デイサービスで「入浴だけ」の短時間利用を認める案|2027年度介護報酬改定

福祉ニュース資料確認:2026年10月15日
2026年10月15日時点:まだ検討案です。全国すべてのデイサービスで入浴だけの短時間利用が認められたわけではありません。具体的な提供時間や報酬区分も決定していません。
先に押さえたいポイント
  • 対象は中山間地域等で入浴介助を目的とした介護サービス事業者が存在しない地域などを要件とする例外案です。
  • 回答1,555事業所の46.8%が短時間入浴だけの問い合わせ・相談があると回答しました。
  • 入浴介助加算(Ⅱ)のICT活用は既存の限定条件を広げる検討であり、新設ではありません。

福祉教育ラボ|福祉ニュース|2026年10月15日時点の審議資料に基づく

最初に結論――全国のデイサービスで「入浴だけ」が解禁されたわけではない

2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会で、通所介護などにおける「入浴介助を目的とした短時間サービス」が議論されました。厚生労働省が示した対応案は、中山間地域等で入浴介助を担う介護サービス事業者が存在しない地域など、限定された条件を想定し、例外的に通所介護等で入浴を目的とするサービスを認めることを検討するものです。

まだ令和9(2027)年度の報酬改定内容として決定したわけではありません。「全国どこでも入浴だけのデイサービス利用ができるようになる」と読むことはできません。

1.なぜ「入浴だけ」を利用したい人がいるのか

高齢者にとって入浴は、身体を清潔に保つことだけを意味しません。疲れを和らげ、生活習慣を保ち、本人らしい毎日を送る行為でもあります。一方、自宅の浴室に段差がある、浴槽をまたげない、家族が介助できないなどの事情があると、希望していても安全な入浴が難しくなります。

訪問介護や訪問入浴介護、デイサービスでの入浴支援などが選択肢になりますが、地域によって利用できる事業所の数は異なります。特に中山間地域や離島、農村地域では、必要なサービスが近くにないという課題が生じます。

2.調査では46.8%の事業所に短時間入浴の相談

第270回分科会の資料1(8~9ページ)に示された令和8年度老健事業の速報値によると、回答した1,555事業所の46.8%に、短時間で入浴だけを利用したいという「問い合わせや相談がある」との回答がありました。「相談がない」は39.2%、「わからない」は10.0%、「無回答」は4.1%です。

また、「問い合わせや相談がある」と回答した728事業所に理由を尋ねた結果(複数回答)、自宅の入浴設備では安全に入浴できないためが77.6%、自宅で家族などから介助を受けられないためが67.9%、入浴介助以外の通所介護サービスを必要としていないためが59.3%でした。「地域に訪問介護・訪問入浴介護等の入浴介助サービスが不足しているため」は10.4%、「通所介護にかかる金銭的負担を少しでも抑えたいため」は28.4%でした。

地域別に見ると、「地域に入浴介助サービスが不足しているため」を理由に挙げた割合は、中山間地域等・離島で24.1%(54事業所のうち13事業所)、その他の農村地域で15.2%、住宅地で8.3%、都市地域・市街地で7.5%でした(資料1・9ページ)。ただし、地域ごとに回答事業所数は異なり、中山間地域等・離島の54事業所という母数は小さいため、速報値の解釈には注意が必要です。

46.8%は「全利用者の46.8%が入浴だけを希望する」という数字ではありません。また10.4%は「全国の地域の10.4%にサービスがない」という意味ではなく、相談があった事業所の回答理由の割合です。

3.現行の短時間利用はどう扱われているのか

現行の算定基準の留意事項通知(平成12年老企第36号)では、通所介護の2時間以上3時間未満の利用について、単に入浴サービスのみといった利用は適当ではないとされています(資料1・14ページおよび71ページ参照)。2時間以上3時間未満の利用は、利用者側のやむを得ない事情で長時間利用が困難な人を対象とする扱いです。したがって、いまの制度のもとで希望すれば誰でも「入浴のみ・短時間」で介護保険給付を利用できるわけではありません。

他方、入浴介助が必要な人にとって、訪問系のサービスが地域に存在しなければ、支援を受ける選択肢自体が狭くなります。この既存の制度目的と生活上の必要性との間に、今回の検討課題があります。

4.厚労省の対応案――社会資源が足りない地域の例外として

今回の検討は、令和8年地方分権改革に関する自治体提案を背景としています。訪問入浴介護事業所が減少傾向にある中山間地域等で、訪問入浴介護の代わりに通所介護で短時間の入浴支援を受けられるよう明確化してほしい、という問題提起です(資料1・14ページ、71ページ)。

厚労省が示した対応案(資料1・15ページ)は、「中山間地域等の入浴介助を目的とした介護サービス事業者が存在しない地域であること等を要件に、例外的に通所介護等において、入浴介助を目的とするサービスを認めることを検討してはどうか」というものです。

ここで大切なのは、対象地域・要件を限定した例外措置として提案されている点です。適用地域をどのように判定するのか、実際のサービス提供時間や報酬の扱いをどうするのか、どのような確認手続きが必要かなど、詳細は今後の資料を確認する必要があります。なお、資料1・15ページの対応案本文には、具体的な提供時間や報酬区分は示されていません。

5.入浴介助加算の見直しは別の論点

同じ資料では、入浴介助加算の見直しも提案されています。令和8年度調査の速報値では、加算の算定課題として「水道光熱費等の物価高騰に対し報酬が少ない」が57.2%、「算定要件の負担に対し報酬が少ない」が53.7%でした(回答1,301事業所)。

入浴介助加算(Ⅱ)の居宅訪問については、現行制度でも、医師等の訪問が困難な場合に限り、医師等の指示の下で介護職員が居宅を訪問し、情報通信機器等を活用して浴室環境を把握する方法が認められています(令和6年度改定、資料1・70ページ)。今回の対応案は、この方法を「医師等の訪問が困難な場合」に限定せず認めることを検討するものです。加算の単価設定を見直すことも別途提案されています(資料1・15ページ)。

これは「入浴だけの短時間利用を例外的に認めるか」という論点とは別です。入浴介助の質やアセスメント、事業所の費用負担をどう評価するかという問題として理解する必要があります。

6.ケアマネジャーと管理者が確認したいこと

ケアマネジャーは、本人の希望、自宅の浴室環境、身体状態や転倒リスク、家族の介助状況を確認し、訪問介護・訪問入浴介護・通所介護など、利用できる選択肢を検討します。今回の対応案を、すでに利用可能になったサービスとして説明しないことが重要です。

事業所管理者は、地域の不足サービスの実態、送迎に必要な時間と職員数、入浴前後の体調確認、緊急時の対応、費用や契約上の説明などを整理しておく必要があります。短時間であっても、送迎や準備、身体状況の確認、安全確保が不要になるわけではありません。

7.福祉教育ラボの視点――入浴できない理由は、本人だけにあるのか

「自宅で入浴できない」という言葉を聞いたとき、私たちは本人の身体機能に目を向けがちです。しかし、同じ身体状況でも、浴室の構造、福祉用具、介助者の有無、地域の介護サービスによって、できることは変わります。

入浴が難しいのは、本人の能力だけの問題なのでしょうか。支援が届かないことや、地域に選択肢がないことも、生活を制限する要因になっていないでしょうか。

ただし、今回の例外案が直接対応しようとしているのは、主に地域に入浴支援サービスが不足している場合です。調査では、自宅の浴室設備や家族による介助が難しいといった理由の回答も多く、今回の例外案だけでは対応しきれない生活課題が残る可能性があります。これは公表資料の数値を踏まえた福祉教育ラボの考察です。

今回の案には、こうした問いが重なります。本人が望む入浴方法や頻度を確認し、選べる可能性を支えること。そのためには、報酬制度だけでなく、地域のサービス供給体制にも目を向ける必要があります。

また、入浴は清潔保持だけではありません。温かい湯につかる楽しみ、これまで続けてきた生活習慣、人に見られず安心して過ごせることなど、本人にとっての意味はさまざまです。制度の見直しが、単に「短時間で効率よく入浴させること」へ向かうのではなく、本人の希望や尊厳に応える選択肢につながるかを見ていきたいところです。

8.今後の確認事項

今後の介護報酬改定では、例外措置の対象地域と確認方法、対象サービス、必要な提供時間、算定要件や報酬、既存の訪問入浴介護・訪問介護との役割分担、送迎や安全管理の扱いなどを確認する必要があります。現時点でこれらの詳細がすべて確定したわけではありません。

まとめ

2026年10月14日の介護給付費分科会では、入浴介助を担う事業者が存在しない中山間地域等を念頭に、通所介護等で入浴を目的とした短時間サービスを例外的に認める案が示されました。調査では、回答した1,555事業所の46.8%が入浴だけの短時間利用について相談を受けていました。一方、導入の具体的な条件や報酬はまだ決まっていません。

この議論が問いかけているのは、デイサービスを短く使えるかということだけではありません。住む地域や家庭の事情によって、当たり前の入浴をあきらめなければならない状況を、制度としてどう減らしていくのかということです。

一次資料

  1. 厚生労働省「第270回社会保障審議会介護給付費分科会」(2026年10月14日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76633.html
  2. 厚生労働省「第270回介護給付費分科会 議事次第」(PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001758877.pdf
  3. 厚生労働省「資料1 通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護」(PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001759344.pdf
    • 8~9ページ:短時間入浴利用のニーズ調査
    • 10ページ:令和8年度老健事業の速報値による入浴介助加算の課題
    • 11~12ページ:令和7年度老健事業報告書の再掲
    • 14~15ページ:地方分権改革提案を背景とする論点と対応案
    • 70~71ページ:入浴介助加算(Ⅱ)の現行取扱い、留意事項通知(老企第36号)等

※本稿は2026年10月15日に確認した第270回分科会資料に基づいて作成しています。記載した対応案は2027年度改定に向けた審議中の内容であり、施行が決定したものではありません。