介護サービス受給者488.7万人、費用額は約1兆220億円|2026年7月審査分を読み解く

2026年7月審査分の介護サービス受給者数488.7万人と費用額約1兆220億円を示した解説イラスト
福祉教育ラボ作成(AI生成イラスト使用)

福祉ニュース|確認基準日:2026年11月2日|一次資料:厚生労働省(2026年10月30日公表)

2026年10月30日、厚生労働省が「介護給付費等実態統計月報(2026年7月審査分)」を公表しました。介護サービスの受給者数は488.7万人(前年同月比1.2%増)、費用額は約1兆220億円(同4.3%増)でした。受給者1人当たり費用額は約20.9万円(同3.1%増)です。

受給者数より費用額の伸びが大きいと、「介護の負担が急に重くなったのだろうか」と感じるかもしれません。しかし、この統計が示す「費用額」は本人の自己負担だけではありません。統計の定義を押さえながら、現場でどう読み取ればよいか整理します。

まず、今回の数字を確認する

指標(2026年7月審査分) 数値 前年同月比
介護サービス受給者数 488万7,200人 +1.2%
介護サービス費用額 1兆219億7,200万円 +4.3%
受給者1人当たり費用額 約20万9,100円 +3.1%
介護予防サービス受給者数 104万700人 +4.8%
介護予防サービス費用額 299億8,700万円 +7.1%

出典:厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和8年7月審査分)結果の概要」表1〜3。数値は公表表記の「千人」「百万円」「千円」を換算したものです。四捨五入により内訳と合計に差が生じる場合があります。

2026年7月審査分で受給者数が前年同月比1.2%増、費用額が4.3%増となったことを示す比較図
図1 介護サービス受給者数と費用額の前年同月比(厚生労働省)

「受給者数」と「費用額」は、同じ意味ではない

受給者数とは、審査月に介護サービスに関する保険請求があった人の数です。複数の介護サービスを利用していても、総数では名寄せして数えています。サービス種類ごとの人数を足しても、受給者の総数にはなりません。また、介護予防サービスの受給者と介護サービスの受給者を単純合算して、重複のない利用者総数とみなすこともできません。月の途中で要支援と要介護の間で状態が変わり、両方のサービスを受けた人は、介護予防・介護それぞれの総数に計上されることがあるためです。

これに対して費用額は、審査月に原審査で決定された、保険給付額・公費負担額・利用者負担額を合わせた金額です。福祉用具購入費や住宅改修費など、市区町村が直接支払う償還払いの費用は含みません。

つまり「介護サービス費用額が約1兆220億円」という数字は、国が同額を直接支出したという意味でも、利用者がその総額を自己負担したという意味でもありません。

受給者+1.2%、費用額+4.3%。なぜ差があるのか

前年同月と比べると、介護サービス受給者は482万9,400人から488万7,200人へ、約5万7,800人増えました。一方、費用額は9,796億円から1兆219億7,200万円へ増えています。

受給者1人当たり費用額も、約20万2,800円から約20万9,100円へ、3.1%増えました。ただし、1人当たり費用額は統計上の「費用額÷受給者数」であり、実際に一人ひとりへ同額が請求されるという意味ではありません。

人数以外に、利用したサービスの組み合わせ、利用回数・日数、要介護度の構成、制度や報酬の条件など、費用額に関係し得る要素は複数あります。この月報の集計値だけから「物価高だけが原因」「重度化が主因」「介護の質が向上した」などと結論づけることはできません。

受給者数は名寄せ人数、費用額は保険給付、公費負担、利用者負担の合計であることを示す解説図
図2 統計の用語を取り違えないための整理(厚生労働省資料を基に制作)

「2026年7月審査分」は、7月に利用した人数を示すとは限らない

この統計の名称にある「審査分」は、請求内容が審査された月を表します。サービス提供の翌月に審査されるのが原則で、遅れて請求されたものも含まれます。したがって「2026年7月審査分」を「2026年7月に実際に利用した人の総数」と説明するのは正確ではありません。

また、月報の488.7万人と、別の記事で紹介している年間実受給者数をそのまま比べることもできません。月ごとの受給者数と、年間を通して名寄せした実受給者数では、集計期間と数え方が異なるためです。

月報の費用額を単純に12倍して、年間の12.2兆円と比べることも適切ではありません。今回の約1兆220億円は2026年7月審査分の介護サービス費用額で、年間の12.2兆円は2025年5月〜2026年4月審査分の介護予防・介護サービス費用額の累計です。いずれも遅れて請求された分を含む原審査の集計ですが、期間と対象範囲が異なります。

関連記事:2025年度の年間統計――介護サービス費12.2兆円 / 年間利用者数の数え方

認定者数は、この月報の受給者数とも異なります。要介護・要支援認定の状況は、別の統計である「介護保険事業状況報告」で確認します。

関連記事:要介護・要支援認定者数を確認する

介護予防サービスも、受給者数・費用額が増加

介護予防サービスの受給者数は約104.1万人(前年同月比4.8%増)、費用額は約299.9億円(同7.1%増)でした。いずれも増加していますが、これだけで要支援の人の実人数が社会全体でどの程度増えたか、あるいは生活機能がどう変化したかまで断定することはできません。

この統計を、現場の支援と経営でどう生かすか

管理者・経営担当者にとっては、全国の受給者数と費用の動向を把握する入口になります。ただし、全国の増減率を自事業所の収支や利用率に直接当てはめないことが重要です。地域、サービス種別、利用者の状態像、提供体制を分けて見る必要があります。例えば、通所介護の収支状況を知りたい場合には、統計とは別の経営調査をあわせて読む必要があります。

関連記事:WAM調査――通所介護の赤字と費用増

介護職・ケアマネジャーにとっては、数字の背後にいる一人ひとりの暮らしに目を向けることが大切です。受給者数の増加は、支援を必要とする人とサービスの関係が動いている可能性を示します。しかし、必要な人が十分にサービスを利用できているか、本人の希望が尊重されているか、地域差がどうなっているかは、この集計だけでは判断できません。

福祉教育ラボの視点|統計は「人」を置き換えるものではない

統計からわかるのは、一定の定義で集計された社会の一側面です。数字を使うことは、利用者を数字で捉えきることではありません。「誰が利用できていて、誰が利用できていないのか」「必要なケアが本人の生活を支えているのか」という問いへつなげることに意味があります。

今回の月報からまず読み取れるのは、全国で介護サービスの受給者数も費用額も前年同月より増え、費用額の伸びが人数の伸びを上回ったという事実です。その原因や本人への影響を考えるには、別の統計や現場の実情と組み合わせる必要があります。

一次資料

  1. 厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和8〈2026〉年7月審査分)」(2026年10月30日公表) 厚生労働省の月報公表ページ(2026年7月審査分)
  2. 厚生労働省「結果の概要」PDF(表1〜3および注記) 厚生労働省「結果の概要」PDF(表1〜3)
  3. 政府統計の総合窓口 e-Stat「介護給付費等実態統計・月報/2026年7月審査分」 e-Stat統計表一覧(2026年7月審査分)
  4. 厚生労働省「用語の解説」

※数値は「審査月」の集計です。制度改定の確定情報や施設の経営状況を直接示すものではありません。出典の確認日:2026年11月2日。

福祉ニュース一覧へ