通所リハの目標は「筋力」だけではない|2027年度介護報酬改定で「活動・参加」の明確化を検討

制度・ニュースメモ2026年10月14日 第270回介護給付費分科会/2027年度改定に向けた検討案

たとえば、「10メートル歩けるようになった」というリハビリテーションの成果があったとします。では、本人が本当に望んでいたことが「近所の店まで買い物に行くこと」だったら、どうでしょうか。歩ける距離だけでは、外出先の段差や荷物、休憩場所、交通手段といった生活上の課題は分かりません。

2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会では、通所リハビリテーション(デイケア)のリハビリテーションマネジメント加算について、居宅での「活動・参加」の状態と目標をより具体的に扱う対応案が示されました。今回の案は決定・施行された制度ではありません。

まず結論
  • 今回の対応案は、会議で居宅における活動・参加の状態を共有し、活動・参加の目標と、それに基づくADL・IADL訓練等を含む計画を設定することを明確にするものです。
  • 会議の開催、計画の評価・見直し、居宅訪問などは現行のリハビリテーションマネジメント加算にも既に位置付けられています。
  • 生活行為向上リハビリテーション実施加算については、専用計画を別に作らず、通所リハ計画内に生活行為を記載する案です。
  • いずれも2027年度介護報酬改定に向けた検討段階であり、正式な算定要件・施行日は今後の確認が必要です。

1.通所リハは何を支えるサービスか

通所リハビリテーションは、医師の指示などに基づき、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等が関わり、心身機能の維持・回復と日常生活の自立を支える介護保険サービスです。通所介護(デイサービス)と同一の制度ではありません。

歩行訓練や筋力の維持は重要ですが、それ自体が最終目的とは限りません。トイレに行く、料理を続ける、外へ出る、家族や地域の人と関わるなど、何を可能にしたいのかを本人とともに考える必要があります。

2.ICFの心身機能・活動・参加

世界保健機関(WHO)のICF(国際生活機能分類)は、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子などの関係から生活機能を捉えます。筋力は心身機能、買い物や階段の上り下りは活動、地域の催しに参加して役割を担うことは参加の視点から考えられます。

ただし、実際の暮らしでは活動と参加は重なり合います。買い物は移動や購買という生活行為であると同時に、地域との関係や本人の役割にもつながり得ます。

3.調査から見える課題――筋力・歩行訓練への偏り

厚生労働省の資料3では、通所リハビリテーションの計画・実施内容について、リハビリテーションマネジメント加算を算定しているかどうかにかかわらず、筋力増強訓練と歩行訓練が多く、ADL訓練・IADL訓練は一部にとどまると整理されています(資料3・10~11、16ページ)。

リハビリテーションマネジメント加算事業所ベースの算定率利用者ベースの算定率
(イ)14.6%7.8%
(ロ)39.0%32.5%
(ハ)10.5%11.1%

数値は厚労省資料3に掲載された集計です(資料3・9、16ページ。令和7年11月審査分)。これは各区分の算定状況であり、算定率だけでリハビリテーションの質や有効性を評価できるわけではありません。

4.現行のリハビリテーションマネジメント加算

現行のリハビリテーションマネジメント加算でも、リハビリテーション会議の開催、計画の進捗に関する定期的評価と必要に応じた見直し、リハビリテーション専門職による居宅訪問などが要件に含まれます(資料3・8ページ)。今回の提案によって、会議や計画評価が初めて導入されるわけではありません。

現行制度と今回の案を混同しない従来から行われている「会議・評価・居宅訪問」と、今回の対応案で明確にする「居宅の活動・参加の状態共有/活動・参加の目標設定/目標達成状況の会議での報告」は分けて理解する必要があります。

5.対応案①――居宅の状態の共有と目標の設定

資料3・17ページには、リハビリテーションマネジメント加算の算定要件として、次の内容を明確化する対応案が示されています。

①リハビリテーション会議において、利用者の居宅における活動や参加の状態を共有し、活動や参加の目標及び目標を踏まえたADL訓練やIADL訓練等を含むリハビリテーション計画を設定すること

つまり、会議で共有するのは、まず居宅での活動・参加の状態です。それを踏まえて、本人が目指す活動・参加の目標と、必要なADL・IADL訓練等を含む計画を設定します。単に会議録へ「社会参加」と書き加えることではありません。

6.対応案②――達成状況を報告し必要なら見直す

②リハビリテーション会議において、目標の達成状況を報告し、必要に応じてリハビリテーション計画を見直すこと

目標を立てた後、居宅でどのような変化が起きたかを会議で報告し、必要なら計画を見直します。本人の希望や生活状況は変化するため、設定した目標を固定化するのではなく、達成状況と本人の意思を継続して確かめることが大切です。なお、計画の評価・見直し自体は現行にも存在します。今回は、その中で活動・参加の目標達成を会議に結び付ける点を明確にする提案です。

7.生活行為向上リハ加算の計画を一本化する案

生活行為向上リハビリテーション実施加算は、調理、買い物、入浴、趣味活動など、生活行為の改善を目的としたリハビリテーションを評価する既存の加算です。資料3では事業所ベースの算定率が1.6%と低く、算定が難しい理由として「計画を作成する時間がとれない」といった声も示されています(資料3・13~16ページ)。

そこで17ページの対応案は、生活行為向上リハビリテーション計画を別途作成せず、通所リハビリテーション計画の中に生活行為の内容を記載することを提案しています。

計画書を一本化しても、アセスメントは省略しない書類の重複を減らすことと、本人の希望・生活行為の評価を省くことは別です。事務負担を軽減しながら、必要な情報や専門的判断を維持できるかが重要です。

8.「買い物に行きたい」を生活目標として考える

以下は架空の事例です。80代のAさんは歩行練習を重ね、10メートルを安定して歩けるようになりました。ところが、Aさんの希望は「週に一度、近所の商店で好きな食品を買うこと」でした。

店への道には段差があり、荷物も持ち帰る必要があります。途中の休憩場所や交通手段、店内の混雑も関係します。歩行訓練とともに、買い物袋を持った移動、段差への対応、地域資源の活用などを本人と検討します。

なお「買い物」は現行の生活行為向上リハビリテーション実施加算でも生活行為の例として挙げられています(資料3・13ページ)。生活目標を新しく発明するのではなく、既存の考え方を実際の計画や会議の中でより具体的に扱うことが論点です。

9.加算の有無とADL・IADLの変化をどう読むか

資料3・12ページでは、906人を対象とした調査で、リハビリテーションマネジメント加算の算定の有無によって、利用開始6か月後のADL・IADLの変化に差が認められなかったことが示されています(令和7年度老健事業)。

「加算に効果がない」と断定できる結果ではありませんこれは当該調査・対象者・観察期間における比較結果です。算定群と非算定群の背景の違いや、測定していない成果なども考慮する必要があります。因果関係を証明した結果ではなく、加算の有効性がないという結論を示すものでもありません。

この結果を踏まえると、算定手続きを整えることと、本人の生活がどう変化したかを捉えることを区別して検討する必要があります。

10.本人の「参加」を押し付けない

活動・参加の目標を設定するからといって、すべての人に外出や社会活動を求めるわけではありません。自宅で静かに過ごすことを望む人もいます。家族との食事を大切にする人もいれば、かつての趣味を再開したい人もいます。

「選択肢がないために行えない」ことと、「選択肢を理解したうえで行わないことを選ぶ」ことは違います。支援者が望ましい活動を決めるのではなく、本人の意思を確認しながら目標を考えることが重要です。

11.現場の専門職と管理者が確認したいこと

  • PT・OT・ST:身体機能だけでなく、居宅生活の状態や活動・参加、環境因子を把握して計画につなぐ。
  • 介護職:日常生活で実際に行っていること、困っていること、楽しみにしていることを共有する。
  • ケアマネジャー:居宅サービス計画と通所リハ計画の方向性、本人の希望、他サービスや地域資源との関係を確認する。
  • 管理者:会議で必要な情報が集まり、目標設定・評価が形だけにならない業務体制を整える。

以上は現場で考えたい実務上の視点です。今回の案によって新たな義務としてすべて確定したという意味ではありません。

12.福祉教育ラボの視点――できることと望む生活の間

「できること」が増えることには意味があります。しかし、できることが増えたからといって、そのまま望む暮らしが実現するとは限りません。

歩けることと、出かけられること。調理できることと、好きな料理を続けられること。会話できることと、大切な人との関係を続けられること。

その間には、本人の意思、生活習慣、住環境、周囲の人々との関係や地域の資源があります。リハビリテーションを単に能力向上の訓練として捉えるのではなく、本人が望む生活の可能性が広がるかという視点でも考えたいところです。

計画は専門職だけが決めるものではありません。本人とともに考え、必要に応じて変えてよいものです。今回の検討が、記録の中の「活動・参加」を増やすだけでなく、本人が生活の変化を実感できる支援につながるかを見ていく必要があります。

13.まとめ

2026年10月14日の第270回介護給付費分科会では、通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算について、居宅における活動・参加の状態を会議で共有し、活動・参加の目標と、それを踏まえたADL・IADL訓練等を含む計画を設定すること、さらに会議で目標達成状況を報告し、必要に応じて計画を見直すことを明確化する案が示されました。

生活行為向上リハビリテーション実施加算については、専用の計画書を別に作らず、通所リハ計画内に生活行為を記載する案も示されています。いずれも2027年度介護報酬改定に向けた検討案であり、施行や具体的な算定要件が確定したわけではありません。

筋力や歩行距離の先にある一人ひとりの暮らしを、制度と現場の双方から考えることが重要です。

一次資料・参考資料

  1. 厚生労働省 第270回介護給付費分科会(2026年10月14日) — 資料一覧・開催情報
  2. 同 資料3「通所リハビリテーション」 — 8~17ページ:現行要件、集計結果、論点と対応案
  3. 同 議事次第 — 「令和9年度介護報酬改定に向けて」
  4. 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 — 現行制度確認用
  5. 介護サービス情報公表システム 加算説明 — 現行の加算の基本説明

※2026年10月15日時点の公表資料を基に整理しています。ここで扱う対応案は通所リハビリテーションに関するもので、訪問リハビリテーション全般へ同様の変更が決まったことを意味しません。

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