2027年度介護報酬改定|第272回分科会の3論点――特定施設・登録施設介護支援・地域区分

2026年10月28日、社会保障審議会介護給付費分科会(第272回)が開催され、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた資料が公表されました。主な論点は、①特定施設入居者生活介護、②新たな登録施設介護支援、③介護報酬の地域区分です。あわせて、2026年度に実施した調査の速報値も議題となっています。

今回の資料は、すでに決まった新しい介護報酬を知らせるものではありません。何が法律で定められ、何が分科会で検討されている段階なのかを分けて整理します。

最初に結論|今回の「3論点」と決定状況

  • 特定施設入居者生活介護:入居者の排せつ自立に向けた支援の評価や、住宅型有料老人ホームからの移行促進などが検討対象です。
  • 登録施設介護支援:有料老人ホームの登録制と新サービスの創設は、2026年成立の法律に位置づけられています。一方、人員・運営基準や基本報酬の具体案は審議中です。
  • 地域区分:公務員の地域手当の見直しを踏まえ、介護報酬の地域差の扱い、経過措置、隣接地域との調整方法が検討されています。

いずれも、2027年度の確定した報酬単位表や各市町村の最終的な級地を示すものではありません。

1.特定施設入居者生活介護|入居者の生活をどう支えるか

特定施設入居者生活介護は、介護保険の指定を受けた有料老人ホームなどの入居者に対し、施設の計画に基づいて介護や機能訓練等を提供するサービスです。住宅型有料老人ホームが、すべてこの指定を受けているわけではありません。

10月28日の資料1では、入居者ごとの排せつ支援計画や改善に向けた取組をどう評価するか、外部サービス利用型の特定施設の評価をどう考えるか、住宅型有料老人ホームから特定施設への移行をどう促すか、利用者数が減った場合に職員配置の基準となる「前年度の平均値」をどう解釈するか、といった方向が論点となりました。

ここでいう「評価」は、入居者の改善が確認された場合にどのような報酬上の仕組みを設けるかという制度設計の議論です。現時点で、すべての特定施設に新しい加算の算定が認められたわけではありません。具体的な単位数、要件、対象施設は、今後の正式な改定資料を確認する必要があります。

2.登録施設介護支援|「法改正で創設」と「報酬の決定」は別

2026年6月19日に成立し、同月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)には、一定の要件に該当する有料老人ホームの登録制度と、入居者への相談支援を担う「登録施設介護支援」等の新設が盛り込まれました。在宅の方が利用する居宅介護支援では、ケアプランの作成に利用者負担はありません。これに対し、法律の概要では、登録施設介護支援等について「利用者負担を求める」とされており、この点が大きな違いです。ここまでは成立済みの法律の内容です。

一方、第272回の資料2(表紙は「登録施設介護支援・登録施設介護予防支援」)で扱われたのは、その仕組みを具体的に動かすための基準と報酬です。居宅介護支援と同様のケアマネジメントに加え、入居者が地域とのつながりを保つための「地域生活相談」をどう位置づけるか、介護支援専門員等の人員配置、運営の独立性、基本報酬や加算・減算の設定が検討されています。登録施設介護予防支援についても、あわせて基準が整理されています。

基本報酬については、居宅介護支援の枠組みを踏まえながら、地域生活相談を行うことや集合住宅での支援であることをどう反映するか、という対応案が示されています。また、利用者負担を求めることに伴い、利用者から利用者負担額の支払いを受けるという運営基準の案や、利用者によって負担額が異ならないよう、逓減制の適用方法を居宅介護支援とは変える案も示されています。具体的な報酬単位が確定した段階ではありません。

施行時期にも注意が必要です。厚生労働省の検討会資料(有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 第10回、2026年10月9日)では、有料老人ホームの登録制度を2027年12月に施行し、既存ホームの移行に係る経過措置を2028年12月までとする予定が示されています。また、第272回資料2は、登録施設介護支援等の施行を、その経過措置期間が終了する時期に想定しています。法律上も、登録施設介護支援等の創設に係る施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされ、法律の原則的な施行日である2027年4月1日とは別の扱いです。したがって、「登録施設介護支援が2027年4月から一斉に始まる」とは読めません。具体的な日付は、今後の政令で定められます。

なお、資料2で整理された法律上の規定では、施行の際に現に居宅介護支援の指定を受けている事業者は、別段の申出をした場合を除き、当面の間(施行日から6年を超えない範囲内で政令で定める日まで)、登録施設介護支援の指定を受けたものとみなされます。介護予防支援についても同様の整理です。

3.地域区分|同じサービスでも地域によって単価が違う理由

介護報酬は、サービスごとの単位数だけでなく、地域の人件費の違いを反映する「1単位当たりの単価」によっても実際の金額が変わります。その調整に用いられるのが地域区分です。

今回の資料3では、級地を公務員(国家公務員または地方公務員)の地域手当に準拠して設定することを原則とする案が示されました。あわせて、報酬単価の大幅な変更を緩和する経過措置も検討されています。現行の経過措置は2026年度末まで延長されており、今回の見直しでも、市町村が希望する場合に、従前の上乗せ割合と公務員の地域手当の範囲内で級地や上乗せ割合を設定できる経過措置を、2029年度末まで設ける案です。2030年度以降の扱いは、2030年度の介護報酬改定時に市町村の意見を確認するとされています。

また、隣接する市町村との級地差を調整する特例については、現行の「5級地差ルール」「4級地差ルール」を見直し、3級地以上の級地差がある地域と隣接している場合に、2級地差になるまでの範囲で級地の引き上げまたは引き下げを認める「3級地差ルール」とする案が示されています。

ただし、国家公務員の地域手当が見直されたことと、介護報酬の地域区分がそのまま同じ数の区分になることは別です。市町村ごとの新たな級地や単価は、正式な決定を待って確認する必要があります。

4.資料4の調査速報値も公表

第272回では3論点のほか、2024年度介護報酬改定の効果検証に関連する2026年度調査の速報値(案)も示されました。対象は、高齢者施設等と医療機関の連携状況や、離島・中山間地域・豪雪地帯等での加算の在り方などです。これらは制度検討の材料となる調査結果であり、速報値(案)そのものが新しい運営義務や報酬の決定を意味するものではありません。

5.管理者・ケアマネジャーが今確認したいこと

まず、特定施設の指定を受けているのか、住宅型有料老人ホームの運営なのか、または居宅介護支援事業所として関わっているのか、自分たちのサービス類型を整理することが大切です。名称が似ていても、特定施設と登録施設は同じ制度ではありません。

次に、新たな人員配置や報酬を先取りして実施済みの義務・算定要件として扱わないことです。事業所の運営計画や利用者への説明には、現行制度と審議中の対応案を分けて記録する必要があります。

そして、地域区分による収入への影響は、最終的な市町村の級地とサービス別の単価が示されてから試算することが適切です。今の段階で「来年度から何%増減する」と断定することはできません。

まとめ|制度の区分だけでなく、本人の暮らしを見る

第272回分科会の3論点は、施設で提供する介護の質、新たな高齢者住まいでの相談支援、地域ごとのサービス提供基盤という、異なる課題を扱っています。共通して問われるのは、制度や報酬の仕組みが、本人の暮らしの選択肢と支援の継続をどう支えるかという点です。

新しい制度を理解するときは、成立済みの法律、審議中の対応案、今後の告示・省令・通知による確定事項を区別することが欠かせません。福祉教育ラボでは、制度の数字だけでなく、その先にある生活の変化も見ながら続報を確認していきます。

一次資料

  1. 厚生労働省|第272回社会保障審議会介護給付費分科会 資料一覧(2026年10月28日)
  2. 厚生労働省|資料1「特定施設入居者生活介護」(2026年10月28日)
  3. 厚生労働省|資料2「登録施設介護支援」(2026年10月28日)
  4. 厚生労働省|資料3「地域区分」(2026年10月28日)
  5. 厚生労働省|資料4「【R8年度調査】検証・研究報告速報値(表紙)」(2026年10月28日)
  6. 厚生労働省|資料4-1「(1)高齢者施設等と医療機関の連携体制及び協定締結医療機関との連携状況等にかかる調査研究事業(速報値)(案)」(2026年10月28日)
  7. 厚生労働省|資料4-2「(2)離島・中山間地域・豪雪地帯等における各種加算等の在り方の調査・検証研究事業(速報値)(案)」(2026年10月28日)
  8. 厚生労働省|社会福祉法等の一部を改正する法律の概要(令和8年法律第51号)
  9. 国立国会図書館|日本法令索引(成立日・公布日・法律番号)
  10. 厚生労働省|有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第10回)資料1「登録制の施行に向けた対応について(まとめ)」(2026年10月9日)
  11. 厚生労働省|介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? - 居宅介護支援」