介護保険の『預貯金確認』はどう変わる?|補足給付の確認事務、中間とりまとめへ

介護ニュース 【資料公開待ち】 情報確認:2026年9月29日

介護保険では、所得だけでなく 「預貯金」 を確認する制度があります。

主に関係するのが、 介護保険施設などを利用する低所得者の食費・居住費を軽減する 「補足給付」 です。

2026年9月29日、厚生労働省は第4回 「介護保険制度における預貯金等の把握等に係る検討の場」 を開催しました。

今回の議題は、 「中間とりまとめ(案)に向けた意見交換」 です。

この検討で問われているのは、 「補足給付の預貯金要件をなくすか」 という単純な話ではありません。

現在の資産要件を適切に確認しながら、 市町村の大きな事務負担をどう軽減するのか。

そこが今回の中心的な課題です。

2026年9月29日時点では、第4回の配付資料・中間とりまとめ案は厚生労働省サイトで未掲載です。 本記事では第1回〜第3回までの公表資料と、これまでの介護保険部会資料をもとに現在地を整理しています。 第4回資料が公開された場合は内容を更新します。

この記事のポイント
  • 補足給付では、所得だけでなく預貯金等の資産も確認する
  • 市町村では内容審査や金融機関照会などの負担が大きい
  • 今回の中心テーマは「預貯金要件の廃止」ではなく、確認事務の負担軽減
  • 確認頻度や金融機関照会の効率化などが検討の軸になっている
  • 第4回資料公開前のため、具体的な変更内容はまだ確定していない

まず結論|「預貯金要件の廃止」が決まったわけではない

まず、誤解しないようにしておきたいことがあります。

今回議論されているのは、 「介護保険で預貯金を確認する仕組みを全部なくす」 ということではありません。

厚生労働省が2026年5月に設置した検討の場では、 補足給付における預貯金確認の現状と課題を整理したうえで、 「預貯金等の確認事務の負担軽減の具体的な方策」 を検討することとされています。

補足給付

低所得者の食費・居住費の負担を軽減する制度です。

資産要件

所得だけでなく、一定の預貯金等も確認します。

行政事務

申請・審査・照会などを、市町村が行っています。

今回の論点は、 この3つをどう両立させるか です。

そもそも、なぜ介護保険で預貯金を確認するのか

介護保険施設を利用すると、 介護サービス費とは別に、 食費や居住費を負担します。

一定の低所得者については、 この食費・居住費を軽減する 「補足給付」があります。

ただし、補足給付では所得だけを見るわけではありません。

預貯金等の資産も確認します。

これは、 所得が低くても多額の資産を保有している人まで、 介護保険財源を使った補足給付の対象とすることが適切か、 という公平性の観点から設けられている仕組みです。

現在は、

  • 本人からの申請
  • 通帳の写しなどによる自己申告
  • 所得・課税状況の確認
  • 必要に応じた金融機関への照会

などを組み合わせて、 市町村が対象要件を確認します。

「預貯金はいくらありますか」だけで終わらない

預貯金確認というと、 申請書に金額を書くだけ、 という印象を持つかもしれません。

しかし、市町村側ではその後に確認事務があります。

申請受付
→
システム入力
→
内容審査
→
必要時の照会
→
認定

厚生労働省の第1回検討会では、 自治体側の業務を 「申請受付」「システム入力」「内容審査」 などに分けて整理した場合、 「内容審査」にもっとも時間がかかる という意見が示されています。

内容審査には、

  • 所得
  • 課税状況
  • 預貯金
  • 必要に応じた金融機関への照会

などが含まれます。

自治体からは、 金融機関照会の負担、 オンライン照会導入の課題、 申請件数の多さなどが実務上の問題として挙げられています。

金融機関への照会は「全員に必ず行う」わけではない

ここも少し注意が必要です。

現在の仕組みでは、 市町村がすべての申請者について 必ず金融機関へ照会するという制度ではありません。

本人から預貯金等の申告を受け、

  • 提出書類
  • 行政が保有する所得・課税情報
  • 必要に応じた金融機関への照会

などを組み合わせて、 対象要件を確認します。

つまり、 自己申告だけでも、全員一律の金融機関照会だけでもない ということです。

なぜ、いま見直しが議論されているのか

背景の一つには、 介護保険制度全体で 「給付と負担」の見直しが議論されていることがあります。

過去の介護保険部会では、 2割負担の対象を拡大する際に、 一定の預貯金以下の人について 1割負担へ戻す「配慮措置」を設ける案も議論されました。

仮にこうした仕組みを導入すれば、 市町村には新たな預貯金確認事務が発生します。

厚生労働省は2025年12月の介護保険部会資料で、

  • 預貯金確認を、例えば2年に1度とすること
  • その間に資産状況が変わった場合は本人が申告すること
  • 必要に応じて市町村が金融機関へ照会できるよう、同意を得ること

などを、 事務負担軽減の例として提示しています。

同じ資料では、 既存の補足給付についても 預貯金確認事務の負担軽減を検討する必要がある、 という方向が示されています。

「2年に1回」に変更すると決まったわけではありません。 あくまでこれまでの介護保険部会で示された検討例です。

これまでの検討はどこまで進んだ?

第1回|2026年5月27日

補足給付の現状と、 自治体アンケート調査項目案を検討しました。

第2回|2026年6月30日

実際に預貯金確認を行っている 市町村からヒアリングを実施しました。

第3回|2026年7月29日

自治体アンケート調査結果の取りまとめに向けた 意見交換が行われました。

第4回|2026年9月29日

「中間とりまとめ(案)に向けた意見交換」 が議題となりました。

当初のスケジュール案では、 第4回・第5回が「夏頃〜秋頃」に予定され、 その後の項目として 「中間とりまとめ」 が位置づけられていました。

今回の会議は、 これまで集めた自治体の実務上の課題を、 具体的な見直しの方向へ整理していく段階に入ったものと見ることができます。

現時点で見えている見直しの軸

第4回の中間とりまとめ案そのものは、 2026年9月29日時点でまだ公表されていません。

ただし、これまでの公表資料から、 少なくとも次のような軸が検討対象になっていることは確認できます。

1 確認頻度

毎年確認する必要があるのか。 一定期間ごとの確認にできないか。

2 金融機関照会

確認の確実性を保ちながら、 照会事務を効率化できないか。

3 申請・審査

一連の業務のどこに負担が集中しているかを確認し、 事務全体を見直せないか。

「効率化」と「確認しない」は同じではない

行政事務の負担が大きいからといって、 預貯金を確認しなくてもよい、 という話ではありません。

補足給付は、 低所得者の施設生活を支える重要な制度です。

一方で、 限られた介護保険財源を使う以上、

  • 対象要件を適切に確認すること
  • 不正受給を防ぐこと
  • 利用者間の公平性を保つこと

も必要です。

今回問われているのは、 「確認するか、しないか」ではなく、 必要な確認を、どこまで合理的で持続可能な方法にできるか というバランスです。

ケアマネジャーや施設相談員には何が関係する?

この見直しは、 市町村内部だけの話ではありません。

補足給付は、

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • ショートステイ

などの利用者負担に直接関係します。

そのため、 ケアマネジャーや施設相談員が本人・家族から、

  • 「なぜ通帳を出す必要があるの?」
  • 「毎年申請しないといけないの?」
  • 「預金が増えたらどうなる?」

と相談される場面があります。

制度が見直されれば、

  • 申請頻度
  • 提出書類
  • 確認方法
  • 認定時期

などが変わる可能性があります。

現時点では、 「来年から2年に1回になる」 「通帳提出が不要になる」 などと断定できる段階ではありません。

基礎記事とは、役割を分けて読む

福祉教育ラボでは、 今回の記事とは別に、 施設利用時の費用構造を整理した基礎記事があります。

「介護施設の費用は何にかかる?|食費・居住費・補足給付まで整理」 では、

  • 介護サービス費
  • 食費
  • 居住費
  • 日常生活費
  • 補足給付

という施設費全体の構造を整理しています。

一方、今回の記事の中心は、 補足給付の対象者を確認するために、 市町村が行う「預貯金確認」という行政実務が 今後どう変わる可能性があるのか です。

「補足給付そのものを知りたい」場合は基礎記事、 「預貯金確認の見直しを知りたい」場合は今回の記事、 という役割分担です。

まだ決まっていないこと

第4回資料が未掲載のため、具体策はまだ確定できません

現時点では、少なくとも次の内容は確定していません。

  • 預貯金確認を何年ごとにするのか
  • 提出書類をどうするのか
  • 金融機関照会の方法をどう変えるのか
  • オンライン照会をどこまで広げるのか
  • 申請時期を変えるのか
  • 新しい運用をいつから始めるのか

また、 補足給付の預貯金要件そのものを廃止することや、 現在の資産基準額を変更することも、 今回の開催案内だけからは確認できません。

福祉教育ラボの視点|「制度を厳しくするか、緩くするか」だけではない

必要な給付と、制度の持続可能性をどう両立するか

預貯金確認という言葉だけを見ると、 「資産のある人を厳しくチェックする制度」 のように感じるかもしれません。

でも、その一方には、 食費や居住費を負担することが難しい人の施設生活を支える 補足給付があります。

そしてもう一方には、 限られた人員で多くの申請を処理する 市町村職員の仕事があります。

本人に必要な給付を届けること。

介護保険財源の公平性を守ること。

行政の仕事を持続可能にすること。

この3つは、 どれか一つだけを優先すればよいものではありません。

必要な人が制度につながれること。

でも、必要以上に複雑な手続きによって 本人や行政が疲弊しないこと。

そして、 制度への信頼を守るために必要な確認は行うこと。

今回の預貯金確認の見直しは、 「誰に給付するか」という話だけでなく、 支援制度を社会の中でどう持続可能に運用していくのか という問題でもあります。

福祉教育ラボでは、 第4回の中間とりまとめ案が公開され次第、

何が維持されるのか。
何を簡素化するのか。
利用者・家族・自治体実務に何が変わるのか。

を分けて更新します。

情報確認日:2026年9月29日
本記事は、第4回検討会の配付資料・中間とりまとめ案が厚生労働省サイトに掲載される前の情報をもとに整理しています。 資料公開後、具体的な見直し内容が確認できた場合は更新します。