10月10日は世界メンタルヘルスデー|『心のサポーター』とは?厚労省が養成を拡大
毎年10月10日は、 「世界メンタルヘルスデー」 です。
厚生労働省は2026年10月1日、 世界メンタルヘルスデー2026に向けた取組を発表しました。
今年もリラックマ・コリラックマが応援サポーターとなり、 メンタルヘルスについて考えるイベントや普及啓発が行われます。
そのなかで、福祉教育ラボが注目したいのが 「心のサポーター」 です。
心のサポーターは、専門家になるための資格ではありません。
メンタルヘルスや精神疾患について正しく知り、 身近な人の変化に気づき、 声をかけ、 そして話を聴く。
必要であれば、専門的な相談や支援につなぐ。
そんな人を社会のなかに増やしていこうという取組です。
- 10月10日は世界メンタルヘルスデー
- 2026年の国際テーマは「当事者の体験に耳を傾ける」
- 厚労省は「心のサポーター」の養成を進めている
- 2033年度末までに100万人の養成を目標としている
- 2026年7月1日時点では4万1,540人
- 心のサポーターは、診断や治療を行う専門職ではない
- 大切なのは「気づく・声をかける・聴く・必要ならつなぐ」こと
10月10日は「世界メンタルヘルスデー」
世界メンタルヘルスデーは、 世界精神保健連盟が1992年に、 メンタルヘルスに関する人々の意識を高め、 偏見をなくし、 正しい知識を普及することを目的として定めたものです。
その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、 国際的な啓発の日として広がりました。
日本では厚生労働省が2019年度から普及啓発の取組を行っており、 2026年度で8年目となります。
今年も10月10日に向け、 イベントや情報発信が行われます。
2026年は「当事者の体験に耳を傾ける」
本当の声から、本当の変化が生まれる 英語原題:Lived experiences heard: real voices, real change
2026年の世界メンタルヘルスデーのテーマは、 「当事者の体験に耳を傾ける:本当の声から、本当の変化が生まれる」です。 このテーマは世界精神保健連盟(WFMH)が発表したもので、 英語の原題は “Lived experiences heard: real voices, real change” です。
ここで大切なのは、当事者の声を聞いて終わりにしないことです。
こころの不調や精神疾患を経験した人には、 その体験を通して得た知識や理解があります。
専門職が持つ医学的・心理学的な知識と、 当事者自身が生活の中で経験してきたことは、 必ずしも同じではありません。
どちらか一方が正しいという話でもありません。
WHOは2026年のテーマにおいて、 当事者が政策やサービスの意思決定に関わり、 サービスの共同設計やピアによる取組に参加することを重視しています。
「支援される人」として声を聞かれるだけでなく、 「社会や支援のあり方を一緒に考える人」として参加する。
その方向が示されています。
「心のサポーター」とは?
心のサポーターは、 メンタルヘルスや精神疾患について正しい知識と理解を持ち、 身近な人に対して傾聴を中心とした支援を行う人です。
専門的な資格を持っていなければなれない、 というものではありません。
厚生労働省は、小学生からお年寄りまで、 幅広い人が心のサポーターとして関わることを想定しています。
2033年度末までに100万人へ
厚生労働省の心のサポーター養成事業によると、 2026年7月1日時点の養成者数は4万1,540人です。
この数値は速報値であり、今後変動する可能性があります。
国は2033年度末までに100万人を養成する目標を掲げています。
ただし、養成者数が増えれば、 それだけで社会のメンタルヘルスが改善するとは限りません。
- 研修で学んだことが、日常生活や職場でどのように活用されるのか。
- 困っている人が相談しやすくなるのか。
- 必要なときに専門的な支援へつながれるのか。
人数だけでなく、そうした点も考える必要があります。
心のサポーターは何をする?
基本となるのは、身近な人の変化に気づき、 声をかけ、話を聴くことです。 そして、必要であれば、専門的な相談や支援につなぐことです。
厚生労働省の心のサポーター養成研修の案内でも、 心のサポーターは、身近な人のこころの不調に気づき、 耳を傾け、適切な声かけや相談につなげる役割として説明されています。
たとえば、職場の同僚の場合
たとえば、いつも一緒に働いている同僚が、 最近あまり話さなくなったとします。
そこで、何か問題があると決めつける必要はありません。
「最近、少し疲れているように見えるけれど、どう?」
と声をかけることはできます。
相手が話したくなければ、無理に聞き出す必要もありません。
話したいと思ったときに、安心して話せる関係があること。
そこから支援につながる場合があります。
心のサポーターは「治療する人」ではない
心のサポーターは、精神科医や心理職の代わりになる人ではありません。
ここは、とても大切です。
こころの不調に気づいたとき、
原因を診断する。
病名を判断する。
問題を自分だけで解決する。
という役割を担うわけではありません。
厚生労働省が示している中心的な役割は、
メンタルヘルスや精神疾患について正しく知ること。
身近な人の変化に気づくこと。
声をかけること。
そして、相手の話を聴くことです。
必要な場合には、専門的な相談や支援につながることも大切になります。
「何とかしてあげなければ」
と一人で抱え込むことと、
「支えること」
は同じではありません。
「心のサポーター」を地域だけでなく職場へ
心のサポーターの養成は、地域だけに限られた取組ではありません。
2026年の世界メンタルヘルスデーに向けた厚生労働省の取組では、 自治体による養成を支援するとともに、 企業の人事担当者や産業保健スタッフなどを対象とした研修も行われます。
ここから見えるのは、
「こころの不調は、医療機関や福祉機関だけで対応するものではない」
という考え方です。
家庭。
職場。
学校。
地域。
私たちはさまざまな場所で人と関わっています。
その身近な関係のなかで、
「いつもと少し違うな」
と気づく人がいること。
そして、
無理に答えを出そうとせず、
まず話を聴く人がいること。
必要であれば、専門的な相談や支援につなぐこと。
そうした人を社会のなかに増やしていくことが、 心のサポーター養成の目的です。
職場でできること
職場のメンタルヘルス対策では、 管理者や同僚が変化に気づくことも大切です。
しかし、それだけで十分ではありません。
たとえば、相談を受けた職員が、 誰にも相談できずに対応を抱え込む組織では、 支える側にも負担が集中します。
必要なのは、次のようなことです。
- 相談窓口を明確にすること
- 相談内容の秘密を守ること
- 必要に応じて産業保健スタッフや専門機関につなぐこと
- 相談した人が不利益を受けないよう配慮すること
心のサポーターの存在は、 組織的なメンタルヘルス対策を置き換えるものではありません。
日常の人間関係と、組織としての支援体制。
その両方が必要です。
地域の中で支え合うということ
こころの不調は、特別な誰かだけの問題ではありません。
生活環境、人間関係、仕事、経済状況、身体の健康など、 さまざまな要因が関係します。
だからこそ、医療や福祉の専門機関だけではなく、 地域での理解も大切になります。
ただし、「地域で支え合う」という言葉が、 本人や家族、近隣住民へ過剰な責任を負わせるものになってはいけません。
身近な人ができることには限界があります。
専門的な支援が必要なときは、適切な機関へつながることが重要です。
福祉教育ラボの視点|声を聴くことから、社会が変わることへ
私たちは、相手の話を聴くことを大切にします。
福祉の現場でも、相談援助でも、教育でも、 傾聴は基本的な姿勢として学びます。
しかし、相手の声を聴いたあと、 その声はどうなるのでしょうか。
話を聴いてもらえたことで、気持ちが軽くなることもあります。
一方で、本人が困っている生活環境や制度の問題が、 そのまま残ることもあります。
2026年の世界メンタルヘルスデーのテーマは、 そこに一つの問いを投げかけています。
当事者の声が、支援の方法や制度のあり方を考える場に届いているのか。
本人が自分の経験をどのように意味づけるのかは、本人自身のものです。
支援者がその意味を決める必要はありません。
だからこそ、本人の声を尊重し、 その人が自分の生活について考え、選び、 社会と関わる機会が広がることを大切にしたいと思います。
心のサポーターも、そのための一つの入口になるのではないでしょうか。
誰かを救う特別な人になることではなく、 身近な人の変化に気づき、声をかけ、話を聴くこと。
そして、必要なときには一人で抱え込まず、 ほかの人や専門的な支援につながること。
そんな関係が、家庭や職場、地域の中で 少しずつ広がっていくことを願っています。
「世界メンタルヘルスデー2026」(2026年10月1日公表) 厚生労働省
「世界メンタルヘルスデーとは」(世界メンタルヘルスデーJAPAN2026特設サイト) 厚生労働省
「心のサポーター養成事業」 厚生労働省
「心のサポーターとは」 厚生労働省
「心のサポーター養成研修について」 WHO
“World Mental Health Day 2026”
※本記事は2026年10月8日時点で公表されている厚生労働省およびWHOの資料をもとに整理しています。


