介護報酬の「地域区分」、2027年度改定で見直しへ|5区分化・市町村の級地は未決定

【2026年11月2日 更新】この記事は、2026年9月17日時点の公表資料に基づく「議論開始時点の記録」と、地域区分の基礎解説です。本文中の「具体案は示されていない」は9月17日時点の記述です。また、工程表や本文にある「2026年末ごろに市町村へ提示予定」は、2025年12月の第252回資料に基づく予定です。第272回の資料3では、市町村の意向を再度確認したうえで2027年度以降の地域区分を設定する案が示されており、提示時期は示されていません(提示時期の更新は2026年11月2日時点で未確認)。

その後、2026年10月28日の第272回介護給付費分科会で、厚生労働省は資料3「地域区分」により具体的な見直し案を示しました。7区分から5区分に見直された公務員(国家・地方)の地域手当への準拠を原則とし、市町村が希望する場合の経過措置を2029年度末(令和11年度末)まで設ける案、現行の5級地差・4級地差ルールを「3級地差ルール」に見直す案などです。いずれも案が示された段階で、決定ではありません。介護報酬の地域区分を5区分とすることや、市町村ごとの新しい級地・上乗せ割合はまだ決まっていません(2026年11月2日確認)。

具体案の内容は、地域区分は2027年度にどう変わる?|市町村の意向調査・経過措置・3級地差ルール案、第272回の論点全体は第272回分科会の3論点で整理しています。

福祉教育ラボ|福祉ニュース

2027年度介護報酬改定では「地域区分」の見直しが政府方針として決まっています。ただし、介護報酬の5区分化や各市町村の新しい級地はまだ決まっていません。

最初に結論|いま議論しているのは「見直すか」ではなく「どう見直すか」

政府は、介護・障害福祉・保育の地域区分について、隣接する市町村との級地格差が人材確保へ与える影響も踏まえ、 次期報酬改定までに必要な見直しを行う 方針をすでに示しています。 [4]

一方、「介護報酬を5区分にする」「この市は○級地になる」といった具体的な内容は未決定です。

2026年9月17日時点では、見直しの方向は決まっているものの、その制度設計を議論している段階です。

まず「どこまで決まっているのか」を整理
決まっている

2027年度改定までに、地域区分について必要な見直しを行う。

国家公務員の地域手当は7区分から5区分へ再編。

いま議論中

公務員地域手当の変更を介護報酬へどう反映するか。

人材確保、隣接自治体との格差、経過措置をどう扱うか。

物価・経済事情や中山間地域の提供コストを、どの制度で評価するか。

まだ未決定

介護報酬を5区分にするか。

各市町村が何級地になるか。

新しい上乗せ割合・経過措置。

そもそも、介護報酬の「地域区分」とは

同じ介護サービスを、同じ単位数だけ提供しても、事業所の所在地によって実際の介護報酬額が異なることがあります。

その理由の一つが、 「地域区分」 です。

介護サービスを提供するために必要な人件費には地域差があります。 その差を介護報酬へ反映するため、地域ごとに上乗せ割合が設定されています。 [1]

現在の2024~2026年度介護報酬では、 1級地~7級地+「その他」 の8区分です。

現在の介護報酬の地域区分
1級地 20%
2級地 16%
3級地 15%
4級地 12%
5級地 10%
6級地 6%
7級地 3%
その他 0%
現在の介護報酬の区分です。2027年度以降の区分ではありません。

地域区分が違うと、なぜ介護報酬が変わるのか

介護報酬は、サービスごとに定められた単位数に、地域・サービスごとに設定される「1単位の単価」を掛けて計算します。

介護報酬の基本的な考え方
サービスの単位数
×
地域・サービスごとの
1単位単価
=
介護報酬額
地域区分の上乗せ割合が、そのまま報酬へ加算されるわけではありません。 サービスごとに人件費割合70%・55%・45%の3類型が設定されています。

例えば、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援など、人件費割合70%のサービスでは、1単位単価は次のようになります。 [1]

1級地 11.40円
4級地 10.84円
7級地 10.21円
その他 10.00円

同じ1,000単位のサービスでも、単純計算では1級地なら11,400円、その他地域なら10,000円となります。

地域区分は、利用者の自己負担にも関係します

介護サービス費の1割、2割または3割は利用者の自己負担です。 そのため、1単位単価が変われば、同じ単位数のサービスを利用していても、利用者の自己負担額が変わる可能性があります。 [1]

地域区分は「事業所の収入」だけでなく、「利用者がいくら負担するか」にも関係する制度です。

なぜ今、地域区分を見直すのか

大きなきっかけは、2024年8月の人事院勧告です。

国家公務員の地域手当は、従来の市町村単位を中心とした設定から、 都道府県単位を基本 とする、より広域的な仕組みへ見直されました。 [3]

さらに、級地区分も7区分から5区分へ再編されています。

国家公務員の地域手当は「7区分 → 5区分」へ
見直し前|7区分
20% 16% 15% 12% 10% 6% 3%
→
見直し後|5区分
20% 16% 12% 8% 4%
これは公務員の地域手当です。介護報酬の地域区分が5区分になると決まったわけではありません。

なぜ「公務員が5区分なら介護も5区分」で済まないのか

現在の介護報酬と、新しい公務員の地域手当を並べると、その理由が見えてきます。

現在の介護報酬と、見直し後の国家公務員地域手当の比較
比較 現在の介護報酬 見直し後の国家公務員地域手当
区分数 8区分 5区分
1段階目 20% 20%
2段階目 16% 16%
中間帯 15%・12%・10%・6%・3% 12%・8%・4%
その他 0%区分あり 支給対象外の地域あり

ただし、現在の介護報酬の「3級地」と、新しい公務員制度の「3級地」が同じ自治体を意味するわけではありません。

この表から分かるのは、単純に「介護の3級地15%が12%になる」ということではなく、 区分数も中間帯の割合も対象地域も異なるため、公務員の新制度をそのまま介護報酬へ移すことはできない ということです。

地方公務員は、さらに自治体ごとの差が広がる可能性

介護報酬が参考にしてきたのは、国家公務員の地域手当だけではありません。

地方公務員の地域手当も対象です。

地方公務員についても同様の見直しが進んでいますが、2025年度から、国の基準を超える地域手当を設定した自治体への 特別交付税の減額措置が廃止 されました。 [2]

厚生労働省は、この変更によって、国家公務員とは異なる独自の支給割合を設定する自治体が増える可能性があるとしています。

資料では、すでに 90市町村 が、国家公務員の地域手当や総務省から示された支給割合とは異なる独自の支給割合を設定しているとされています。 [2]

つまり今回の地域区分見直しは、「国家公務員の5区分を介護へ移す」というだけの問題ではありません。

国家公務員、地方公務員、市町村ごとの賃金事情、隣接自治体との格差、介護人材の確保を、どのように一つの制度へ落とし込むかが問われています。

介護人材の中長期的な需給については、 「介護職員は2040年に272万人必要|人手不足を『人数』だけで考えてはいけない理由」 でも整理しています。

経過措置や特例は、実際に多くの自治体で使われている

介護報酬には、級地が変わったときの急激な報酬変動を避けるための経過措置があります。

また、隣接自治体との関係で公平性を欠く場合などには、

  • 完全囲まれルール
  • 4級地差ルール
  • 複数隣接ルール
  • 5級地差ルール
  • 広域連合ルール
  • 他制度との均衡ルール

といった特例も設けられています。 [1]

1,544 公務員の地域手当に
準拠する自治体
80 経過措置を
適用する自治体
35 2024年度改定で
級地を引上げ
3 2024年度改定で
級地を引下げ

これは令和6年4月1日時点の状況です。 2024年度介護報酬改定では、合計38自治体で級地変更があり、35自治体が引上げ、3自治体が引下げでした。 [1]

経過措置や特例は、ごく一部だけの例外的な仕組みではありません。

公務員の地域手当を原則にしながら、地域事情に合わせて調整することも、現在の地域区分の重要な仕組みです。

現在の経過措置は「2026年度末」まで

現在の地域区分に関する経過措置は、 2026年度末まで 延長されています。 [1]

時間軸で見ると、

2027年3月31日 現在の経過措置の期限
↓
2027年4月 2027年度介護報酬改定

となります。

そのため2027年度改定では、「新しい級地をどうするか」だけでなく、級地が大きく変わる自治体にどのような移行措置を設けるかも重要になります。

しかも、公務員側もまだ移行の途中

国家公務員の新しい地域手当は、2025年度から段階的に支給割合の引上げ・引下げが進められています。

完全施行は2028年度以降です。 [2]

つまり、2027年4月の介護報酬改定を迎える時点でも、公務員側は新制度への移行途中です。

今回の改定は、 「完成した公務員制度を介護が後からコピーする」 という単純な関係ではありません。

公務員制度自体も動いている途中で、介護報酬側の制度を設計することになります。

実は、2015年度改定でも似た流れがあった

公務員の地域手当が見直され、その後の介護報酬改定で地域区分を見直すという流れには前例があります。

2014年の人事院勧告で国家公務員の地域手当が見直され、その後の2015年度介護報酬改定では、国家公務員または地方公務員の地域手当に準拠する形で、現在につながる8区分へ地域区分が再編されました。 [1]

ただし、今回も同じ結論になるという意味ではありません。

今回は都道府県単位への広域化、5区分化、地方自治体の独自設定、人材確保への影響など、前回とは条件が異なります。

「財政中立」という条件もある

人材不足が深刻だからといって、すべての地域区分を単純に高くすればよい、という制度でもありません。

令和6年度介護報酬改定の審議報告では、地域差を報酬へ反映する費用の範囲について、 財政中立を原則として そのあり方を検討する考え方が示されています。 [1]

これは、「どこかを上げれば必ず同額を別の自治体から下げる」という単純な意味ではありません。

ただし、地域区分だけを一律に上げれば終わる話ではなく、限られた介護報酬全体の中で、何をどこまで地域差として反映するのかを考える必要があります。

政府は「必要な見直しを行う」とすでに決めている

ここが今回の記事で最も重要な現在地です。

2025年6月13日に閣議決定された 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」では、 介護・障害福祉・保育の地域区分について、隣接する市町村等との級地格差による人材確保への影響も踏まえ、 次期報酬改定までに必要な見直しを実施する 方針が示されています。 [4]

したがって現在は、

「地域区分を見直すのかどうか」

を議論しているのではありません。

「どのような地域区分へ見直すのか」

を議論している段階です。

なお、地域区分以外にも、2027年度介護報酬改定では処遇改善、生産性向上、虐待防止、BCP、ハラスメント対策などが並行して議論されています。 全体像は 「2027年度介護報酬改定の5論点」 で整理しています。

2027年度改定までの工程

厚生労働省は2025年12月の第252回介護給付費分科会で、2027年度地域区分の検討スケジュールを示しました。 [2]

2026年
2~3月
市町村への意向調査 2027年度以降の地域区分に関する意向や、各市町村における公務員地域手当の支給割合などを調査する予定が示されました。
2026年度 介護給付費分科会で議論 2027年度介護報酬改定に向けて、地域区分の具体的な制度設計を検討します。
2026年
年末頃
2027年度からの地域区分を市町村へ提示予定 各市町村の新しい級地が具体化していく大きな節目になると考えられます。
2027年
4月
2027年度介護報酬改定 新しい地域区分の運用開始が予定される時期です。

なお、2026年9月17日時点で、今回確認した公表資料からは、市町村意向調査の結果そのものまでは確認できませんでした。

2026年11月2日 追記:上の工程のうち、市町村への意向調査(2026年2月)の結果は、第272回介護給付費分科会(2026年10月28日)の資料3で公表されました。回答の内訳や、市町村の意向を再度確認したうえで地域区分を設定するとした対応案は、後続記事で扱っています。第272回 資料3「地域区分」(PDF)

9月17日時点でも、具体的な級地案はまだ出ていない

2026年8月5日の第262回介護給付費分科会では、「地域区分」が2027年度介護報酬改定の議題として取り上げられました。 [1]

厚生労働省は、現在の地域区分、公務員の地域手当、経過措置・特例、政府方針などを整理したうえで、2027年度改定に向けた対応を論点として示しています。

その後、第265回から第267回までは、関係団体等との意見交換会が行われました。 ただし、2026年9月17日時点でも、

  • 介護報酬を何区分にするのか
  • 各市町村を何級地とするのか
  • 新しい上乗せ割合をどうするのか
  • どのような経過措置や特例を設けるのか

といった具体案は示されていません。

つまり現在も、 「介護報酬の地域区分が5区分になることが決まった」段階ではありません。

第265回、第266回、第267回はいずれも関係団体等との意見交換会であり、新しい地域区分を決定した会議ではありません。 [5]

一方で、関係団体や自治体から具体的な意見が出てきたことで、議論は「何級地になるのか」だけでなく、 「何を地域差として評価するのか」 というところまで広がり始めています。

9月14日|事業者団体から「地域区分の決め方」への要望

9月14日の第266回介護給付費分科会では、全国介護事業者連盟が、サービス横断的な5つの要望の一つとして地域区分を取り上げました。

要望は、 「地域区分の見直しにおける考え方の整理と決定プロセスの明確化」 です。 [6]

同連盟は、地域区分の見直しによって区分が引き下げられる地域では、物価高のなかで介護事業者への影響が大きくなるとして、 公務員の地域手当を原則としつつ、地域の物価動向や経済事情にもきめ細かく配慮するよう求めています。

あわせて、地域区分をどのような考え方と手続きで決定するのか、そのプロセスを明確にすることも要望しています。

ここは厚生労働省が示した新しい制度案ではありません。全国介護事業者連盟から出された意見・要望です。

現在の介護報酬の地域区分は、主として地域の人件費差を調整する仕組みです。 級地の設定も、公務員の地域手当に原則として準拠しています。 [1]

そのため今回の要望は、 「地域による介護事業の違いを、人件費だけで捉えてよいのか」 という問いにもつながります。

「物価も入れればよい」と単純には整理できない

この問いを考えるうえで参考になるのが、令和6年度介護報酬改定の検討資料です。

厚生労働省は、令和5年度介護事業経営実態調査を使い、人件費以外の費用についても級地ごとの状況を整理しています。

その結果、派遣委託費については、級地別に見ても 「必ずしも地域ごとの有意差は見られない」 と整理されています。

日用品費等や減価償却費についても、必ずしも級地に比例せず、地域ごとの有意性は見られないとされています。

一方、土地・建物・建物附属設備の賃借料については、必ずしも級地に比例しているわけではないものの、 サービスによっては級地が高いほど比較的高い値となる傾向も確認されています。 [7]

つまり、人件費以外のコストについては、 「都市部ほど必ず高い」とも、「地域差はない」とも一律には整理できません。 費目やサービスによって状況が異なっています。

そのため、 「物価や事業運営コストも地域区分へ入れれば、地域差をより正確に評価できる」 と単純に結論づけることはできません。

全国介護事業者連盟からは物価や経済事情への配慮を求める意見が出ていますが、 具体的にどの費用を、どの仕組みで評価するのかは別の検討が必要になります。

9月16日|中山間地域から見える「賃金だけではない地域差」

さらに9月16日の第267回介護給付費分科会では、中山間・人口減少地域をテーマとして、島根県をはじめ複数の自治体・事業者から資料が提出されました。 [5]

島根県は資料8「中山間・人口減少地域における介護サービス提供の現状と課題」で、地域における介護サービス維持の実態を示しています。 [8]

島根県の「介護・障がい福祉人材の確保・定着に関する実態調査」では、求人に対して採用できた人数の割合である充足率は、

  • 令和元年:71.5%
  • 令和4年:64.2%
  • 令和7年:58.1%

と低下しています。なお、この調査は介護だけではなく、 「介護・障がい福祉人材」 を対象としたものです。 [8]

また、訪問介護事業所については、令和7年4月1日時点で217事業所あり、その後、令和7年度中に16事業所が廃止しました。

このうち11事業所は、人員確保が困難であることを理由としていました。 また、16事業所のうち3事業所は、人員基準を緩和した基準該当サービスへ移行しています。 [8]

ただし、この数字から 「地域区分が低いから訪問介護事業所が廃止した」 と結論づけることはできません。

島根県資料が示しているのは、もう少し広い地域構造の問題です。

中山間地域では住家が広い範囲に点在しているため、訪問介護では1日に多くの利用者を効率的に訪問することが難しくなります。

島根県の調査では、中山間地域の訪問介護事業所のうち、1日平均の訪問回数が10回未満の事業所は38%でした。 その他地域では18%です。

さらに島根県は、特別地域加算の有無にかかわらず赤字となっている事業所が多いことも示しています。 [8]

介護人材不足そのものの構造については、 「介護職の人手不足はなぜ続く?|離職率12.4%・不足感65.8%から採用と定着を考える」 でも整理しています。

通所介護では、別の制度上の課題もある

訪問介護だけではありません。

島根県は、通所介護でも送迎コストが経営上の負担になっていると指摘しています。

ここで重要なのは、訪問介護などには一定の地域を対象とした特別地域加算がありますが、 通所介護には同様の特別地域加算がない ことです。

そのため、中山間地域で送迎距離が長くなっても、そのコストを同じ仕組みで評価することはできません。 [8]

県内では実際に、遠距離の訪問や送迎について、市町村が独自の支援を行っている例もあります。 島根県資料では、雲南広域連合、出雲市、大田市、隠岐の島町などによる距離に応じた独自支援が紹介されています。 [8]

こうした事例を見ると、地域による介護サービス提供条件の違いは、「そこで働く人の賃金水準」だけでは説明しきれません。

利用者がどの程度の密度で暮らしているのか。1日に何件訪問できるのか。どれだけの距離を移動する必要があるのか。 送迎や移動にどの程度の時間と費用がかかるのか。

こうした条件も、地域で介護サービスを維持するためのコストに関係しています。

島根県自身も、中山間地域では 「住家が散在しており、訪問・送迎に係るコストを適切に評価することが必要」 と整理しています。 [8]

地域区分だけですべてを解決する問題ではない

ここで、もう一つ大切な点があります。

島根県は、介護報酬ですべての地域課題に対応するよう求めているわけではありません。

資料のまとめでは、 「介護報酬での対応が難しい課題については、地域医療介護総合確保基金などでの手当てが必要」 としています。 [8]

地域で介護サービスを維持するための課題には、人件費の地域差、物価、移動・送迎コスト、利用者密度、人材確保、人口減少など、 性質の異なる問題があります。

それらをすべて「地域区分」という一つの制度に入れればよいとは限りません。

  • 地域区分で評価するもの
  • 特別地域加算などで評価するもの
  • 別の報酬制度で評価するもの
  • 基金や自治体施策で支えるもの

それぞれをどう組み合わせるのか、という制度設計の問題になります。

地域区分の議論は「何級地か」から「何を地域差と考えるか」へ

2027年度の地域区分見直しには、少なくとも二つの問いがあります。

一つは、「自分の市町村が何級地になるのか」。

そしてもう一つは、「何を根拠に、その地域をその級地にするのか」。

現在の地域区分は、人件費の地域差を調整することを基本としています。

一方で、今回の意見交換では、物価や経済事情への配慮を求める事業者団体の意見や、 中山間地域における移動・送迎コストなど、異なる種類の「地域差」も見えてきました。

現時点では、これらを2027年度改定でどのように扱うのかは決まっていません。

だからこそ今後は、最終的な級地表だけでなく、 「どの地域差を、どの制度で評価することになったのか」 まで確認していく必要があります。

地域区分は「誰にとっての公平か」という問題でもある

ここまで制度を見ていくと、地域区分が単なる計算式ではないことが分かります。

事業所 報酬単価と事業継続
働く人 人材確保・賃金条件
利用者 自己負担とサービス利用
地域 介護サービス基盤の維持

地域区分を高く設定すれば、事業所の収入条件は改善し、人材確保にもプラスに働く可能性があります。

一方で、利用者負担が増える可能性があります。

市町村単位で細かく設定すれば、その地域の賃金水準を反映しやすくなる一方、隣接自治体との級地差が人材移動につながるかもしれません。

都道府県単位で広く設定すれば隣接自治体との格差は縮小しますが、同じ県内でも都市部と地方部の賃金水準は同じではありません。

どの方法にも、メリットと課題があります。

福祉教育ラボの視点

「何級地になるか」だけでなく、その決め方を見たい

地域区分の議論で大切なのは、自分の市町村が上がるのか下がるのかだけではありません。

なぜ、その級地になるのか。

その結果、誰にどのような影響が出るのか。

急激な変化を和らげる仕組みはあるのか。

そして、その地域で介護を必要とする人が、これからも必要なサービスを利用し続けられるのか。

地域区分は、人件費の地域差を調整する制度であると同時に、 「地域で介護を続けられる条件をどうつくるか」 を考える制度でもあります。

なぜ介護職にも知っておいてほしいのか

地域区分というと、経営者や管理者、事務担当者だけが知っていればよい制度に見えるかもしれません。

しかし、地域区分が変われば、

  • 事業所収入
  • 職員採用
  • 人件費
  • 人員配置
  • サービス提供地域
  • 事業継続
  • 利用者負担

に影響する可能性があります。

そして事業所が地域でサービスを継続できるかどうかは、そのまま「必要な人が介護サービスを受けられるか」という問題につながります。

地域区分は「1単位が何円になるのか」という計算であると同時に、地域の介護基盤をどう維持するかという制度でもあります。

まとめ|「見直すか」ではなく「どう見直すか」の段階へ

2027年度介護報酬改定では、地域区分について必要な見直しを行うことが政府方針としてすでに決まっています。

一方、2026年9月17日時点では、

  • 介護報酬を5区分にするのか
  • 各市町村が何級地になるのか
  • 新しい上乗せ割合をどうするのか
  • どのような経過措置・特例を設けるのか

といった具体的な制度設計はまだ決まっていません。

国家公務員の地域手当は7区分から5区分へ変わりましたが、その5区分を介護報酬へそのまま移すことはできません。

現在の介護報酬とは級地構成も割合も異なります。 地方公務員では独自の地域手当を設定する自治体もあります。 経過措置や特例も実際に多く使われています。

9月14日の意見交換会では、全国介護事業者連盟から、物価動向や経済事情への配慮と決定プロセスの明確化を求める要望が出ました。 [6]

9月16日には、島根県から、中山間地域では訪問・送迎に伴うコストや人材確保など、人件費だけでは捉えにくい地域課題も示されました。 [8]

さらに、事業所収入、人材確保、利用者負担、財政、地域のサービス基盤を同時に考え、 「どの地域差を、どの制度で評価するのか」 まで見ていく必要があります。

だからこそ、これから見るべきなのは、 「5区分になるのか」だけではありません。

2027年度からの地域区分を、誰にとって、何を基準に、どのような移行措置を設けながら組み直すのか。

厚生労働省は、2026年末ごろに市町村へ2027年度からの地域区分を提示する予定を示しています。 [2]

福祉教育ラボでも、具体的な地域区分案、市町村別の級地、上乗せ割合、経過措置などが公表された段階で、決まったことと議論中のことを分けながら更新していきます。

一次資料

本記事は、2026年9月17日時点で公表されている一次資料をもとに整理しています。

  1. 厚生労働省|第262回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3「地域区分」 現在の地域区分、1単位単価、経過措置・特例の適用状況、公務員地域手当の見直し、2027年度改定の論点を確認できます。 資料3「地域区分」(PDF)を確認する 第262回分科会の資料一覧を確認する
  2. 厚生労働省|第252回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2「地域区分について(報告)」 市町村意向調査、2026年末頃までの工程、地方公務員の地域手当、独自の支給割合を設定する自治体などを確認できます。 資料2「地域区分について(報告)」を確認する
  3. 人事院|令和6年 人事院勧告・報告 国家公務員の地域手当について、都道府県単位を基本とする広域化、7区分から5区分への再編、見直し後の支給割合(20%・16%・12%・8%・4%)を確認できます。 令和6年人事院勧告・報告を確認する
  4. 内閣官房|新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版 隣接市町村等との級地格差による人材確保への影響を踏まえ、次期報酬改定までに地域区分について必要な見直しを行う政府方針を確認できます。 2025年改訂版(PDF)を確認する
  5. 厚生労働省|社会保障審議会 介護給付費分科会 第262回以降を含む、2027年度介護報酬改定の最新の審議状況を確認できます。 介護給付費分科会一覧を確認する
  6. 厚生労働省|第266回社会保障審議会介護給付費分科会 資料12(全国介護事業者連盟) 地域区分の見直しについて、公務員の地域手当を原則としつつ、物価動向や経済事情への配慮、決定プロセスの明確化を求める団体要望を確認できます。 第266回 資料12(PDF)を確認する
  7. 厚生労働省|第233回社会保障審議会介護給付費分科会(2023年11月30日)資料4「その他【外国人介護人材・地域の特性に応じたサービスの確保・介護現場における安全性の確保・地域区分】(改定の方向性)」 地域区分の論点・対応案(87ページ)と、令和5年度介護事業経営実態調査による派遣委託費、日用品費等、減価償却費、土地・建物等の賃借料の級地別の費用状況(89〜92ページ)を確認できます。(2026年11月2日訂正:掲載当初は資料名を「第224回 資料6『地域区分』」と記載していましたが、リンク先および上記の内容は第233回資料4です) 第233回 資料4(PDF)を確認する 第233回分科会の資料一覧を確認する
  8. 厚生労働省|第267回社会保障審議会介護給付費分科会 資料8(島根県) 中山間・人口減少地域の介護サービス提供、人材確保、訪問回数、訪問・送迎コスト、特別地域加算、自治体独自支援などを確認できます。 第267回 資料8(PDF)を確認する
注意:2027年度介護報酬改定までに地域区分について必要な見直しを行うことは政府方針として示されていますが、2026年9月17日時点で、介護報酬の区分数、市町村別の新級地、新しい上乗せ割合、新たな経過措置などは決定されていません。

2026年11月2日 追加した一次資料・関連記事