介護施設の費用は何にかかる?|食費・居住費・補足給付まで整理
介護保険が「1割負担」なら、介護施設に入ったときの費用も全部1割。
そう思ってしまうことがあります。
でも、実際の介護施設の費用は、それほど単純ではありません。
施設で支払うお金には、 介護サービス費・食費・居住費・日常生活費 など、性格の違う費用があります。
このうち、介護保険の「1割・2割・3割負担」がそのまま当てはまるのは、 基本的には介護保険給付の対象となる施設サービス費です。
食費や居住費などは、別の仕組みで負担します。
さらに、所得や預貯金など一定の要件を満たす人には、 食費・居住費の負担を軽減する 「補足給付」 という制度があります。
- 介護施設で支払う費用の4つの内訳
- 「1割・2割・3割負担」がかかる範囲
- 食費・居住費が別にかかる理由
- 補足給付が何を軽減する制度なのか
- 特養の月額負担の具体例
- 高額介護サービス費との違い
- 施設を選ぶときに確認したい費用項目
最初に結論|施設の費用は4つに分けると分かりやすい
介護施設で支払う費用は、まず次の4つに分けると理解しやすくなります。
介護保険の対象となるサービスの費用です。 ここに1割・2割・3割の自己負担割合が関係します。
食材料費や調理にかかる費用です。 介護サービス費とは別に負担します。
居室や光熱費などに関係する費用です。 部屋の種類によって金額が変わります。
理美容や日用品など、 本人の生活に必要な実費です。
=
介護サービス費の自己負担 + 食費 + 居住費 + 日常生活費など
「1〜3割負担」という言葉は、この4つ全部にかかるわけではありません。
1 介護サービス費|ここに1割・2割・3割がかかる
介護サービス費は、施設で提供される介護そのものにかかる費用です。
たとえば、
- 食事や入浴などの介助
- 排泄の支援
- 機能訓練
- 健康管理
- 日常生活上の支援
などが含まれます。
介護保険給付の対象となる施設サービス費については、 その人の所得に応じて 1割・2割・3割 を自己負担します。
たとえば、介護保険対象の施設サービス費が10万円だった場合、
- 1割負担なら約1万円
- 2割負担なら約2万円
- 3割負担なら約3万円
というイメージです。
実際の施設サービス費は、 要介護度、施設の種類、居室形態、加算、地域区分などによって変わります。
2 食費|介護サービス費とは別に負担する
介護施設で提供される食事については、 施設サービス費とは別に食費を負担します。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、 食費は 「食材料費+調理費」 に相当する費用として整理されています。
「食事介助」という介護と、 「食べ物そのもの・調理にかかる費用」は、 制度上別に考えます。
3 居住費|部屋代や光熱費に相当する費用
居住費も、介護サービス費とは別です。
特別養護老人ホームなどでは、居室の種類によって費用が異なります。
- 多床室
- 従来型個室
- ユニット型個室的多床室
- ユニット型個室
などがあります。
一般に、個室性の高い居室ほど居住費が高くなる傾向があります。
同じ要介護度、同じ1割負担でも、 居室の種類によって月々の総額は変わります。
4 日常生活費|理美容代などは施設ごとに違う
施設では、介護サービス費・食費・居住費以外にも、 費用がかかる場合があります。
代表的なのが日常生活費です。
- 理美容代
- 本人が希望する特別な食事
- 衣類や身の回り品
- 個人で使用する日用品
- 本人の希望によって利用するサービス
実際の金額や徴収方法は施設によって異なります。
施設を選ぶときは、 「月額○万円」という合計だけでなく、 何が含まれていて、どこからが追加料金なのか を確認することが大切です。
特養の例で見ると、どうなる?
厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、 特別養護老人ホームの月額負担の目安が掲載されています。
| 項目 | 多床室 | ユニット型個室 |
|---|---|---|
| 施設サービス費の1割 | 約26,130円 | 約28,650円 |
| 居住費 | 約27,450円 | 約61,980円 |
| 食費 | 約43,350円 | 約43,350円 |
| 日常生活費 | 約10,000円 | 約10,000円 |
| 合計 | 約106,930円 | 約143,980円 |
これは要介護5・1割負担・30日利用の例です。
同じ「1割負担」でも、総額はかなり違います。 大きな要因の一つが居住費です。
だからこそ、 「何割負担か」だけでは、施設の月額費用は分かりません。
では、低所得の人は食費・居住費を全部払うの?
ここで出てくるのが 「補足給付」 です。
正式には「特定入所者介護サービス費」などと呼ばれる仕組みで、 一定の低所得者について、 介護保険施設などの食費・居住費の負担を軽減します。
補足給付では、食費・居住費に 「負担限度額」 を設定し、 基準となる費用と本人の負担限度額との差額を 介護保険から給付します。
補足給付は 「施設費全部を安くする制度」ではありません。 主に食費・居住費の負担を軽減する制度です。
補足給付を受けるには条件がある
補足給付は、誰でも利用できるわけではありません。
主に次の内容を確認します。
- 世帯の課税状況
- 本人の年金収入等・所得
- 預貯金などの資産
現在の制度では、 世帯全員が市町村民税非課税の場合でも、 所得段階ごとに預貯金要件があります。
| 区分 | 単身の預貯金等の目安 |
|---|---|
| 第2段階 | 650万円以下 |
| 第3段階① | 550万円以下 |
| 第3段階② | 500万円以下 |
夫婦の場合は、それぞれ配偶者分を加えた基準になります。
また、2026年8月からは、 所得段階の一部に使われる年金収入等の基準が 80.9万円から82.65万円 へ見直されています。
「補足給付=現金が振り込まれる」とは限らない
「給付」という言葉から、 あとで本人の口座へお金が振り込まれる仕組みを想像するかもしれません。
実際には、負担限度額認定を受けた人については、 本人が施設へ負担限度額までを支払い、 基準費用額との差額を介護保険から施設側へ給付する仕組みが基本です。
利用者側から見ると、 食費・居住費の1日あたりの負担額が低くなる という形で現れます。
負担限度額は人によって違う
補足給付には、 第1段階、第2段階、第3段階①、第3段階②などの区分があります。
さらに、 特養、老健、介護医療院、 多床室、個室、ショートステイなどによっても 食費・居住費の負担限度額は異なります。
「補足給付を受ければ月○万円」と一律には言えません。 本人の所得・資産と、利用する施設・居室を合わせて確認する必要があります。
「基準費用額」と「実際の施設料金」は同じではない
補足給付には「基準費用額」という数字があります。
これは介護保険上、 食費・居住費の標準的な費用として設定される金額です。
しかし、 すべての施設がこの金額で請求しなければならないという意味ではありません。
実際の食費・居住費は、 施設と利用者との契約によって設定されます。
そのため、
- 基準費用額
- 施設の実際の料金
- 本人の負担限度額
は、別の数字として考える必要があります。
有料老人ホームの費用も同じ仕組み?
ここは重要です。
今回説明している補足給付は、主に
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- ショートステイ
などの介護保険施設等が対象です。
一般的な有料老人ホームや サービス付き高齢者向け住宅の家賃・食費に、 そのまま補足給付が適用されるわけではありません。
日常的には「介護施設」という言葉を広く使いますが、 介護保険制度上の「介護保険施設」と、 有料老人ホームなどの「高齢者の住まい」は同じではありません。
高額介護サービス費で食費・居住費も戻ってくる?
高額介護サービス費は、 1か月の介護保険サービスの自己負担額が、 所得区分ごとの上限を超えた場合に、 超過分を支給する仕組みです。
ただし、
- 食費
- 居住費
- 日常生活費
などは、原則として高額介護サービス費の対象に含まれません。
「施設の請求額全体に上限がかかる」わけではありません。
施設を選ぶときは「月額」だけを見ない
施設を探していると、 「月額12万円」 「月額15万円」 といった数字が目に入ります。
でも、その数字を見るときには、 中身を分けて確認する必要があります。
- 介護サービス費は含まれているか
- 食費はいくらか
- 居住費はいくらか
- 日用品や理美容代はいくらか
- 加算は別にかかるのか
- 補足給付を使った場合はいくらになるか
- 毎月ほぼ必ずかかる費用はどれか
- 利用したときだけかかる費用はどれか
請求書を見るときは4つに分ける
施設から届いた請求書が分かりにくいときは、 次の4つに分けてみてください。
- 介護保険サービス費
- 食費
- 居住費
- その他の日常生活費
そのうえで、 補足給付が使える場合は食費・居住費がどう変わるのか、 高額介護サービス費の対象になるのはどの部分か、 を確認すると見通しがよくなります。
福祉教育ラボの視点|「何割負担か」だけでは、暮らしの負担は見えない
介護保険では、 1割、2割、3割という数字がよく使われます。
分かりやすい数字です。
でも、施設で暮らす人の生活を考えるとき、 それだけでは十分ではありません。
食べること。
住むこと。
身だしなみを整えること。
日常生活を送ること。
介護施設の費用には、 「介護」だけでなく 「暮らし」にかかるお金 が含まれています。
だから、 「介護保険は1割負担だから安心」 とも、 「施設は月○万円だから高い」 とも、 一つの数字だけでは判断できません。
大切なのは、
何に対して支払っているのか。
どこまでが介護保険なのか。
どこからが生活費なのか。
どんな負担軽減制度が使えるのか。
を分けて見ることです。
そしてもう一つ大切なのは、 制度上払える金額と、 本人が安心して生活を続けられる金額は、 必ずしも同じではない ということです。
年金収入、預貯金、家族の支援、 医療費、日用品、退所後の生活。
施設利用に必要なお金を考えるときには、 請求書の金額だけでなく、 その人の暮らし全体を見る必要があります。
制度を知ることは、数字を覚えることではありません。
その人がどのような生活を続けられるのかを考えるための材料にすること。
福祉教育ラボでは、そんな視点から制度を整理していきます。
情報確認日:2026年9月29日
本記事は2026年9月29日時点の制度・公表資料をもとに整理しています。
補足給付の所得区分、預貯金要件、負担限度額などは今後変更される可能性があります。


