介護サービス費12.2兆円|2025年度統計で見る、増えた介護サービス・減ったサービス
2025年度、介護保険サービスにかかった費用は 約12.2兆円となりました。
厚生労働省が2026年9月30日に公表した 「令和7(2025)年度 介護給付費等実態統計の概況」によると、 介護予防サービスと介護サービスを合わせた年間の費用額累計は 12兆2,207億8,700万円。 前年度より2.4%増えています。
ただし、今回見たいのは 「介護費が12兆円を超えた」という総額だけではありません。
サービス別に見ると、 訪問看護や定期巡回など伸びているサービスがある一方、 短期入所や訪問入浴など利用者が減っているサービスもあります。
介護保険で「何が使われているのか」が、 少しずつ動いていることが見えてきます。
- 年間実受給者数は685万1,600人で、前年度比1.4%増
- 費用額累計は12兆2,207億8,700万円で、前年度比2.4%増
- 訪問看護、居宅療養管理指導、定期巡回などは比較的大きく増加
- 短期入所、訪問入浴、夜間対応型訪問介護などは利用者が減少
- 施設サービス全体の年間実受給者数はほぼ横ばい
- 統計から「増減」は分かっても、その原因までは断定できない
最初に結論|利用者数以上に「どのサービスが伸びているか」を見たい
年間実受給者数
前年度比 +1.4%
費用額累計
前年度比 +2.4%
前年度から増えた費用額
利用した人の増加率よりも、 費用額の増加率の方が大きくなっています。
ただし、この数字だけで 「一人あたりの介護費が一律に大きく増えた」 と判断することはできません。 利用サービス、要介護度、利用回数、介護報酬、 地域、サービス構成など複数の要因が関係します。
今回より注目したいのは、 「どのサービスの利用が増えているのか」 という部分です。
まず「12.2兆円」の意味を確認する
厚生労働省の「介護給付費等実態統計」でいう 「費用額」は、
- 保険給付額
- 公費負担額
- 利用者負担額
を合わせた金額です。
つまり、 「国や介護保険から12.2兆円が支払われた」 という意味ではありません。
また、市区町村が直接支払う 福祉用具購入費や住宅改修費などの償還払いは、 この費用額には含まれません。
この記事では「12.2兆円」を、 2025年度に介護予防サービス・介護サービスについて 統計上把握された費用額の合計として見ていきます。
介護サービスだけでは約11.9兆円
| 区分 | 年間実受給者数 | 前年度比 | 費用額 | 前年度比 |
|---|---|---|---|---|
| 介護予防サービス | 136万1,200人 | +4.4% | 3,401億7,100万円 | +6.2% |
| 介護サービス | 577万9,500人 | +0.8% | 11兆8,806億1,600万円 | +2.3% |
12.2兆円の内訳を見ると、 介護予防サービスの費用額は3,401億7,100万円。 前年度比6.2%増。 介護サービスの費用額は11兆8,806億1,600万円。 前年度比2.3%増です。
金額そのものでは要介護者向けの介護サービスが圧倒的に大きい一方、伸び率では介護予防サービスの方が高くなっています。
介護予防サービスの年間実受給者数も136万1,200人で、前年度より4.4%増えました。
介護サービスの年間実受給者数は577万9,500人で、0.8%増です。
ここからも、 「介護保険利用者全体が同じように増えている」 わけではないことが分かります。
増えたサービス
増えたサービス① 訪問看護
介護サービスの年間実受給者数を見ると、訪問看護は、 2024年度の104万8,700人から、 2025年度は110万6,600人へ。 5.5%増えています。
費用額も、 4,064億3,300万円から、 4,353億5,700万円となり、 7.1%増加しました。
利用者数、費用額ともに全体の伸び率を上回っています。
さらに介護予防訪問看護でも、年間実受給者数は9.6%増えています。
訪問看護は、在宅で療養する人について、
- 健康状態の観察。
- 医療的な処置。
- 療養上の支援。
- 家族への支援。
などを行うサービスです。
今回の統計だけから「なぜ増えたのか」まで断定することはできません。
ただ、在宅生活のなかで医療と介護をつなぐサービスの利用が増えている、という事実は確認できます。
増えたサービス② 居宅療養管理指導
居宅療養管理指導も大きく伸びています。
年間実受給者数は、 161万5,800人から170万400人へ。 5.2%増。
費用額は、 1,943億9,100万円から2,133億2,300万円へ。 9.7%増えました。
居宅療養管理指導は、
- 医師。
- 歯科医師。
- 薬剤師。
- 管理栄養士。
- 歯科衛生士などが、
通院が難しい利用者の自宅などを訪問し、療養上の管理や指導を行うサービスです。
訪問看護と同じく、 「自宅で暮らしながら医療的な支援を受ける」 ことに関係するサービスです。
今回の数字を見る限り、医療と生活をつなぐ在宅系サービスの一部が比較的大きく伸びていることが分かります。
増えたサービス③ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
さらに伸び率が高いのが、 定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。
年間実受給者数は、 6万9,800人から7万6,500人へ。 9.7%増。
費用額は、 994億9,400万円から1,115億6,900万円へ。 12.1%増えました。
このサービスは、
- 定期的な訪問。
- 必要時の随時対応。
- 訪問介護。
- 訪問看護。
を組み合わせながら、要介護者の在宅生活を24時間支える仕組みです。
利用者総数では訪問介護や通所介護より小さいサービスですが、 増加率ではかなり目立っています。
看護小規模多機能型居宅介護も増加
看護小規模多機能型居宅介護も増えています。
短期利用以外の年間実受給者数は、 3万5,900人から3万8,000人へ。 5.8%増。
費用額は、 828億2,300万円から889億8,300万円へ。 8.1%増です。
看護小規模多機能型居宅介護は、
- 通い。
- 訪問介護。
- 泊まり。
- 訪問看護。
を一体的に提供します。
ここでも、 介護だけ。 医療だけ。 という分け方ではなく、 生活のなかで医療と介護を組み合わせるサービスが伸びていることが分かります。
減ったサービス
一方で「短期入所」は減少
すべてのサービスが増えているわけではありません。
短期入所全体の年間実受給者数は、 80万8,700人から79万5,600人へ。 1.6%減少しました。
なかでも短期入所生活介護は、 70万4,500人から69万2,700人へ。 1.7%減です。
費用額も短期入所全体では0.5%減っています。
ショートステイは、
- 家族の休息。
- 介護者の事情。
- 本人の一時的な施設利用。
- 在宅生活の継続。
などを支える重要なサービスです。
だからこそ、 「利用者が減った=必要性が低下した」 と単純には言えません。
- 事業所数。
- 受入体制。
- 人材不足。
- 他サービスとの関係。
- 本人・家族の選択。
など、さまざまな要因が考えられます。
統計だけから原因を決めつけないことが大切です。
訪問入浴介護も減少
訪問入浴介護の年間実受給者数は、 13万600人から12万3,800人となり、 5.2%減少しました。
費用額も1.1%減っています。
訪問入浴は、自宅の浴槽での入浴が難しい人に対して、専用の浴槽を持ち込んで入浴を支援するサービスです。
重度の利用者にとって重要なサービスですが、今回の統計では利用者数が減少しています。
ここも、 サービスが不要になった。 他サービスに置き換わった。 ということまでは、この統計だけでは分かりません。
数字から確認できるのは、 「年間に利用した人が前年より少なかった」 というところまでです。
夜間対応型訪問介護も減少
夜間対応型訪問介護の年間実受給者数は、 1万2,000人から1万1,300人へ。 5.5%減少しました。
一方、先ほど見た定期巡回・随時対応型訪問介護看護は9.7%増えています。
両者は制度上まったく同じサービスではありません。
しかし、 夜間だけを支えるサービス。 24時間の定期巡回・随時対応と訪問看護まで組み合わせるサービス。 という異なるサービスの利用状況が、それぞれ違う方向に動いていることは注目できます。
ここは今後、事業所数や地域差なども合わせて確認したい部分です。
通所系は大きく増えているわけではない
通所介護の年間実受給者数は、 168万400人から168万9,300人へ。 0.5%増。
通所リハビリテーションは、 59万3,900人から59万1,200人へ。 0.5%減でした。
大幅に増えている訪問看護や居宅療養管理指導と比べると、変化は小さくなっています。
ただし、 「通所から訪問へ移行している」 と、この1年間の統計だけで結論づけるのは早すぎます。
- 長期的な推移。
- 利用者の要介護度。
- 地域差。
- 事業所数。
- 介護報酬改定。
などを合わせて見なければ、サービス構造の変化を断定することはできません。
施設サービス全体は、ほぼ横ばい
施設サービスの年間実受給者数は、 135万2,500人から135万2,000人となり、 ほぼ横ばいでした。
その内訳を見ると、
- 介護老人福祉施設は0.1%増。
- 介護老人保健施設は0.7%減。
- 介護医療院は2.5%増です。
費用額では、
- 施設サービス全体が1.0%増。
- 介護老人福祉施設が1.3%増。
- 介護老人保健施設が0.2%増。
- 介護医療院が3.6%増となっています。
施設サービス全体が大きく増減しているというより、 施設の種類によって少しずつ動きが異なっている、 と見る方が適切です。
2025年度の数字から見えてくる一つの特徴
ここまでを並べると、2025年度は、
- 訪問看護。
- 居宅療養管理指導。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護。
- 看護小規模多機能型居宅介護。
といった、 「自宅で暮らすこと」と「医療・看護・介護」を結びつけるサービスの一部で、利用者・費用とも比較的大きな伸びが見られました。
一方、
- 短期入所。
- 訪問入浴。
- 夜間対応型訪問介護。
- 一部の通所・地域密着型サービス。
では利用者が減っています。
これは、介護保険サービスの利用構造がすべて一方向に動いているのではなく、 サービスごとに異なる変化が起きている ことを示しています。
ただし「在宅介護へ完全に移行した」とは言えない
ここはかなり重要です。
今回の統計を見て、
- 「国の在宅重視政策によって、施設から在宅へ移行した」
- 「高齢者が通所を使わなくなり、訪問サービスへ移った」
とまで書くことはできません。
この統計は、 何人利用したか。 いくら費用がかかったか。 を示す統計です。
- 利用者がそのサービスを選んだ理由。
- 事業所側の供給状況。
- 職員不足。
- 待機状況。
- 地域差。
- 家族状況。
- 医療ニーズ。
などを直接説明するものではありません。
数字から傾向は見えても、 原因まで自動的に分かるわけではない。
ここは統計を読むときに大切な線引きです。
「685万人」と「6,997万人」は違う
今回の統計には、 年間累計受給者数6,997万3,700人 という数字も出てきます。
しかし、 「日本で約7,000万人が介護サービスを使った」 という意味ではありません。
年間累計受給者数は、5月から翌年4月までの各審査月の受給者数を合計した数字です。 同じ人が12か月利用すれば、その人は毎月数えられます。
一方、年間実受給者数685万1,600人は、1年間に一度でもサービスを利用した人を、原則として1人として数えた数字です。
今回の記事では、この年間実受給者数を「1年間に利用した人」を見る数字として使っています。
統計では、 数字そのものより、 「どう数えた数字なのか」 を確認することが大切です。
福祉教育ラボの視点
12兆2,207億円。
数字だけを見ると、とても大きく感じます。
そして、 「介護保険のお金が増え続けている」 「高齢化で社会保障費が膨らんでいる」 という議論にもつながります。
もちろん、制度の持続可能性を考えるうえで、費用は重要です。
でも、福祉の側から見るなら、 「いくら使ったか」 だけで終わらせたくありません。
そのお金によって、 誰が。 どこで。 どんな暮らしを続けられたのか。 を見る必要があります。
訪問看護が増えている。 定期巡回が増えている。 看護小規模多機能が増えている。
その数字の向こうには、 自宅で医療を受けながら暮らす人。 夜間にも支援を必要とする人。 介護と看護の両方が必要な人。 そして、それを支える専門職がいます。
一方で、利用者が減っているサービスについても、 「人気がなくなった」 だけで片づけることはできません。
必要なのに使えないのか。 別の支援へ移っているのか。 地域にサービスそのものが少ないのか。 本人のニーズが変わっているのか。
数字の背景を考える必要があります。
統計は現場そのものではありません。 でも、現場で起きている変化を考えるための入口になります。
「12.2兆円になった」 で終わるのではなく、 その12.2兆円が、 どのような暮らしを支えるサービスに使われているのか。 そして、その構成がこれからどう変わっていくのか。
福祉教育ラボでは、そこまで見ていきたいと思います。
「令和7(2025)年度 介護給付費等実態統計の概況」
(令和7年5月審査分~令和8年4月審査分) 厚生労働省
「介護給付費等実態統計|受給者の状況」(PDF) 厚生労働省
「介護給付費等実態統計|費用額の状況」(PDF)
※本記事は2026年10月2日時点で公表されている厚生労働省の一次資料をもとに整理しています。


