障害児支援に新研修体系|2027年度から「基礎・実践研修」、全常勤職員の受講案

福祉ニュース 検討チーム:2026年10月5日 確認日:2026年10月7日
児童発達支援や放課後等デイサービスなど、障害児支援に携わる職員の研修が大きく変わる可能性があります。

2026年10月5日の第65回「障害福祉報酬改定検討チーム」では、2027年度の障害福祉報酬改定に向け、「基礎・実践研修」「リーダー研修」「コア人材研修」の3階層による新たな人材育成体系について具体的な制度設計が議論されました。[1]
最初に確認:まだ最終決定ではありません

今回示された内容には、2027年度障害福祉報酬改定に向けて検討中の事項が含まれます。「全常勤職員への受講」なども現時点では検討案です。今後の報酬改定、基準、通知等によって具体的な運用が確定していくことになります。

この記事の結論
  • 障害児支援に「基礎・実践研修」「リーダー研修」「コア人材研修」の3階層による研修体系を構築する方向です。
  • 導入予定は、2027年度に基礎・実践研修、2028年度にリーダー研修、2029年度にコア人材研修です。
  • 基礎・実践研修は、制度導入時に対象事業へ配置されている全ての常勤職員に受講を求める案が示されています。
  • 非常勤職員は、勤務実態などを踏まえて常勤とは異なる受講枠組みを設ける方向です。
  • 外部研修を受講するときの人員基準についても、一定の条件のもとで柔軟に扱うことが検討されています。

1.何が変わろうとしているのか

2026年10月5日に開かれた厚生労働省の第65回「障害福祉報酬改定検討チーム」では、令和9年度、つまり2027年度の障害福祉報酬改定に向けて「障害児支援」が議題となりました。[1]

そこで具体的に示された論点の一つが、障害児支援に携わる人材の育成です。

2025年8月29日に取りまとめられた、こども家庭庁の「障害児支援における人材育成に関する検討会」報告書では、全国共通の枠組みとして、

  • 基礎・実践研修
  • リーダー研修
  • コア人材研修

という3階層による人材育成体系を構築することが適当と整理されています。[2]

今回の報酬改定検討チームでは、その構想を実際の事業運営の中にどう位置付けるのかという、より具体的な制度設計の議論に進んでいます。

大きな変化は「一部の専門職だけの研修」ではないこと

今回の構想は、管理者や児童発達支援管理責任者だけを対象にするものではありません。基礎・実践研修を土台として、障害児支援に従事する幅広い支援者が共通の理念や専門性を学ぶ仕組みをつくろうとしています。

2.なぜ新しい研修体系が必要なのか

背景には、障害児支援を取り巻く環境の変化があります。

こども家庭庁の検討会では、障害児通所支援を中心に事業所数や利用者数が増加する一方、適切な事業運営と支援の質をどのように確保していくかが課題として整理されてきました。[2]

また、これまで障害児支援については、国として統一された人材育成の体系が十分に整備されておらず、職員の育成や支援の質を高める取組は、それぞれの事業所に委ねられている部分がありました。

そこで目指されているのが、地域や事業所による違いを踏まえつつも、障害児支援に携わる人が共通して学ぶ土台をつくることです。

目指している方向
  • 全国共通の基本理念や専門性を学ぶ
  • 事業所の中でOJTと結び付ける
  • 事業所内のリーダーを育てる
  • 地域で支援者を支える人材を育てる
  • 事業所を越えて学び合う仕組みをつくる

3.新しい研修体系は3階層

土台

基礎・実践研修

障害児支援に従事する支援者が共通して身につける基本理念・知識・専門性を学ぶ研修です。

実施主体:事業者等

事業所

リーダー研修

事業所の中で中心となり、支援の質の向上や他の職員の育成を担う人材を育てます。

実施主体:都道府県・指定都市を想定

地域

コア人材研修

地域でスーパーバイズや事業所間の連携、地域づくりなどを担う中核人材を育てます。

実施主体:都道府県・指定都市を想定

基礎・実践研修の中にも段階があります

「3階層」と「基礎・実践研修Ⅰ・Ⅱ」は別の整理です。

研修体系全体としては「基礎・実践」「リーダー」「コア人材」の3階層ですが、その土台となる基礎・実践研修については、さらにⅠとⅡに分けて段階的に受講する構造が示されています。[2]

基礎・実践研修では、基本理念や権利擁護を土台として、本人支援、家族支援、地域支援・地域連携、制度理解、組織マネジメントなどを扱うことが検討されています。

入職後から少しずつ積み上げる

報告書では、入職後からおおむね3年程度までの期間を想定し、基礎・実践研修Ⅰ、Ⅱへと段階的に学ぶイメージが示されています。一度の研修ですべてを学ぶ設計ではありません。

4.2027年度から順番に導入する予定

3つの研修を同時に始める予定ではありません。

導入予定 研修 主な位置付け
2027年度 基礎・実践研修 支援者全体の共通の土台
2028年度 リーダー研修 事業所内の中心的人材
2029年度 コア人材研修 地域の中核的人材

まず現場で働く支援者の共通の土台をつくり、その上に事業所のリーダー、さらに地域全体を支える中核人材を育てる構造です。

支援者全体
基礎・実践
→ 事業所
リーダー
→ 地域
コア人材

5.児発・放デイだけではない――対象となる事業

今回、基礎・実践研修の「受講対象事業」として示されているのは、次の3つです。

受講対象として検討されている事業
  • 指定障害児通所支援
  • 指定障害児入所支援
  • 指定障害児相談支援

児童発達支援や放課後等デイサービスだけを対象にした制度ではありません。

障害児入所支援や障害児相談支援まで含め、障害児支援全体の人材育成体系として検討されています。

6.最大のポイント――「全ての常勤職員」に受講を求める案

今回の資料で、事業所への影響が特に大きいのが基礎・実践研修の受講対象です。

制度導入時は「全ての常勤職員」

厚生労働省・こども家庭庁は、制度導入時には、受講対象事業に配置されている「全ての常勤職員」に受講を求めることを検討しています。

その後についても、対象事業に新たに従事する常勤職員へ受講を求める方向が示されています。[1]

つまり、

  • 児童発達支援管理責任者だけ
  • 管理者だけ
  • 特定の資格を持つ人だけ
  • リーダーだけ

が受ける研修ではない方向です。

直接支援に携わる職員を含め、事業所全体で障害児支援の基本理念や支援の考え方を共有する制度へ進む可能性があります。

7.非常勤職員はどうなる?

一方、非常勤職員については、常勤職員と完全に同じ枠組みにする案ではありません。

今回の資料では、非常勤職員の役割や勤務実態を踏まえて、標準カリキュラムのうち必須受講科目を設定するなど、常勤職員とは異なる枠組みで受講を求めることが検討されています。[1]

放デイ等では特に重要な論点

放課後等デイサービスなどでは、短時間勤務や非常勤で働く職員も少なくありません。どの科目を必須にするのか、どの程度の時間を確保するのかは、今後の制度設計で現場への影響が大きい部分です。

8.「研修へ行くと人が足りない」をどうするか

研修制度を整えても、職員が実際に受講できなければ機能しません。

障害児支援の現場では、サービス提供時間中に必要な人員を配置する必要があります。

そのため職員が外部研修へ参加すると、

「その時間の人員配置をどうするのか」

という実務上の問題が生じます。

今回の資料では、外部研修の受講によって一時的に人員配置へ影響が生じる場合について、支援の質を確保するために必要な直接支援体制が確保されることを前提として、人員基準を柔軟に取り扱うことが検討されています。[1]

「研修だから人員基準を満たさなくてもよい」という意味ではありません

ポイントは「必要な直接支援体制が確保されることを前提」とされていることです。具体的にどの範囲まで柔軟化されるかは、今後の制度設計を確認する必要があります。

9.動画を見るだけの研修ではない

もう一つ注目したいのが、研修の方法です。

基礎・実践研修では、全科目について動画で講義を受けられる体制を整えていく方向が示されています。

しかし、動画を視聴して終わりではありません。

研修で想定されている学び
  • 動画などによる講義
  • 受講者自身による振り返り
  • 上司や先輩職員との対話
  • 地域合同研修
  • 他事業所への見学などを含む地域交流

特に、講義の前後に「受講者自身の振り返り」や「上司や先輩職員との対話」を行うことを基本とする考え方が示されています。

これは、研修を職場の外で行う「勉強」として切り離すのではなく、日々の支援やOJTと結び付けようとする設計です。

学ぶ → 振り返る → 対話する → 支援で試す → また振り返る

10.福祉教育ラボの視点――研修が増えることと、学びが増えることは同じではない

制度化されれば、現場では当然、

「また研修が増えるのか」
「いつ受講するのか」
「その間のシフトはどうするのか」

という声が出てくると思います。

これは、とても現実的な問題です。

研修時間を勤務の中でどう確保するのか。非常勤職員はどこまで受講するのか。研修中の職員を誰が補うのか。そして学んだ内容を実際の支援へどうつなげるのか。

こうした条件が整わなければ、研修体系をつくっても、動画を再生して「受講済み」にするだけの制度になってしまう可能性があります。

一方で、今回の構想には、それとは違う方向も見えます。

「振り返り」と「対話」を研修の中に組み込み、日々の支援やOJTそのものを学びにつなげていく考え方です。

支援者個人だけに「もっと勉強してください」と求めるのではなく、事業所の中で学び、さらに事業所を越えて地域で学び合う。

そして、その学びを支えるリーダーや地域のコア人材を育てる。

今回示されている3階層の構造は、単なる研修科目の追加ではなく、障害児支援の現場に学びが続く仕組みをつくれるかという問いでもあります。

そして最終的に大切なのは、研修制度そのものではありません。

こどもが安心できること。
自分の思いや希望を表せること。
家族も含めて支えられること。
住んでいる地域によって、受けられる支援の質に大きな差が生まれないこと。

制度がどのような形で完成するのかを見るときも、その先にいるこどもと家族から考えていきたいところです。

まだ「決定」ではない――今後確認したいこと

今回示された内容は、2027年度障害福祉報酬改定に向けた検討段階の内容を含んでいます。

今後、特に確認したいのは次の点です。

  • 全常勤職員への受講を、具体的にどのような運用で求めるのか
  • 制度開始時に既に勤務している職員の受講期限
  • 非常勤職員に求める必須科目と受講時間
  • 研修修了をどのように確認・記録するのか
  • 研修受講中の人員基準の柔軟な取扱いの具体的範囲
  • 研修時間を勤務時間としてどう扱うのか
  • 報酬・加算・運営基準とどのように結び付くのか

「2027年度から研修が始まる」という情報だけで終わらせず、今後示される運営基準や通知まで追っていく必要があります。

まとめ

障害児支援では、2027年度から「基礎・実践研修」、2028年度から「リーダー研修」、2029年度から「コア人材研修」を順次導入する予定が示されています。

さらに2027年度障害福祉報酬改定に向け、基礎・実践研修を制度上に位置付け、導入時には対象となる事業に配置されている全ての常勤職員へ受講を求める案まで具体化しています。

非常勤職員については勤務実態などを踏まえた別の枠組みを設ける方向で、外部研修を受講するときの人員配置についても、必要な直接支援体制を確保することを前提とした柔軟な取扱いが検討されています。

これは単に「新しい研修が増える」という話ではありません。

支援者個人の学び、事業所内のOJT、リーダー育成、そして地域の人材育成までを、一つの体系としてつなげようとする動きです。

児童発達支援や放課後等デイサービスをはじめ、障害児支援に関わる事業所にとって、2027年度報酬改定の中でも実務への影響が大きい論点の一つとして、今後の議論を追っていく必要があります。

一次資料・参考資料

  1. 厚生労働省「第65回 障害福祉報酬改定検討チーム」資料 (2026年10月5日)
    公式資料ページを確認する
  2. こども家庭庁 「障害児支援における人材育成に関する検討会 報告書」 (2025年8月29日)
    公式ページを確認する

※本記事は2026年10月7日時点で公表されている厚生労働省・こども家庭庁の資料をもとに整理しています。今回示された内容には、2027年度障害福祉報酬改定に向けて検討中の事項が含まれます。今後、制度の具体的な内容が変更・追加される可能性があります。

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