ソーシャルワーク・アセスメントとは|本人を「評価する」から、ともに「理解する」へ
SOCIAL WORK THEORY & PRACTICE
福祉や介護の現場では、「まずアセスメントが大切」とよく言われます。 生活歴、家族構成、ADL、既往歴、認知機能、経済状況、社会資源、本人の希望――。 多くの情報を集め、支援計画につなげていきます。
しかし、必要な項目をすべて埋めれば、その人を「アセスメントできた」と言えるのでしょうか。 本稿では、ソーシャルワークの理論と研究をもとに、アセスメントを「評価」から「理解」の過程として考え直します。
情報を集めることと、アセスメントすることは同じではない
たとえば、ある人がデイサービスを3回断ったとします。
「デイサービスを3回利用しなかった」
「支援拒否あり」
この二つは、同じではありません。
前者は、起きた出来事についての記述です。 後者には、専門職による意味づけが加わっています。
大谷京子(2016)は、精神保健福祉士を対象とした質問紙調査から、 ソーシャルワーク・アセスメントの実践スキルとして「情報収集」「仮説生成」「仮説検証」の3因子を抽出しました。 思考過程についても、「面接中の思考」「情報分析」「仮説生成」が抽出されています。 J-STAGEで研究を確認する
ここから分かるのは、情報を集めるだけではアセスメントが終わらないということです。
「支援拒否」という言葉も、結論ではなく、 「なぜ、この人はこの支援を断っているのだろう」 という仮説形成の入口にすることができます。
次の問い
では、専門職は集めた情報を、何を基準に意味づけるのでしょうか。 ソーシャルワークには、本人の内部だけではなく「人と環境」を見るという重要な視点があります。
本人の「問題」を探すことが、アセスメントなのか
ソーシャルワークの重要な特徴の一つに、「人と環境」をともに見る視点があります。
GermainとGittermanのLife Modelは、生態学的な視点から、 人だけ、環境だけを切り離すのではなく、人と環境との相互作用へ専門的関心を向けてきました。
日本でも窄山太(2012)は、ソーシャルワークが「人と環境を全体として統一的にとらえる」ことを特徴としながら、 人、環境だけでなく「関係」「状況」まで含めてソーシャルワークの焦点を検討しています。 J-STAGEで確認する
例:「薬を自分で飲めない人」
本人の認知機能だけを見れば、「服薬管理能力が低下している」という評価になるかもしれません。
しかし、薬の数、説明の分かりやすさ、生活リズム、薬を置く場所、家族や支援者との関係、 医療機関との連携などを見れば、「本人の能力」だけでは説明できないことが見えてくる可能性があります。
問題を本人の中だけに閉じ込めず、 「本人と環境との間で何が起きているのか」を見る。
ここに、ソーシャルワーク・アセスメントの特徴があります。
問題だけを見れば、その人を理解したことになるのか
アセスメントには、どうしても「困っていること」が集まりやすくなります。
できないこと。危険なこと。病気。支援が必要なこと。
もちろん、これらを把握することは必要です。 しかし、問題だけを集めたアセスメントが、その人の全体像を表しているとは限りません。
Cowger(1994)は、従来の臨床アセスメントが欠損、疾病、機能不全へ傾きやすいことを批判し、 クライエントのストレングスを中心に据えるアセスメントを提起しました。 PubMedで確認する
Graybeal(2001)も、医学モデルや欠損中心の言語が求められる実践環境のなかでも、 クライエント中心・ストレングス中心のアセスメントへ転換する必要を論じています。
日本の青山・岡田(2018)の研究でも、 精神障害者の就業・生活支援におけるアセスメント実践として、 「自己点検を踏まえた情報分析」「職場環境の情報把握」「生活面の丁寧な情報把握」 「不調時の状態・対処法に関する情報把握」「ストレングスへの着目」などが抽出されています。 J-STAGEで確認する
ストレングスを見るとは、「問題を見ない」という意味ではありません。
問題だけでは、その人の生活を説明できないということです。
専門職は「本人そのもの」を見ているのか
ここで、もう一段踏み込んでみます。
アセスメントによって得られた情報は、その人をそのまま写し取ったものなのでしょうか。
FranklinとJordan(1995)は、構成主義的認識論を背景とした質的アセスメントを整理し、 アセスメントには情報を集めるだけでなく、その情報をどのように理解し、意味づけるかという過程が含まれることを論じています。
ここでいう構成主義は、「客観的事実など存在しない」という意味ではありません。 同じ出来事であっても、誰が、どの立場から、どの概念を使って意味づけるかによって、作られる理解が変わり得るという点に注目します。
「今日はお風呂に入りたくない」
「入浴拒否あり」
「拒否」という言葉には、すでに専門職側の解釈が入っています。
現場では短い言葉で情報共有する必要があります。 問題は、専門職が付けたカテゴリーを、その人そのものと混同してしまうことです。
アセスメントは、本人を「そのまま見る」だけではありません。 専門職自身の理論、経験、言葉を通して本人を理解する行為でもあります。
だからこそ、本人を点検するだけでなく、 専門職自身の見方を点検する必要があります。
ここから本人の語りへ
では、複数の情報があるとき、本人自身の語りはどこに置かれるのでしょうか。 家族、専門職、検査、制度上の情報と、本人の経験は同じ種類の情報なのでしょうか。
本人の語りは、アセスメントのなかでどこに置かれるのか
アセスメントでは、本人だけを情報源にするわけではありません。
本人の語り、家族の話、介護職の観察、医療情報、各種検査、生活状況、制度上必要な情報。 複数の情報を扱います。
しかし、本人自身が何を経験し、何を望み、何を苦痛と感じているかについては、 本人の語りには固有の意味があります。
英国NICEの2022年ガイドラインは、複雑なニーズを持つ成人へのソーシャルワークについて、 本人の生きられた経験と、自分自身のニーズについて本人が持つ第一人称の知を尊重すること、 さらに本人とソーシャルワーカーとの立場の不均衡を理解することを推奨しています。 NICE NG216を確認する
福祉教育ラボの前稿「ソーシャルワークの専門性とは」では、 本人参加を考えるために次の三段階を整理しました。
話せる
知として認められる
支援へ影響する
理解を更新する
たとえば「本人希望:自宅で暮らしたい」と書いただけでは、本人参加が完了したとは限りません。
なぜ自宅なのか。 どんなリスクがあるのか。 何を調整すれば可能性が広がるのか。 本人はそのリスクをどう考えているのか。
そこまで検討されて初めて、本人の語りがアセスメントへ実質的に入ってきます。
本人がうまく話せないとき、何をアセスメントしているのか
本人主体のアセスメントを考えるとき、「本人に聞けばよい」でも不十分です。
長い質問では理解しにくい。 知らない場所では緊張する。 家族が横にいると本音を言いにくい。 疲れると話せない。
このとき「本人には意思がない」「理解できていない」と判断する前に、 その人が考え、話せる条件が整っているかを検討する必要があります。
NICEのガイドラインでも、アセスメントそのものが本人や家族にストレスを生じさせ得ることを前提に、 質問方法を柔軟にすること、本人が希望する時間・場所・方法を確認すること、 必要に応じて家族やアドボケイト等の同席を検討することなどが示されています。
NICEは英国の制度・法体系に基づくガイドラインです。 日本の法的義務として紹介するのではなく、本人が参加しやすいアセスメント条件を考える海外の実践指針として参照します。
問いは、 「この人は答えられるか」 だけではありません。
「この人が答えられる条件を、こちらは整えているか」 もアセスメントの問題です。
「支援拒否」は、アセスメント結果なのか
本人がサービスを断った。
だから「支援拒否」と評価する。
それでアセスメントを終わらせてよいのでしょうか。
「拒否」と書く前に考えたいこと
- 本人は何を断ったのか。
- 誰から勧められたのか。
- どのように説明されたのか。
- いつ・どこなら受け入れられるのか。
- 過去にどのような経験があったのか。
- 本人は何を守ろうとしているのか。
こうした問いを置けば、「拒否」は結論ではなく、アセスメントの入口になります。
コーピング研究では、特定の対処方法が常に適応的、あるいは常に不適応的とは限らず、 状況に応じて方法を調整する柔軟性と心理的適応との関連が検討されています。
ただし、「支援拒否はコーピングである」と一般化することはできません。 ここでコーピング研究を使うのは、行動の意味が状況によって異なり得ることを考える補助線としてです。
必要なのは、すぐに答えを付けることではありません。
「この行動には、この人にとってどんな意味があるのだろう」
と問い続けることです。
アセスメントは、一度完成したら終わりなのか
アセスメントシートを完成させると、アセスメントも終わったように感じることがあります。
しかし、大谷(2016)の研究が示した「仮説生成」「仮説検証」という構造を考えれば、 アセスメントは固定された完成品とは捉えにくくなります。
Life Modelでも、アセスメントは初期段階だけの作業ではなく、 新しい情報に応じて支援計画を修正していく継続的な過程として位置づけられています。
見立てが変わるとき
当初:「デイサービスを拒否する人」
↓
午前利用から午後利用へ変更すると参加できた。
↓
本人:「朝は体が動かなくて、人と話したくない」
↓
新しい仮説:「支援そのものではなく、利用時間と生活リズムが合っていなかったのではないか」
見立てを修正することは、専門性の失敗ではありません。
新しい情報によって自分の理解を更新できることこそ、専門性の一部です。
アセスメントは、制度の影響から自由なのか
現場のアセスメントには、制度上必要な項目があります。
要介護認定には認定のための情報が必要です。 障害福祉サービスには支給決定のための情報があります。
給付や支援を動かすためには、一定のカテゴリーや基準が必要です。
それ自体を否定することはできません。
しかし、 「制度が必要とする情報」と「その人の生活を理解するために必要な情報」は、完全には同じではありません。
独居・認知症・要介護2
40年間この地域で暮らし、近所の人が毎朝声をかけている
どちらも重要です。
専門職には、本人を制度の言葉へ翻訳する役割があります。
しかし同時に、制度を本人が理解できる言葉へ翻訳すること、 そして制度の枠へ入りきらない本人のニーズを組織や社会へ返していくことも、 ソーシャルワークの役割ではないでしょうか。
「本人とともに理解する」は、理念だけなのか
「アセスメントは本人とともに行う」と言うと、きれいな理念のようにも聞こえます。
しかし、共同的・協同的なアセスメントを具体化する実践があります。
NICEのガイドラインでは、アセスメントを確定する前に本人へ草案を共有し、 誤りや欠落、見解の違いを指摘できる機会を設けること、 本人と専門職の見方が異なる場合には、その相違自体を記録することが推奨されています。
これは、アセスメントを 「専門職が本人を評価した文書」 から、 「本人と専門職の理解が一致する部分と、一致しない部分を含む文書」 へ変える可能性があります。
日本でも、障害者職業総合センターが開発した「就労支援のためのアセスメントシート」では、 「本人の希望・ニーズ」「個人と環境との相互作用」「ストレングス」「協同評価」などが重視されています。 研究概要を確認する
2025年の調査研究でも、対象者と支援者の評価が異なる場合に、 双方の具体的な体験や観察をもとに認識の違いを確認し、相談しながら評価を決める「協同評価」が整理されています。 障害者職業総合センターの報告を確認する
これは就労支援という特定領域の実践です。 「協同評価がすべてのソーシャルワーク・アセスメントで優れている」と証明するものではありません。 ただし、本人と支援者が一緒に理解を確かめる具体的な実践例として重要です。
「本人と専門職の評価が違ったら、どちらが正しいか」 だけではなく、
「なぜ、そう見えているのかを一緒に確かめる」
というアセスメントです。
では、よいソーシャルワーク・アセスメントとは何か
ここまで見てきた研究から、少なくともいくつかの特徴が見えてきます。
研究から導けるアセスメントの視点
- 情報収集と専門職による解釈を区別する。
- 本人だけでなく、環境・関係・状況を見る。
- 問題やリスクだけでなく、ストレングスや資源を見る。
- 本人の語りを「本人希望欄」だけへ閉じ込めない。
- 本人が考え、語りやすい条件そのものを検討する。
- 専門職が付けたカテゴリーを、その人自身と混同しない。
- 見立てを仮説として持ち、新しい情報によって更新する。
- 可能なところでは、本人と理解を共有し、違いも含めて確認する。
これらを踏まえて、本稿ではソーシャルワーク・アセスメントを次のように整理します。
ソーシャルワーク・アセスメントとは、 本人・環境・関係について複数の情報を持ち寄り、 専門職自身の解釈も点検しながら、 現時点で共有可能な理解を仮説としてつくり、 支援を通して検証・更新していく過程である。
これは、学界で統一された唯一の正式定義という意味ではありません。
大谷の仮説生成・仮説検証、Life Modelの人と環境および継続的アセスメント、 ストレングス視点、構成主義的アセスメント、近年の共同・協同評価などを踏まえて、 本稿として整理したものです。
福祉教育ラボの視点|アセスメントは、その人を「決める」ためではない
アセスメントには専門性が必要です。
専門知識を使う。リスクを考える。環境を見る。複数の情報を比較する。仮説を立てる。 それらは専門職だからこそ担える重要な役割です。
しかし、その専門性によって、 「この人は支援拒否の人」 「依存的な人」 「意欲の低い人」 と本人を確定してしまえば、アセスメントは問いを閉じる道具にもなります。
むしろ、 「なぜ、そう見えているのだろう」 「本人には、どう見えているのだろう」 「環境との間で何が起きているのだろう」 「私たちの理解は、本当にこれでよいのだろうか」 と問いを持ち続ける。
そして新しいことが分かれば、理解を変える。
「この人は、こういう人だ」ではなく、 「今のところ、私たちはこう理解している」 と考える。
そのわずかな余白が、本人をカテゴリーへ閉じ込めず、 支援そのものを変えていく余地になるのだと思います。
アセスメントは、その人についての答えを書く作業ではありません。
その人とともに、問いを持ち続けるための専門的な営みなのかもしれません。
主要な研究・資料
本稿では、理論研究、実証研究、実践ガイドラインを区別して参照しています。
- 日本・実証研究 大谷京子(2016) 「ソーシャルワークアセスメントスキル評価指標の開発――精神保健福祉士を調査協力者とする質問紙調査より――」 『ソーシャルワーク学会誌』32, 1–12。 J-STAGE
- 理論 Gitterman, A., Knight, C., & Germain, C. B. (2021). The Life Model of Social Work Practice: Advances in Theory and Practice. 4th ed. Columbia University Press.
- 日本・理論研究 窄山太(2012) 「人,環境,関係および状況を通して考えるソーシャルワークの焦点」 『社会福祉学』53(1), 79–90。 J-STAGE
- ストレングス Cowger, C. D. (1994). Assessing Client Strengths: Clinical Assessment for Client Empowerment. Social Work, 39(3), 262–268. PubMed
- ストレングス Graybeal, C. (2001). Strengths-Based Social Work Assessment: Transforming the Dominant Paradigm. Families in Society.
- 構成主義 Franklin, C., & Jordan, C. (1995). Qualitative Assessment: A Methodological Review. Families in Society, 76(5), 281–295. SAGE Journals
- 日本・実証研究 青山貴彦・岡田進一(2018) 「障害者就業・生活支援センターにおける精神障がい者のアセスメント実践活動の構造」 『社会福祉学』59(2), 37–51。 J-STAGE
- 実践ガイドライン National Institute for Health and Care Excellence (NICE) (2022). Social work with adults experiencing complex needs, NG216. NICE
- 日本・実践研究 障害者職業総合センター 「就労支援のためのアセスメントシート」に関する研究。 J-STAGE
- 日本・実践研究 浅賀英彦ほか(2025) 「『就労支援のためのアセスメントシート』の効果的な活用方法に関する研究」。 障害者職業総合センター


