訪問看護のオンライン診療補助・ICT連携に新評価|2026年度診療報酬改定で何が変わった?
医師が画面越しに診察し、訪問看護師が利用者のそばで支える。医療・介護の関係者がICTで情報を共有する。2026年度診療報酬改定では、この二つの場面に関わる評価が新設されました。
2026年6月から、訪問看護に関わるオンライン診療の補助とICTを用いた医療情報連携に、新たな報酬上の評価が設けられました。ただし、制度の名称が似ていても、算定する主体、対象者、訪問の位置付けは同じではありません。特に医療保険と介護保険の訪問看護を区別する必要があります。
まず結論|二つの評価と請求主体を分けて確認する
| 制度・区分 | 主な対象・条件 | 算定主体・評価額 |
|---|---|---|
| 訪問看護遠隔診療補助料〔訪問看護療養費・区分06〕 | 医療保険の指定訪問看護の対象者で、訪問看護指示書の有効期間内に、定期訪問とは別に、緊急の診療補助のため看護職員が訪問する場合など | 要件・届出を満たす訪問看護ステーション:2,650円(月1回まで) |
| 訪問看護遠隔診療補助料〔医科点数表・C005-1-3〕 | 医療機関の看護師等、又は医療機関と連携する訪問看護ステーションの看護師等が、通常の訪問看護と一体ではない診療補助のため訪問する場合など | 医療機関:265点(月1回まで)。連携ステーションによる訪問でも医療機関が請求し、費用は合議で精算 |
| 訪問看護医療情報連携加算 | 本人の同意を得て、ICTで他機関の診療情報等を取得・活用し、訪問看護の計画的管理と双方向の情報共有を行う場合 | 要件・届出を満たす訪問看護ステーション:1,000円(月1回) |
2,650円と265点は同じ名称の補助料に属しますが、別の算定体系です。訪問看護指示書の有効期間、医療保険か介護保険か、予定訪問の有無などによって取扱いが変わります。また、同一の利用者について保険医療機関が医科点数表C005-1-3を算定した場合、訪問看護ステーションは区分06の補助料を算定できません(留意事項通知 第9・4)。
※上記は制度の大枠を比較したものです。すべての要件を満たせば自動的に算定できる、という意味ではありません。介護保険の利用者は後述の別の取扱いを確認してください。
1.オンライン診療の「D to P with N」とは
「D to P with N」とは、医師(Doctor)がオンラインで患者(Patient)を診察し、看護師等(Nurse)が患者のそばで支援する形を指します。医師が診療上の判断や説明を担い、看護師等は医師の指示に基づいて診療の補助を行います。
たとえば通院が難しい在宅療養者に対して、主治医がオンラインでの診察を必要と判断したとき、看護職員が居宅で状態の確認や機器の調整、診療中の支援を行う場面が考えられます。ただし、オンライン診療を行えば必ず補助料を算定できるわけではありません。
厚生労働省は、訪問看護指示書と訪問看護計画に基づく「予定された定期訪問」と、予定された訪問看護がない日に診療補助を目的として訪問する場合を明確に区別しています。今回の訪問看護遠隔診療補助料は、通常の定期訪問を行いながらオンライン診療を補助する行為へ、一律に上乗せする評価ではありません。
たとえば予定された訪問看護中に急に医師の診察が必要になった場合も、訪問看護ステーションの「2,650円」を追加して算定するわけではありません。定期訪問に対する既存の訪問看護の費用として扱う場合と、別途訪問した診療補助として扱う場合を分けて確認します。また、医科点数表C005-1-3でも、緊急に診療を要する患者に関する留意事項は、定期的・計画的なオンライン診療に当該補助料を算定できないことを明記しています。
医療保険の訪問看護ステーションが2,650円を算定する場合
訪問看護療養費・区分06の2,650円は、主治医から交付された有効な訪問看護指示書があり、訪問看護計画に基づく定期訪問とは別に、主治医が緊急に診療を要すると判断して指示し、本人が同意したうえで看護職員が居宅を訪問しオンライン診療を補助した場合を評価します。月1回までです。対象となる訪問看護ステーションには地方厚生(支)局への届出と、オンライン診療を行う体制のある医療機関との連携が必要です。なお主治医は、医科点数表C005-1-3の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局に届け出た保険医療機関の保険医に限られます。
同一日に訪問看護基本療養費、精神科訪問看護基本療養費、訪問看護管理療養費、訪問看護情報提供療養費、訪問看護ターミナルケア療養費、訪問看護ベースアップ評価料、訪問看護物価対応料は算定できません。1人の利用者について算定できるのは1ステーションのみです。また、同一の利用者について保険医療機関がC005-1-3を算定した場合、訪問看護ステーションは区分06の補助料を算定できません(留意事項通知 第9・4)。実施日時・内容・対応状況を訪問看護記録書に記録し、医師は指示内容を診療録に残します。
医療機関が265点を算定する場合
医科点数表C005-1-3の265点も「訪問看護遠隔診療補助料」という名称です。医療機関自身の看護師等が訪問する場合だけでなく、医療機関と連携した訪問看護ステーションの看護師等が、通常の訪問看護とは一体でない診療補助のために訪問する場合も対象となり得ます。請求は診療を行う医療機関が行い、連携ステーションによる訪問の場合は双方が合議のうえ費用を精算します。
この医療機関の区分では、訪問看護ステーションへの訪問看護指示書の交付は不要とされています。一方、医療保険の訪問看護の対象者で、有効な訪問看護指示書の交付を受けた場合におけるステーションの訪問については、医療機関の265点ではなく訪問看護療養費側の評価となるため注意が必要です。こちらも月1回までで、通常の訪問看護との同日算定制限等があります。
介護保険で訪問看護を受けている人の場合
ここはケアマネジャーにとって特に重要です。2026年5月8日の厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1501」は、介護保険の訪問看護利用者について別の算定方法を示しています。
有効な訪問看護指示書があり、訪問看護計画上は予定された訪問がない日にオンライン診療の補助を行う場合、次期介護報酬改定までの間は、介護保険の訪問看護費として次を算定します。いずれも月1回までです。
| 介護保険の区分 | 訪問看護ステーション | 病院・診療所 |
|---|---|---|
| 訪問看護費 | 20分未満:314単位 | 20分未満:266単位 |
| 介護予防訪問看護費 | 20分未満:303単位 | 20分未満:256単位 |
予定された訪問看護の中で診療補助も実施した場合は、補助に要した時間を計画的な訪問看護の実施時間に合算した区分で訪問看護費を算定します。訪問看護指示書が交付されていない利用者に、医療機関の依頼・医師の必要性判断・本人の同意等を満たして診療補助を行う場合は、医療機関がC005-1-3の265点を請求して合議精算する取扱いです。
これは「介護保険の利用者にもステーションの2,650円がそのまま当てはまる」という意味ではありません。訪問看護計画とケアプラン、主治医からの依頼、当日の訪問実績を突き合わせて判断する必要があります。
2.もう一つの新評価|ICTで医療・ケア情報をつなぐ
「訪問看護医療情報連携加算」は、在宅で療養する通院困難な利用者に関する評価であり、ICTを導入しただけで算定できる仕組みではありません。他の医療機関等の関係職種が記録した情報を訪問看護に活用し、訪問看護側も必要な情報を記録して連携することを評価します。
厚生労働省の訪問看護ステーション向け資料(33ページ)と訪問看護療養費の留意事項通知(第5・12)では、利用者の同意のもとで情報を取得・共有すること、過去90日以内に記録された他機関の医療・ケア情報(自ステーションや特別の関係にある保険医療機関等の記録を除く)をICTで1件以上取得すること、特別の関係にある機関を除いた連携機関が5以上あること等を求めています。
施設基準として、記録が連携機関間の協議により一元的に管理されたサーバーで保管され、本人が同意した参加者だけで共有され、参加者の範囲を随時設定でき、必要な情報を継続的に閲覧・取得できる体制などが示されています。また、連携体制の掲示と、原則としてウェブサイトへの掲載が必要です。ウェブ掲載についての2026年9月30日までの経過措置は終了しています。単に契約しているソフトや連携機関の数だけで算定できるわけではありません。
共有する情報の例には、訪問看護の予定、計画変更の有無と概要、ケア上の留意点、本人から把握した急変時や人生の最終段階に関する希望などが含まれます。とりわけ重要なのは、共有範囲を本人が同意した相手に限定し、参加者を設定できることです。なお、同一月に在宅患者連携指導加算を算定した場合、訪問看護医療情報連携加算は算定できません。
ICTで共有する医療情報と、介護保険のケアプランデータ連携は同一制度ではありません。関連する別の記事「ケアプランデータ連携システムをめぐる見直し」もあわせてご覧ください。
3.図解|医師・本人・訪問看護師の3者の役割
医師:オンラインで診察し、医療上の判断・説明・必要な指示を行う。
本人:自分の体調、生活上の困りごと、希望や不安を伝え、説明を受けたうえで診療や情報共有について意思を示す。
訪問看護師:本人のそばで状態を観察し、医師に伝え、指示に基づき診療を補助するとともに、本人が疑問や希望を伝えられるよう支える。
この3者は、医師がすべてを決め、看護師が伝え、本人が従うという一方向の関係ではありません。本人の意思を中心に、双方向の対話を成立させることが重要です。
医師
オンライン診療・医療上の判断・説明・必要な指示
本人
体調・希望・不安を伝え、説明を受けて意思を示す
訪問看護師
対面で状態を観察、報告。指示を受け診療を補助
本人の意思と安心を中心に
4.訪問看護師・ケアマネ・相談員にとって、何が変わる?
訪問看護師は、オンライン診療に参加すること自体より、「何を観察し、何を医師へ伝え、何を記録に残すか」が重要になります。診療の補助と通常の定期訪問を混同しないため、指示書、訪問看護計画、医師の判断、本人の同意、算定区分を確認します。
ケアマネジャーが今回の訪問看護療養費や訪問看護医療情報連携加算を自ら算定するわけではありません。ただし介護保険の訪問看護利用者については、厚生労働省Vol.1501の給付調整が直接関係します。本人の通院困難や生活上の課題を把握し、医師・訪問看護・他サービスをつなぐ役割があります。「オンライン診療があるから訪問や対面診療は不要」と短絡せず、サービス間の役割と緊急時の連絡経路を確認します。居宅介護支援そのものの2027年度見直し論点は、別記事「居宅介護支援の報酬改定に向けた検討」で扱っています。
医療ソーシャルワーカーや施設の相談員は、本人と家族が情報共有の目的・範囲を理解できているか、対面診療や移動支援などの選択肢も説明されているかを確認できます。情報を共有する職種が増えても、その全員が無条件で全記録を閲覧してよいわけではありません。
5.本人の意思と安心を守るには
ここには三つの視点があります。
一つ目は「同意の具体性」です。オンラインで医師とつながることへの同意と、日常の医療・ケア情報を複数機関で共有することへの同意は、目的も対象情報も異なります。本人が分かる言葉で説明し、誰と何を共有するかを確かめる必要があります。インフォームド・コンセントの用語解説も参考になります。
二つ目は「選択肢の保障」です。画面越しでは聞き取りづらい、看護師の前では話しにくい、病状を対面で診てもらいたい、といった希望があれば、その声を診療のあり方に反映する必要があります。利用者が選択できる条件を整えるという視点は「自己決定と選択できる機会」でも考察しています。
三つ目は「技術的な安全性」です。画面・音声の接続、通信の安定性、第三者に会話が聞こえない環境、記録・閲覧権限の管理、対面診療に切り替える連絡方法を確認します。医療情報の共有は、便利さだけで評価するものではありません。
6.架空の事例|「画面では言いにくい」を見逃さない
在宅療養中のAさんは、通院が難しく、主治医とのオンライン診療を受けることになりました。看護師がAさんのそばで血圧などを確認し、医師へ状態を伝えます。診療は円滑に進みましたが、終了後、Aさんは看護師に「家族が近くにいたから、不安なことを言えなかった」と話しました。
この場面で大切なのは、オンライン診療が滞りなく終わったかどうかだけではありません。次回は誰に同席してほしいか、家族がいない場で医師と話せるか、対面受診の希望はないか。Aさんと一緒に確認する必要があります。
情報がつながることと、本人の声が届くことは同じではありません。
よくある疑問
オンライン診療に看護師が同席すれば、毎回2,650円が算定できる?
できません。医療保険の指定訪問看護か介護保険の訪問看護か、訪問看護指示書の有効期間内か、主治医が緊急の診療補助を指示したか、通常の定期訪問と別か、本人の同意・届出・月1回の制限を満たすかを確認します。介護保険の訪問看護利用者に、ステーションの2,650円を一律に当てはめてはいけません。
ケアマネジャーも訪問看護医療情報連携加算1,000円を算定できる?
今回取り上げた訪問看護医療情報連携加算は、訪問看護に関する評価です。ケアマネジャーが情報共有に参加したことだけで、この1,000円を算定する制度ではありません。
ICTを使えば、本人の同意なしにすべて共有できる?
できません。厚生労働省の施設基準概要は、本人が同意した者に限って情報を共有し、参加者の範囲を設定できる仕組みを求めています。
まとめ|「つながる」を本人のための仕組みにする
2026年6月から、オンライン診療時の対面補助と、ICTによる医療・ケア情報連携が新たに評価されました。とりわけ訪問看護遠隔診療補助料は、医療機関の265点、医療保険の訪問看護ステーションの2,650円、介護保険利用者の訪問看護費の取扱いを分けて理解することが大切です。
そのうえで福祉教育ラボが問い続けたいのは、「技術によって誰の何が良くなったのか」ということです。専門職が早く情報を集められたことだけではなく、本人の不安が減り、希望が伝わり、必要な医療・ケアを選べるようになったのか。制度を実践に変えるための評価軸は、そこにあります。
一次資料
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・正式通知・疑義解釈を掲載した総合ページ)。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」2026年9月4日版、33ページ(訪問看護医療情報連携加算)、47〜49ページ(D to P with N)。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001745825.pdf
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」2026年3月5日保発0305第19号(4月2日訂正版)、第5・12「訪問看護医療情報連携加算」および第9「訪問看護遠隔診療補助料について」。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」2026年3月5日保医発0305第6号(10月7日訂正後)、医科点数表 C005-1-3。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その5)」2026年5月8日、別添1・問13。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698587.pdf
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1501」2026年5月8日、Q&A。https://www.mhlw.go.jp/content/001698479.pdf
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第67号、改正後・区分06)。https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9734&dataType=0
- 東海北陸厚生局「訪問看護ステーションの基準に関する届出(令和8年度改定)」、届出番号「訪看35」「訪看37」。https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/iryo_shido/houmon/r6_houmonkango_kijyun_00001.html
※本記事の算定要件・金額・届出の根拠には厚生労働省および地方厚生局の一次資料のみを使用しました。概要資料よりも告示・正式通知・疑義解釈を優先しています。算定の可否は個別の要件と最新の訂正・疑義解釈で判断してください。

