介護保険「2割負担」対象拡大を再検討|単身230〜260万円も選択肢

審議中|2026年9月20日時点

介護保険の「2割負担」の対象拡大は、まだ決定していません。 単身230~260万円などの具体的な数字は、2025年12月25日の第133回介護保険部会までに示された 「機械的な選択肢・粗い試算」を、第136回資料で参考資料として再掲したものです。 2026年度中に結論を得る方針が示されています。

介護保険サービスを利用するときの「2割負担」の対象が、 今後広がる可能性があります。

厚生労働省は2026年9月18日、第136回社会保障審議会介護保険部会を開き、 「持続可能性の確保(給付と負担)」を議論しました。

今回の議論は、新しい負担基準が突然示されたものではありません。

2025年12月までに示されていた所得基準や負担軽減策の選択肢を踏まえ、 2割負担となる「一定以上所得」の基準をどう見直すのか、 改めて議論を進めるものです。

政府の「骨太方針2026」では、2割負担の判断基準について 2026年度中に結論を得るとされています。

最初に結論|今回押さえておきたい4点
POINT 01 2割負担の拡大は未決定 2026年度中に結論を出す予定です。
POINT 02 230~260万円も検討材料 単身世帯の年金収入+その他所得の機械的な選択肢です。
POINT 03 負担軽減策も同時に検討 月7,000円の負担増上限や、預貯金を使った配慮案があります。
POINT 04 過去には利用変化も確認 負担割合が高い層ほど、サービスを減らした割合がやや高い結果でした。

現在の1割・2割・3割負担はどうなっている?

介護保険の利用者負担は、制度創設時には所得にかかわらず原則1割でした。

2015年8月から、第1号被保険者のうち所得が上位約20%に当たる 「一定以上所得者」に2割負担が導入されました。

さらに2018年8月からは、より所得の高い「現役並み所得者」に 3割負担が導入されています。

負担割合 主な所得要件(65歳以上)
1割 2割・3割の要件に該当しない人
2割 合計所得金額160万円以上、かつ
年金収入+その他の合計所得金額が 単身280万円以上/夫婦346万円以上
3割 合計所得金額220万円以上、かつ
年金収入+その他の合計所得金額が 単身340万円以上/夫婦463万円以上

2025年3月時点の介護サービス利用者は約540.7万人です。

91.8% 1割負担
4.3% 2割負担
約23.4万人
3.9% 3割負担
約20.6万人

現在も、介護サービス利用者の9割以上が1割負担です。

今回の焦点|単身230~260万円とは何か

現在の2割負担の基準である単身280万円は、 第1号被保険者の所得分布ではおおむね上位20%に位置します。

2025年12月25日の第133回介護保険部会までの議論では、 対象を拡大する場合の「機械的な選択肢」として、 次の所得水準が試算されました。

単身世帯 夫婦世帯 所得分布のイメージ
260万円 326万円 上位約25~30%程度
250万円 316万円
240万円 306万円
230万円 296万円
230万円や260万円に決まったわけではありません。
これらは今回新たに政府が提示した基準ではなく、 第133回までの検討内容を第136回資料で参考資料として再掲したものです。 厚生労働省も「機械的な選択肢」「粗い試算」としています。

なぜ、2割負担の範囲を見直すのか

背景には、介護保険制度の規模拡大があります。

約3.5倍 制度創設時からの
サービス利用者
14.3兆円 2025年度予算ベースの
介護費用
6,225円 第9期の第1号保険料
全国平均月額

65歳以上が負担する第1号保険料の全国平均は、 第1期の月額2,911円から、第9期には6,225円へ上昇しました。

40~64歳が負担する第2号保険料も、 2000年度の1人当たり平均月額2,075円から、 2025年度には6,202円の見込みです。

高齢化が進めば、必要となる介護費用も増えていきます。

そのなかで、

「必要な介護サービスを提供し続けること」

と、

「現役世代を含めた保険料負担の上昇を抑えること」

の両立が課題になっています。

検討されているのは、大きく2つの方向

考え方 A

対象を比較的限定する

特別な負担上限を設けなくても、 1割から2割への負担増に対応できると考えられる所得層に限定して、 2割負担を広げる考え方です。

考え方 B

対象を広げ、負担を緩和する

より広い所得層を2割負担の対象とする代わりに、 当面は一定の負担上限などを設け、 急激な負担増を抑える考え方です。

考え方Bの場合は、その後のサービス利用状況などを分析し、 2028年度までに必要な見直しを検討する方向も示されています。

具体的な「配慮措置」も試算されている

対象を広げる場合に、負担をどう和らげるのか。

2025年12月までの資料では、具体的な2つの配慮措置も試算されています。

配慮措置①|負担増を月7,000円までにする

新たに2割負担となる人について、 1割負担だった場合と比べた1か月の負担増を 最大7,000円 に抑える案です。

資料では、負担増が最大となる場合には月22,200円増えるところを、 その約3分の1である7,000円までに抑えるイメージが示されています。

配慮措置②|預貯金が一定額以下なら申請で1割へ

所得基準では2割負担に該当しても、 預貯金等が一定額以下であれば、 本人の申請により1割負担とする案です。

パターン 単身 夫婦
A 700万円以下 1,700万円以下
B 500万円以下 1,500万円以下
C 300万円以下 1,300万円以下
7,000円、500万円などの数字も確定した制度ではありません。 対象範囲と負担軽減策を比較するための試算です。

どれくらいの人に影響する?

厚生労働省は、対象人数や財政への影響についても粗い試算を示しています。

月7,000円の負担増上限を設ける案の場合、

  • 単身260万円の場合:約13万人
  • 単身230万円の場合:約35万人

が新たな2割負担の影響を受ける試算です。

預貯金要件を単身500万円・夫婦1,500万円とするケースでは、

  • 260万円の場合:影響者約8万人、そのうち約5万人が申請により1割へ
  • 230万円の場合:影響者約19万人、そのうち約17万人が申請により1割へ

という試算です。

全体では、制度設計によって、

  • 給付費:約80~220億円減
  • 保険料:約40~110億円減
  • 国費:約20~60億円減

とする粗い財政試算も示されています。

「2割負担拡大」と一言でいっても、影響する人数は制度設計によって大きく変わります。
どこに所得基準を置き、どの配慮措置を組み合わせるかを見る必要があります。

医療と介護を同じ基準にはできない

今回の資料で厚生労働省が強調しているのが、 医療と介護ではサービス利用の仕方が異なるという点です。

年間利用者の割合 特徴
後期高齢者医療 97.6% ほとんどの被保険者が利用
介護保険 約14.5% 特定の利用者が継続的に利用

医療は、多くの高齢者が利用します。

一方、介護は利用する人そのものは限られていますが、 必要になれば長期間・継続的に使うことが多いサービスです。

そのため、

「医療でこの所得なら2割だから、介護も同じでよい」

と単純に整理することはできません。

過去に負担割合が上がったとき、利用はどう変わった?

今回の資料には、過去の2割・3割負担導入後に実施した調査も掲載されています。

2割負担導入後

1割負担者 2割負担者
利用単位数が減った・利用中止 1.3% 3.8%
「介護に係る支出が重い」が理由 0.1% 1.3%

3割負担導入後

2割負担者 3割負担者
利用単位数が減った・利用中止 3.2% 5.2%
「介護に係る支出が重い」が理由 0.5% 1.9%

この結果を、

「負担割合を上げたら大量の利用控えが起きた」

と読むのは適切ではありません。

一方で、

負担割合が高い層ほど、サービスを減らしたり中止したりした割合が高かった

という差は確認されています。

今回の制度設計でも、単に所得だけを見るのではなく、 負担増が必要なサービスへのアクセスにどう影響するのかを見る必要があります。

預貯金と「金融所得」は別の話

今回の資料には「預貯金」という言葉も出てきます。

先ほどの配慮措置②は、

「所得基準では2割になる人でも、預貯金等が一定額以下なら、 申請により1割負担とする」

という案です。

これは金融資産の話です。

一方、医療保険では、2026年6月5日に公布された 「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)」により、 後期高齢者医療について、上場株式の配当等の 金融所得を保険料や窓口負担割合の判定へ 公平に反映する仕組みが盛り込まれました。

「預貯金などの金融資産」と「株式配当などの金融所得」は別です。
ニュースを読むときには混同しないことが大切です。

医療保険制度改正については、厚生労働省の概要資料でも確認できます。

健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の概要 ↗

2026年度中に結論へ|でも、まだ決まっていない

今回の議論について、現時点では次のように整理できます。

まだ決まっていないこと
  • 単身230万円を2割負担の新基準とすること
  • 単身260万円を新基準とすること
  • 月7,000円の負担増上限を導入すること
  • 預貯金500万円以下なら1割負担へ戻すこと
  • 最終的な対象人数

一方で、政府は「骨太方針2026」で、 2割負担の判断基準について 2026年度中に結論を得るとしています。

今後は、

  • 所得基準をどこに置くのか
  • 負担軽減策を設けるのか
  • どれくらいの利用者が対象になるのか
  • 介護サービスの利用にどのような影響が出るのか

が焦点になります。

福祉教育ラボの視点

負担を「払えるか」だけで考えない

介護保険制度を続けていくためには、お金が必要です。

高齢化が進み、介護を必要とする人が増えれば、 誰がどこまで負担するのかという議論を避けることはできません。

負担能力のある人に、より多く負担してもらうという考え方にも理由があります。

一方で、介護サービスは単なる「買い物」ではありません。

入浴する。
食事をする。
排泄する。
外へ出る。
家族が仕事を続ける。
自宅で暮らし続ける。

介護サービスは、その人の毎日の生活を支えています。

過去の調査では、負担割合が高い層ほど、 サービスを減らしたり中止したりした割合が少し高くなっていました。

「払える所得があるか」だけでなく、
「負担が増えたあとも、必要な介護を使い続けられるか」。

そこまで見る必要があります。

同時に、現在の負担構造を変えず、 現役世代の保険料だけが上がり続けるのであれば、 それも持続可能とはいえません。

だから今回の議論は、

「2割負担に賛成か、反対か」

だけでは捉えきれません。

誰に、どこまで負担を求めるのか。

急激な負担増をどう防ぐのか。

負担が増えたとき、サービス利用はどう変わるのか。

必要な介護へのアクセスをどう守るのか。

そして、世代を超えて介護保険をどう支えていくのか。

介護保険が守ろうとしているのは、 制度そのものではありません。

その制度を通して営まれている、人の生活です。

制度を続けることと、必要な人が必要な介護を使えること。 その両方をどう成り立たせるのか。 今回の2割負担をめぐる議論では、そこまで見ていく必要があると思います。

一次資料

※本記事は2026年9月20日時点の公表資料をもとに整理しています。 2割負担の所得基準、配慮措置、対象者数などは現時点では決定していません。