地域区分は2027年度にどう変わる?|市町村の意向調査・経過措置・3級地差ルール案

2026年10月28日の第272回介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向けて、地域区分の具体的な見直し案が示されました。公務員の地域手当への準拠を原則としつつ、市町村の希望による経過措置と、隣接市町村間の級地差調整を検討する内容です。

市町村ごとの新しい級地はまだ決まっていません。本記事では、2026年2月の市町村意向調査、経過措置の10~12%の具体例、3級地差ルールの引上げ・引下げの図の例を用い、介護法人の経営・人事・経理で何を確認するかを整理します。

最初に確認|決定済みの制度と介護報酬の見直し案

公務員の地域手当は、2025年度から都道府県単位を基本とし、級地区分を7区分から5区分へ段階的に見直しています。これは公務員側の制度の変更です。介護報酬の市町村別地域区分が、同じ内容ですべて決定したわけではありません。

今回の介護報酬の対応案は、最新の民間賃金の状況を反映した国家公務員または地方公務員の地域手当に準拠して級地を設定することを原則とし、そのうえで急激な単価変動を緩和する経過措置や、隣接市町村間の特例を設けるというものです。市町村の意向を改めて確認した上で設定する案であり、各市町村の新しい級地はまだ確定していません。

区分 2026年10月29日時点の整理
別制度の動き(公務員地域手当)2025年度から7区分→5区分等の見直しを段階的に実施中
今回の介護報酬の検討案公務員(国家・地方)の地域手当への準拠を原則に、2029年度末までの経過措置案と隣接自治体の3級地差ルール案を検討
今後確定する事項市町村ごとの級地・上乗せ割合、適用条件、各事業所への具体的な報酬影響

2026年2月の市町村意向調査|約9割が原則準拠の回答

厚生労働省は2026年2月、市町村に地域区分の見直しに関する意向を確認しました。資料3(印刷p.9)の結果は次のとおりです。これは2027年度の新しい級地の確定結果ではなく、検討のための調査です。

回答内容 自治体数 割合
公務員の地域手当に準拠(現行の上乗せ割合と変わらない)1,08862.5%
公務員の地域手当に準拠(現行より上乗せ割合が上がる)43825.2%
現行と同じ上乗せ割合を希望(経過措置を希望)1408.0%
その他(異なる割合の希望・未定等)754.3%

上の最初の2区分を合わせると1,526自治体(87.7%)です。約9割が、公務員の地域手当に準拠することについて特段の変更意向を示していません。一方、経過措置を希望した自治体は140(8.0%)で、自治体によって想定する影響が異なることも分かります。

経過措置案|10%から12%の間で選べる例

資料3の対応案では、市町村が希望する場合、従前の上乗せ割合と、公務員の地域手当の上乗せ割合の範囲内で級地・上乗せ割合を設定できる経過措置を、2029年度末(令和11年度末)まで設けるとしています。現行の経過措置は2026年度末まで延長が認められています。

資料3・印刷p.12の例

従前:5級地・上乗せ10%

見直しにより:3級地・上乗せ12%

市町村が経過措置を希望する場合、10%~12%の範囲で設定できる案

この例は、すべての自治体で10~12%を選べるという意味ではありません。対象となる従前割合と公務員地域手当の組み合わせによって範囲が変わり、事業所が個別に選択する制度でもありません。

2030年度以降(令和12年度以降)については、令和12年度の介護報酬改定時に市町村の意見を確認する案が示されています。「2029年度末で必ず従前割合がなくなる」とも「以後の扱いが決定済み」とも読み取れません。

3級地差ルール案|隣接自治体の引上げ・引下げの具体例

現在の特例を見直す理由は、公務員の地域手当の級地区分が7区分から5区分に変わることで、現行の5級地差ルールの対象自治体がなくなるためです。今回の案では、5級地差ルールを3級地差ルールに見直し、現行の4級地差ルールも3級地差ルールで対応するとされています。

3級地差ルール案は、3級地以上の級地差がある地域と隣接する場合、2級地差となるまでの範囲で、級地の引上げまたは引下げを認めるものです。自動的に変更されるという意味ではありません。

資料3・印刷p.15の図の例 元の設定 認める調整の例
隣接地域との格差を小さくする(引上げ)4級地・8%の市町村が1級地・20%の地域に隣接3級地・12%を選択できる案(差は2級地)
隣接地域との格差を小さくする(引下げ)1級地・20%の市町村が4級地・8%の地域に隣接2級地・16%を選択できる案(差は2級地)

なお、完全囲まれルール、複数隣接ルール、広域連合ルール、他制度との均衡ルールについては、継続する案が示されています。どの自治体にどの扱いが適用されるかは今後の設定を待つ必要があります。

介護法人の経営・人事・経理|いま準備できること

地域区分が変われば、同じサービス単位数でも1単位当たりの単価を通じて収入が変わり得ます。ただし、地域区分の上乗せ割合は給与の自動改定率ではありません。

  • 経営者・本部経理:拠点別に現行級地と売上単位数を整理し、上乗せ割合が変わった場合の収入感応度を試算する。新級地は未確定としてシナリオを置く。
  • 施設長・管理者:同じ生活圏の隣接自治体にある事業所との採用状況を確認する。級地差の調整が人材確保にどう関わるかを見ておく。
  • 人事・請求担当者:賃金制度、求人条件、給与予算、請求システムの設定変更を混同せず、正式な地域区分表が公表された際に見直す項目を一覧化する。

資料段階で予算を確定するのではなく、対象自治体と拠点の対応表を整えておくことが実務上の第一歩です。

今後の確認事項|市町村別の新級地は未確定

2026年10月29日時点では、2027年度からの市町村別の新しい級地表や個別の報酬単価は確定していません。厚生労働省が市町村の意向を改めて確認し、正式な級地や適用条件が示された段階で、拠点別の収支試算を更新する必要があります。

8月に公開した地域区分の制度と議論の背景や、第272回分科会の3論点の総覧と合わせて、本記事では自治体の回答数と経営上の具体例に重点を置いて整理しました。

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