ですか?

パート職員へ必ず一定額を配らなければならない制度ではないため、 「支給額がゼロ=直ちに違法」とは判断できません。 ただし、職務内容や責任などから合理的に説明できない 不合理な待遇差がある場合には、 パートタイム・有期雇用労働法の問題となる可能性があります。

給与明細に「処遇改善手当」がありません

処遇改善加算は基本給、時給、資格手当、職能手当、 賞与などへ反映することができます。 「処遇改善」という名称を使う必要はありません。 法人の賃金改善方法を確認してください。

処遇改善加算を取っているのに「もらえない」と感じるのはなぜ?

基本給へ組み込まれている、別名称の手当になっている、 賞与等へ反映されている、支給時期にズレがある、 配分額が職員ごとに異なる、といった可能性があります。 「処遇改善手当」という項目の有無だけでは判断できません。

処遇改善加算が6月から増えたのに、6月の給与が増えていません

加算の算定月と実際の給与への反映月は必ずしも同じではありません。 厚労省Q&Aでは、6月分を6月・7月・8月に支給する方法が それぞれ想定されています。 法人の支給方法を確認してください。

扶養内なので処遇改善を受け取りたくない場合はどうすればいい?

処遇改善加算の配分と、 社会保険上の被扶養者認定は別の制度です。 時給、所定労働時間、手当、賞与などを含めて 法人と働き方を確認する必要があります。 個別の被扶養者認定については、 加入する健康保険や日本年金機構等への確認が必要です。

扶養を守るため、処遇改善分を賞与だけで払うことはできますか?

単純にはできません。 処遇改善加算には毎月の賃金改善に関する要件があり、 2026年度の増加分はベースアップを基本としています。 また、社会保険の被扶養者認定では 賞与・諸手当も年間収入に含まれます。

参考にした主な一次資料

厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」

2026年6月施行の期中改定。処遇改善加算拡充等の資料を掲載。

厚生労働省の公式ページを確認する

厚生労働省 「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」

2026年3月13日/老発0313第6号

通知PDFを確認する

厚生労働省 「令和8年度介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」

2026年3月13日

Q&A PDFを確認する

厚生労働省 「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果のポイント」

給与引上げ対象、賃金改善方法等の実態を掲載。

調査結果PDFを確認する

厚生労働省「短時間労働者に対する社会保険の適用拡大」

2026年10月の賃金要件撤廃、今後の企業規模要件等を確認。

社会保険適用拡大の公式ページを確認する

日本年金機構 「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」

2026年4月1日以降の被扶養者認定。

日本年金機構の公式ページを確認する

国税庁 「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」

2026年分以後の所得税に関する改正。

国税庁の公式ページを確認する

厚生労働省 「パートタイム・有期雇用労働法とは」

不合理な待遇差の禁止、待遇差に関する説明義務等。

厚生労働省の特設ページを確認する

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