介護保険の1割・2割・3割負担はどう決まる?|自己負担割合と判定基準を整理

学びの整理

介護保険サービスを利用するとき、 「私は1割負担?」「親は2割になる?」「年金が280万円を超えたら、自動的に2割?」 と迷うことがあります。

介護保険の自己負担割合は、 単純に「年収がいくらか」だけで決まるわけではありません。

この記事では、現在の1割・2割・3割負担について、 「どの順番で判定するのか」から整理します。

2026年9月20日時点の現行制度
この記事は「現在の制度」の整理です 2026年9月現在、2割負担となる所得基準の見直しが議論されていますが、 現時点で新しい基準は決まっていません。 この記事では、いま実際に適用されている制度を解説します。
最初に結論|4つだけ押さえる
POINT 01 280万円だけでは決まらない まず本人の合計所得金額を確認し、その後に年金収入等を見ます。
POINT 02 65歳以上が所得判定の対象 第2号被保険者、市町村民税非課税者などは原則1割です。
POINT 03 負担割合と毎月の支払額は別 高額介護サービス費や保険外費用も合わせて見る必要があります。
POINT 04 最後は負担割合証を確認 実際の1割・2割・3割は、市区町村が交付する負担割合証で確認します。

そもそも「1割・2割・3割負担」とは?

これは、毎月支払う介護保険料の話ではありません。

介護保険サービスを利用したときに、 介護保険給付の対象となるサービス費のうち、 本人が負担する割合です。

負担割合 10万円分の保険対象サービスを利用した場合
1割 約1万円
2割 約2万円
3割 約3万円

ただし、これは介護保険給付の対象となる部分についての基本的な計算です。

施設の食費や居住費、日常生活費などは別に必要です。 また、在宅サービスで区分支給限度基準額を超えて利用した部分は、 原則として全額自己負担になります。

「2割負担=請求書全体がちょうど2倍」ではありません。
保険給付の対象部分、高額介護サービス費、食費・居住費、 限度額超過分などを分けて考える必要があります。

まずはここ|負担割合の判定フロー

STEP 1 40~64歳の第2号被保険者ですか?
はい
原則1割
いいえ
65歳以上 → 次へ
STEP 2 市町村民税非課税者、生活保護受給者などに該当しますか?
はい
原則1割
いいえ
本人の所得を確認
STEP 3 本人の合計所得金額はいくらですか?
160万円未満
1割
160万円以上
年金収入等を確認
STEP 4 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満の場合

年金収入+その他の合計所得金額が、

  • 第1号被保険者が1人:280万円以上
  • 第1号被保険者が2人以上:346万円以上
基準以上
2割
基準未満
1割
STEP 5 本人の合計所得金額が220万円以上の場合

まず3割負担の基準を確認します。

  • 第1号被保険者が1人:340万円以上
  • 第1号被保険者が2人以上:463万円以上

基準以上なら 3割

3割基準に届かない場合は、2割負担の280万円・346万円基準へ戻って再判定します。

2割負担はどう決まる?

2割負担の基本的な入口は、 本人の合計所得金額が160万円以上 であることです。

そのうえで、同一世帯にいる第1号被保険者の 「年金収入+その他の合計所得金額」が、

  • 第1号被保険者が1人:280万円以上
  • 第1号被保険者が2人以上:346万円以上

となる場合に、原則2割負担となります。

したがって、

「年金が280万円以上なら、自動的に2割」

という仕組みではありません。

3割負担はどう決まる?

3割負担では、まず本人の合計所得金額が220万円以上かを確認します。

そのうえで、

  • 第1号被保険者が1人:340万円以上
  • 第1号被保険者が2人以上:463万円以上

という「年金収入+その他の合計所得金額」の基準を満たす場合に、 原則3割負担となります。

ただし、本人の合計所得金額が220万円以上でも、 340万円・463万円に届かなければ、 自動的に1割になるわけではありません。

今度は2割負担の280万円・346万円基準を確認します。

該当すれば2割、そこにも届かなければ1割です。

判定の流れを表で整理すると

本人の合計所得金額 年金収入+その他の合計所得金額 原則の負担割合
160万円未満 ― 1割
160万円以上220万円未満 1人:280万円未満
2人以上:346万円未満
1割
160万円以上220万円未満 1人:280万円以上
2人以上:346万円以上
2割
220万円以上 1人:340万円以上
2人以上:463万円以上
3割
220万円以上 3割基準未満だが、
1人:280万円以上
2人以上:346万円以上
2割
220万円以上 1人:280万円未満
2人以上:346万円未満
1割

※本人の合計所得金額が220万円以上の場合は、 まず3割負担の基準を確認し、 該当しない場合に2割負担の基準で再判定します。

※第2号被保険者、市町村民税非課税者、生活保護受給者などは、 この表にかかわらず原則1割です。

「160万円」と「280万円」は、同じ種類の数字ではない

ここは特に混乱しやすいところです。

160万円や220万円は、 本人の「合計所得金額」 です。

一方、280万円や340万円は、 「公的年金等の収入金額+その他の合計所得金額」 です。

「収入」と「所得」が混ざった、別の指標を使っています。

「その他の合計所得金額」とは、 合計所得金額から公的年金等に係る雑所得を除いた金額を指します。

年金を二重に足さないよう注意 「年金収入」に、 年金所得を含んだ「合計所得金額」をそのまま足すわけではありません。 それでは年金部分を二重に計算することになります。 給与所得などがある場合には、さらに制度上の所得調整もあります。

ですから、

「年金が280万円あるから私は2割」

と一つの数字だけを見て判断しないことが大切です。

「夫婦346万円」という言い方にも注意

制度説明では、 「単身280万円、夫婦346万円」と書かれることがあります。

ただ、厳密には婚姻関係そのものを見ているわけではありません。

判定するのは、

  • 同一世帯に第1号被保険者が1人なのか
  • 2人以上なのか

です。

2人以上の場合は、その世帯にいる第1号被保険者の 「年金収入+その他の合計所得金額」を合計して判定します。

「夫婦346万円」は、制度を分かりやすく説明する際の 代表的な表現と考える方が正確です。

実際には、介護サービスに毎月いくら払っている?

厚生労働省が介護DBを用いて集計した2025年7月のデータでは、 介護保険サービスの1人当たり平均自己負担月額は次のとおりでした。

0.99万円 在宅系
2.3万円 居住系
3.2万円 施設系
1.5万円 全体平均

これは高額介護サービス費の上限44,400円を前提に集計された平均で、 月の途中から利用した人なども含まれています。

また、施設の食費・居住費など、 介護保険の給付対象外となる費用は含まれません。

「毎月の介護関連支出全部」ではありませんが、 実際の介護保険サービスの自己負担の規模感を見る一つの材料になります。

最終的には「介護保険負担割合証」を確認する

実際に自分が1割・2割・3割のどれなのかを確認するときに最も確実なのは、 市区町村から交付される「介護保険負担割合証」です。

市町村は毎年、前年の所得をもとに負担割合を判定します。

判定は毎年8月1日を基準日として行われ、市区町村は8月からの利用に間に合うよう負担割合証を交付します。

通常の有効期間は、 8月1日から翌年7月31日まで です。

所得の更正、世帯構成の変更、65歳到達などによって、 年度途中に割合が変更される場合もあります。

自分で計算した数字より、まず負担割合証を確認。
分からない場合は、市区町村の介護保険窓口やケアマネジャーに確認しましょう。

ケアプラン作成には、現在利用者負担はない

ここには一つ、知っておきたい例外があります。

現在の「居宅介護支援」、 つまりケアマネジャーによるケアプラン作成やサービス事業者との連絡調整には、 利用者負担はありません。

ケアマネジャーへの相談・ケアプラン作成は現在0円 1割・2割・3割を支払う仕組みではなく、 現在は全額が介護保険から給付されています。 「2割負担だからケアマネジャーにも2割払う」 ということではありません。

2026年9月20日時点では、 通常の居宅介護支援の利用者負担は0円です。

1割・2割・3割と「高額介護サービス費」は別の仕組み

1割・2割・3割は、 サービスを利用したときにまず本人が負担する割合です。

一方、高額介護サービス費は、 1か月の利用者負担額が所得区分ごとの上限を超えた場合に、 その超過分が支給される仕組みです。

所得区分の主な目安 月額上限
課税所得690万円以上 140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満 93,000円(世帯)
上記高所得区分を除く市町村民税課税世帯 44,400円(世帯)
市町村民税非課税世帯 24,600円(世帯)
市町村民税非課税世帯のうち、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額が82.65万円以下の方等 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護受給者等 15,000円(個人)

2026年8月から、 低所得区分の一部に使われる年金収入等の判定基準は、 80.9万円から82.65万円へ見直されました。

15,000円・24,600円など、 高額介護サービス費の上限額そのものは変更されていません。

この見直しは、介護保険法施行令の改正(令和8年政令第219号、2026年6月25日公布、同年8月1日施行)によるものです。厚生労働省の「介護保険最新情報 Vol.1516」で確認できます。

負担割合と「月の負担上限」は別の制度です。
2割負担になっても、介護保険対象サービスの自己負担が 無制限に増えていく仕組みではありません。

支給限度額を超えた部分は「3割」ではなく原則10割

在宅サービスには、 要介護度ごとに1か月に介護保険を利用できる 「区分支給限度基準額」が設定されています。

この範囲内では、その人の負担割合に応じて 1割・2割・3割を負担します。

しかし、限度額を超えて利用した部分は、 原則として全額自己負担です。

限度額を超えた部分は原則10割負担 例えば2割負担の人でも、 区分支給限度基準額の範囲内は2割、 それを超えた部分は原則10割です。 「何割負担か」と「どこまで介護保険を使えるか」は別の話です。

請求書を見るときは「4つ」に分ける

介護サービスの費用を見るときは、 次の4つを分けると整理しやすくなります。

1 負担割合
自分は1割・2割・3割のどれか。
2 保険対象サービス費
介護保険給付の対象となっている金額はいくらか。
3 高額介護サービス費
月の自己負担上限に該当するか。
4 保険外費用
食費・居住費・日常生活費・限度額超過分などはいくらか。

「2割負担」という一つの数字だけでは、 最終的な毎月の支払額は分かりません。

家計への影響を見るときには、 どのサービスを、どれだけ利用し、 どこまでが保険給付で、 どの負担軽減制度が使えるのかまで見ることが大切です。

2026年現在、2割負担の基準見直しが議論されている

ここまで説明したのは、 2026年9月20日時点の現行制度です。

一方、現在は2割負担となる「一定以上所得」の基準そのものを 見直す議論が進められています。

現在の単身280万円という基準に対して、 過去の介護保険部会では230~260万円までを 機械的な選択肢として試算しています。

政府は、2割負担の判断基準について 2026年度中に結論を得る方針です。

230万円になったわけではありません 「230万円を超えたら、現在2割になる」 という制度ではありません。 現在の負担割合は、 この記事で整理した現行基準によって判定されます。

制度改正のニュースと、 いま実際に適用されている制度を分けて理解することが大切です。

福祉教育ラボの視点

負担割合は「線を引く制度」

1割、2割、3割。

制度を説明すると、 どうしても数字に目が向きます。

160万円。
220万円。
280万円。
340万円。

しかし、この数字は単なる計算式ではありません。

社会として、

誰にどの程度負担してもらうのか。

介護を必要とする人の生活を、 どこまで社会全体で支えるのか。

負担能力の違いを制度にどう反映するのか。

そのために引かれた「線」でもあります。

線を引けば、線のすぐ上にいる人と、すぐ下にいる人が生まれる。

だから制度には、 分かりやすさだけでなく、 公平性や生活への影響も求められます。

利用する側にとって大切なのは、 「私は何割なのか」を知るだけではなく、 「なぜその割合なのか」を理解できることではないでしょうか。

制度を知ることは、 数字を暗記することではありません。

自分や家族の暮らしと、 社会の仕組みがどこでつながっているのかを知ることでもあります。

まずは負担割合証を確認する。 分からなければ、市区町村やケアマネジャーに確認する。 その小さな確認からでも、 制度を自分の生活につなげて考えることができます。

一次資料

※本記事は2026年9月20日時点の制度をもとに整理しています。 今後、2割負担の判断基準や負担軽減制度が変更された場合には内容を更新します。
更新履歴:2026年9月22日 高額介護サービス費の所得区分表を精緻化し、低所得基準見直しの根拠に改正政令(介護保険最新情報 Vol.1516)を追加。負担割合証の判定時期の記述を一次資料に合わせて修正。関連記事を追加。