2027年度介護報酬改定|ケアマネジャーの業務と居宅介護支援はどう変わる?最新の検討論点を整理
最初に結論|第271回で何が示され、何がまだ決まっていないのか
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向け、2026年10月19日の第271回社会保障審議会介護給付費分科会で、居宅介護支援・介護予防支援が議題となりました。厚生労働省が公表した資料6「居宅介護支援・介護予防支援(改定の方向性)」(全53ページ)には、これまでの主な意見と四つの論点が整理され、論点①〜③について対応案が示されています。
主な対応案は、特定事業所加算(Ⅰ)の重度者割合要件の廃止と特定事業所加算(A)の廃止、居宅介護支援事業所の管理者に主任ケアマネジャーであることを求めない見直し、介護予防支援への入院時情報連携加算などの創設、オンラインモニタリングの手続きの柔軟化、資格更新制の廃止に伴う研修受講の担保策などです。いずれも「〜してはどうか」という形で示された審議中の案であり、単位数や適用時期を含めて決定事項ではありません。
一方、資料6の対応案には、居宅介護支援費の基本報酬の単位数や逓減制の件数要件を見直す案、複数名訪問の加算を新設する案は含まれていません。これらは委員や関係団体の意見として整理されているにとどまります。居宅介護支援の医療介護連携の推進策は今後の分科会で、中山間地域等の提供体制は人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築を扱う分科会で、それぞれ説明・議論を行う予定とされています。
本記事では、第271回資料6の対応案、2026年6月に成立した改正介護保険法の内容、現行の報酬・運営基準を区別して整理します。資料のページ番号は、各スライド右下に印字された番号で表記します。
1.第271回資料6の位置づけ|「対応案」は決定ではない
第271回分科会は2026年10月19日10時から13時にWeb会議形式で開催され、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導とともに居宅介護支援が議題となりました。資料6の表紙には「社保審-介護給付費分科会 資料6 第271回(R8.10.19)」と記載されています。
資料は「これまでの分科会における主なご意見」「論点及び対応案」「参考資料」で構成されています。論点は、①高齢者像の変化に対応したケアマネジメントの推進、②ケアマネジャーの業務負担軽減、③制度改正に伴う対応、④中山間地域等における適切なケアマネジメント提供体制の確保の四つです。
対応案は、今後の議論を経て、報酬・基準の改定として省令(運営基準)・告示・通知などで具体化されるまで、内容や適用時期が変わる可能性があります。また、資料6には第259回(2026年6月29日)の資料から再掲されたページも含まれています。第259回で示された現状データと、第271回で示された対応案を混同しないよう注意が必要です。
2.特定事業所加算の見直し案|重度者要件と加算(A)の廃止
特定事業所加算は、中重度者や支援困難ケースへの積極的な対応を行い、専門性の高い人材を確保して質の高いケアマネジメントを実施している事業所を評価する加算で、主任介護支援専門員の配置や24時間連絡体制、計画的な研修などが要件となっています。現行の単位数は1月当たり(Ⅰ)519単位、(Ⅱ)421単位、(Ⅲ)323単位、(A)114単位です。資料6の10ページ(第259回資料の再掲)の集計では、事業所ベースの算定率は(Ⅰ)1.71%、(A)0.89%にとどまっています。
31ページの対応案では、主任介護支援専門員や常勤職員による手厚い人員配置の評価に重点を置く観点から、特定事業所加算(Ⅰ)の要件のうち「要介護3〜5の利用者の割合が100分の40以上」という要件を廃止してはどうかとされました。13ページ(第259回資料の再掲)の調査では、利用者1人当たり1か月の労働投入時間に、要介護度別の大きな差は見られないとされています。
特定事業所加算(A)については、算定事業所が少なく創設当初の目的を達せられていないとして廃止し、算定事業所の経営への影響を考慮して1年の経過措置を設ける案です。あわせて、現在は(A)でのみ認めている24時間連絡体制や研修の実施などについての他事業所等との連携を、上位の加算区分でも認める案が示されました。
さらに、「多様な主体等が提供する生活支援のサービス(インフォーマルサービスを含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること」という要件について、計画への位置づけではなく、様々な地域福祉の主体を含めた地域での連携体制の構築を要件とする案も示されています。背景として、福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業の創設や成年後見制度の見直し、高齢者等終身サポート事業者の増加が挙げられています。
現在(A)を算定している事業所は、廃止案と経過措置案の両方を踏まえ、上位区分の要件を満たせるか、連携先との体制をどう組むかを早めに検討しておくことが考えられます。ただし、見直し後の単位数や新しい要件の詳細は、資料6ではまだ示されていません。
3.管理者要件の見直し案|主任ケアマネジャーを求めない方向
現行の運営基準では、居宅介護支援事業所の管理者は原則として常勤専従の主任介護支援専門員とされています。2021年3月31日時点で主任ケアマネジャーでない人が管理者である事業所は、その管理者が管理者である限り、2027年3月31日まで要件の適用が猶予されています(資料6の23ページ、49ページ)。2021年4月1日以降に新たに管理者となる人には、この経過措置は適用されません。
32ページの対応案では、地域の関係者との連絡調整の中心的な役割を果たす主任ケアマネジャーの業務と、管理者に求める業務との役割分担の観点から、居宅介護支援事業所の管理者には主任ケアマネジャーであることを求めないこととしてはどうかとされました。一方で、居宅介護支援の質の確保の観点から、管理者の要件を「ケアマネジャーであって、5年の実務経験等を有する者」とする案もあわせて示されています。
背景として資料では、主任ケアマネジャーが事務的な管理業務に時間を費やし、現場のケアマネジャーの指導が十分にできていないとの指摘(2024年12月の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」中間整理)や、2025年12月の介護保険部会の意見書が挙げられています。24ページ(第259回資料の再掲)の調査では、管理者のうち主任介護支援専門員である人は90.3%でした。
これは審議中の案であり、2027年3月31日までとされている現行の経過措置がなくなったわけではありません。新しい管理者要件がいつから適用されるのか、現行の経過措置との関係はどうなるのかは、今後の省令(運営基準)・告示・通知などで確認する必要があります。現時点では、案の実現を前提とした人事や研修計画の変更は避け、正式な決定を確認することが大切です。
4.資格更新制の廃止と研修|法律は成立済み、報酬上の対応は審議中
ケアマネジャーの資格更新制の廃止は、2026年6月に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号、2026年6月25日公布)に盛り込まれています。厚生労働省の公布通知によれば、介護支援専門員証の有効期間と、その交付・更新のための研修を廃止する一方、介護支援専門員(厚生労働省令で定める者を除く)は、資質の保持・向上のため、都道府県知事が行う研修を受けるものとされました。
公布通知によれば、この部分の施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内で政令で定める日です。改正法では、正当な理由なく研修を受けていない介護支援専門員に対する受講命令や、介護支援専門員を置かなければならないとされている事業者・施設の開設者に対する受講機会の確保措置の義務(従わない場合の勧告・公表・命令を含む)も定められています。
第271回資料6の45ページでは、これを受けた報酬・基準上の対応として、ケアマネジャーを配置する施設・事業所の人員基準で定期的な研修を受講している者等の配置を求めること、管理者の責務として受講勧奨を位置づけること、正当な理由なく研修を受講していない者を配置している場合の減算を設けることが案として示されました。研修受講者の配置と管理者の責務は、ケアマネジャーを配置する他のサービスでも同様とする案です。
42ページの資料では、見直し後に定期的に受講する研修のイメージとして、一定期間(例:5年間)の間に任意のタイミングで分割して受講できる仕組みとし、全体の時間数の縮減を検討するとともに、オンライン受講を推進するとされています。「更新制がなくなる」ことと「研修を受けなくてよくなる」ことは異なります。施行日は政令で定められ、経過措置は改正法の附則や今後の政省令等で示されるため、更新期限が近い人は都道府県等の案内を確認する必要があります。
5.介護予防支援と介護予防ケアマネジメント
2024年度から指定居宅介護支援事業者も市町村の指定を受けて介護予防支援を実施できるようになりました。資料6の29ページによれば、指定は約半数の市町村で行われている一方、事業所ベースで見ると、指定を受けている居宅介護支援事業所は約2割にとどまります。
32ページの対応案では、要支援者にも一定程度の医療介護連携が必要となっている実態を踏まえ、居宅介護支援に設けられている入院時情報連携加算、退院・退所加算、通院時情報連携加算、緊急時等居宅カンファレンス加算と、同一建物減算を、介護予防支援にも設ける案が示されました。同一建物減算は、登録施設介護予防支援としても別途議論される予定とされています。
40ページでは、介護予防支援の業務の簡素化について、ケアプランの様式の在り方を調査研究を行いながら検討していく案が示されています。様式がすぐに変わるという意味ではありません。
また、改正介護保険法により居宅介護支援事業所が市町村から直接委託を受けて介護予防ケアマネジメントを実施できるようになることを踏まえ、45ページでは、その利用者を人員基準や逓減制の取扱件数で数える際に3分の1を乗じるなど、介護予防支援と同様の取扱いとする案が示されています。現行の逓減制でも、介護予防支援の利用者は3分の1として取扱件数に含められています。
6.オンラインモニタリング・障害福祉との調整・医療介護連携
2024年度改定で、利用者の同意や主治医等の関係者の合意などを条件に、テレビ電話装置等を活用したモニタリングが可能になりましたが、資料6の37ページ(第259回資料の再掲)によれば、実施した事業所は2.7%にとどまります。40ページの対応案では、主治の医師を含む関係者からの合意を得る要件について、手続きを柔軟に行うことができる旨を示すこととしてはどうかとされました。合意の要件そのものを廃止する案ではありません。
32ページでは、利用者が介護保険サービスと障害福祉サービスを併せて利用する場合の調整業務を評価する案も示されています。22ページの調査では、障害福祉サービスを利用する人については、利用者1人当たりの労働投入時間が1割程度多いとされています。
一方、居宅介護支援の通院時情報連携加算、緊急時等居宅カンファレンス加算、ターミナルケアマネジメント加算、特定事業所医療介護連携加算などの課題は論点として整理されたものの、居宅介護支援における医療介護連携の推進策は今後の分科会で説明・議論する予定とされ、具体的な対応案はまだ示されていません(介護予防支援に関連加算を設ける案は5章のとおりです)。
7.基本報酬・逓減制とケアプランデータ連携|今回、具体案は示されていない
現行の居宅介護支援費は、ケアマネジャー1人当たり(常勤換算)の取扱件数が45件以上の場合は45件目から、60件以上の場合は60件目から、超過部分に低い単位数を適用する逓減制です。ケアプランデータ連携システムの活用と事務職員の配置を行う居宅介護支援費(Ⅱ)では、50件目からとなります。中山間地域等に所在する事業所には逓減制は適用されません(資料6の50ページ)。
第271回資料6に整理された意見の中には、ケアマネジャー1人の労働時間が見直し後の件数と見合っていないとして逓減制の件数要件の再検討を求める意見や、基本報酬の引き上げを求める意見があります。しかし、資料6の対応案として、基本報酬の単位数や逓減制の件数を変更する案は示されていません(介護予防ケアマネジメントの利用者の数え方を除く)。
ケアプランデータ連携システムについては、第259回資料6の71ページで、全サービスの導入率が2025年12月時点の10.2%から2026年5月末時点の45.1%へ上昇したと示されています。これは全サービスの導入率であり、居宅介護支援事業所だけの導入率ではありません。同システムの活用は、現行の居宅介護支援費(Ⅱ)の要件の一つです。
業務の効率化で生まれた時間を件数の増加だけに使うのか、アセスメントやモニタリングの質を高めるために使うのかで、利用者への影響は異なります。ここは資料の結論ではなく、福祉教育ラボとしての実務上の問いです。
8.ケアマネジャーの安全と複数名訪問|意見はあるが対応案は未提示
第259回資料6の72ページは、ケアマネジャーの安全が脅かされる重大な事件を受けて、厚生労働省が自治体に事務連絡を発出したことを記載しています。事務連絡では、介護事業者に対して組織として必要な体制の構築や地域全体で対応できる体制づくりなどを強調するとともに、各自治体に対して、ケアマネジャーが利用者宅に複数名で訪問する場合の国の支援の活用などを依頼したとされています。
第271回資料6では、複数名で訪問した場合の報酬上の加算の創設を求める意見や、モニタリングの頻度や場所の要件見直しを求める関係団体の要望が整理されています(3ページ、6ページ)。ただし、資料6の対応案には複数名訪問加算の創設は含まれていません。「2027年度から複数名訪問加算が新設される」と書くことはできません。
事業所としては、危険が予想される訪問の事前相談、訪問時の連絡方法、対応を一人の職員だけに委ねない体制、関係機関との連携、事故発生時の記録と再発防止の手順を点検できます。本人への支援継続と職員の安全確保を両立させる組織的な仕組みが必要です。
9.居宅介護支援事業所の管理者が今から確認したいこと
第一に、現行の基準に基づく義務と、審議中の対応案を分けて整理します。管理者要件の経過措置(2027年3月31日まで)、常勤換算の取扱件数、介護予防支援の指定・委託関係、加算の算定状況は、現行のルールとして引き続き確認が必要です。
第二に、対応案が実現した場合の影響を試算しておくことが考えられます。特定事業所加算(A)を算定している事業所の上位区分への移行可能性、障害福祉サービスを併用する利用者の数、介護予防支援の指定状況などが検討材料になります。
第三に、ケアマネジャーの研修受講の状況を把握します。改正法では、更新制の廃止後も定期的な研修の受講が求められ、事業者には受講機会の確保措置が義務付けられます。人員基準や減算の扱いは審議中ですが、受講状況を管理する仕組みは先行して検討できます。
最後に、2027年度の改定内容が告示・通知として具体化した時点で、人員・運営・加算・利用者説明・契約文書・ICT連携について正式な改定内容に沿って更新します。審議中の対応案を、すでに決まった新基準として現場へ指示しないことが大切です。
10.福祉教育ラボの視点|効率化で生まれた時間を誰のために使うか
ケアマネジャーは、本人の思いを聞き取り、暮らしの課題を整理し、利用できる制度や地域資源を結びつける役割を担っています。そのためには、話を聴く時間だけでなく、支援者間で検討し、合意の内容を確かめ、変化を見つめる時間が必要です。
業務負担を減らすことは大切です。ただし「何分減らせたか」「何件担当できたか」だけでは、本人が暮らしの中で何を選べるようになったかを捉えきれません。効率化で生まれた余力を、関係形成、困難事例の検討、地域資源の開拓へどう戻すか。これは福祉教育ラボとして考え続けたい問いです。
制度改定は、ケアマネジャーだけの働き方ではなく、地域で暮らす本人と家族が必要な支援につながり続けられるかにも関わります。経営の継続と専門性の発揮を両立させる条件を、資料の数字の向こう側にある生活から考えていきたいと思います。
一次資料・確認すべき資料
- 厚生労働省|第271回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料(2026年10月19日)(開催日時、議題、資料6の掲載)
- 厚生労働省|第271回介護給付費分科会 資料6「居宅介護支援・介護予防支援(改定の方向性)」(2026年10月19日)(PDF全53ページ。主な意見は3〜7ページ、対応案は31・32・40・45ページ)
- 厚生労働省|第259回介護給付費分科会 資料6「居宅介護支援・介護予防支援」(2026年6月29日)(3〜4ページ(現行の基準・報酬)、71〜72ページ(現状と課題・論点))
- 厚生労働省|社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)(2026年6月25日)(介護支援専門員の資格に係る更新制の廃止、研修の見直し等と施行期日)
- 厚生労働省|介護サービス情報公表システム 居宅介護支援(居宅介護支援の役割、公正中立、利用者負担の基本)
- 厚生労働省|社会保障審議会(介護給付費分科会)開催一覧(第271回・第259回と前後の開催履歴)


