地域移行支援・自立生活援助・地域定着支援の違いとは?対象者・支援内容・期間を整理

福祉教育ラボ|学びの整理/制度確認日:2026年10月31日
地域移行支援は地域生活へ移る準備、自立生活援助は日常の暮らしの課題への対応、地域定着支援は緊急時にも暮らしを続ける体制を支えます。3つは決まった順番で使う制度ではありません。本人の希望と生活状況を出発点に、必要な支援を考えます。
第1章|3つの制度は何が違うのか
「地域で暮らしたい」という希望を、どのように支えるのでしょうか。3制度の違いは、準備・日常の相談・緊急時の体制という支援の重点から整理できます。ただし、これは理解のための要約であり、法的な定義のすべてではありません。自立生活援助にも随時の相談や訪問があり、「日常だけ」「緊急だけ」と完全に分かれるわけではありません。
地域移行支援と地域定着支援は「地域相談支援」、自立生活援助は「障害福祉サービス」の一つで、訓練等給付の対象です。[1][2]
第2章|対象者・支援内容・期間を比較
対象者や支援内容、期間を、制度ごとに比べてみましょう。「地域移行」は制度名より広い過程を表す言葉です。基本的な意味は福祉のことば「地域移行」でも整理しています。
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度上の位置付け | 地域相談支援 |
| 主な対象者 | 下記の施設・病院等から地域生活へ移るための支援が必要と認められる障害者等 |
| 利用する場面 | 退所・退院等に向けた準備 |
| 具体的な支援 | 住居の確保に関する相談、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援の体験利用、体験宿泊、関係機関との調整等 |
| 期間 | 地域相談支援給付決定期間は6か月までを基本とする |
| 更新 | 十分な成果が得られず、継続により地域移行が具体的に見込まれる場合、6か月の範囲内で更新可能。さらに必要な場合は、市町村審査会の個別審査を経て判断 |
| 注意点 | 精神科病院の入院者だけが対象ではない。施設種別等の要件を確認する |
対象となるのは、障害者支援施設・のぞみの園・児童福祉施設・療養介護を行う病院の入所者、精神科病院の入院者、救護施設・更生施設の入所者、刑事施設・少年院の収容者、更生保護施設の入所者、自立更生促進センター・就業支援センター・自立準備ホームの宿泊者です。精神科病院は精神病室のある他の病院も含みます。児童福祉施設は18歳以上の者等、刑事施設・少年院は特別調整の対象者のうち在所中の施設外支援が可能と見込まれる等、個別の条件があります。[1][2][3]
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度上の位置付け | 障害福祉サービス(訓練等給付) |
| 主な対象者 | 施設等を出て一人暮らし等を始めた人、既に一人暮らしで継続が難しくなった人、同居家族等の支援が見込めず援助が必要な人等 |
| 利用する場面 | 地域生活の困りごとを把握し、暮らしを整えるとき |
| 具体的な支援 | 定期訪問、随時の相談・訪問、生活課題の把握、情報提供・助言、関係機関との連絡調整 |
| 期間 | 標準利用期間は1年。支給決定期間は最長1年を基本とし、両者は別の概念 |
| 更新 | 標準利用期間を超える場合、市町村審査会の個別審査で必要性が認められれば最大1年ずつ、回数制限なく更新可能 |
| 注意点 | 家族に障害・疾病がなくても、生活環境の大きな変化等により支援を要する場合は対象になり得る。地域定着支援との併給は不可 |
施設等からの移行者は、退所等から1年を経過した日の属する月までを有効期間とし、その後、支給開始から1年の範囲で再度定める取扱いがあります。「一律に初回から丸1年」「1年で必ず終了」とは説明できません。[2][4]
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度上の位置付け | 地域相談支援 |
| 主な対象者 | 単身生活等で緊急時の支援が見込めない人。同居家族がいても所定の条件を満たす人 |
| 利用する場面 | 障害特性に起因する緊急事態等への備えが必要なとき |
| 具体的な支援 | 常時の連絡体制の確保、緊急時の相談・訪問等の必要な支援 |
| 期間 | 地域相談支援給付決定期間は1年までを基本とする |
| 更新 | 心身・生活状況、緊急時支援の実績等から必要性が見込まれる場合、1年の範囲内で更新可能。さらに必要な場合も更新可 |
| 注意点 | 同居家族に障害・疾病がなくても、退院・退所後等で緊急時に手厚い支援が必要な人は対象になり得る |
期間欄は事務処理要領による基本的な整理です。法令上は、決定日が月初でない場合、決定日からその月末までに月単位の期間を加える取扱いがあります。実際の終期は受給者証で確認してください。地域定着支援では、グループホームや宿泊型自立訓練の入居者は通常対象外です。ただし、事務処理要領は「退居後(外部サービス利用型)共同生活援助サービス費」の支給決定を受けている人を、この対象外の取扱いから除いています。退居後の支援を受ける人への例外であり、地域定着支援の利用には対象要件と必要性の個別確認が必要です。[2][3][4]

第3章|具体的な生活場面から考える
以下は制度理解のための仮想事例です。いずれも利用が自動的に認められるわけではなく、市町村が個別の状況や必要性を確認して支給決定等を行います。
①精神科病院から地域へ移りたい人。本人が望む場所で住居を探し、生活体験を重ね、退院に向けて病院や相談支援事業者等が調整する場面では、地域移行支援を検討できます。
②グループホームを出て一人暮らしを始めた人。支払いの管理や通院、人間関係で困りごとが生じた場合、定期訪問や相談を通じて課題を整理し、支援機関につなぐ自立生活援助を検討できます。
③一人暮らしを続けているが、緊急時の相談先がない人。障害特性に起因する緊急事態等に備え、常時の連絡体制と必要な対応を確保する地域定着支援を検討できます。
第4章|似ている制度と併給の注意
自立生活援助は定期的な訪問も通じて日常生活を支え、地域定着支援は常時の連絡体制と緊急時の支援に重点があります。ただし支援は重なり、現行の事務処理要領では、自立生活援助が地域定着支援の内容を含むため、両者の併給はできません。また、就労定着支援と自立生活援助も併給できません。[2:80頁⑨・⑩]
居宅介護は家事や身体介護等、自立訓練(生活訓練)は生活能力の維持・向上のための訓練、計画相談支援はサービス等利用計画の作成・見直し、共同生活援助は共同生活の住居での日常生活援助等を担います。共同生活援助には一人暮らしへの移行・移行後の支援もあります。役割の違いだけで併給の可否を推測せず、市町村や相談支援事業者に確認しましょう。[1][2][4]
第5章|福祉教育ラボの視点〈独自の考察〉
地域に移ることと、地域で自分らしく暮らせることは、同じでしょうか。福祉のことば「地域生活」は、住まいだけでなく、日常生活や人との関係、役割や支援を本人の意思に沿って選ぶ視点を示しています。住居があっても、相談相手、移動手段、地域との関係、緊急時の安心、社会参加の機会が足りなければ、望む生活に届かないかもしれません。
自立は、支援が不要になることではありません。支援者が考える自立の姿を当てはめず、本人がどこで、誰と、どのように暮らしたいかを出発点にします。必要な支援を受け、試し、選び直すことも含めて暮らしを支えたいと考えます。
関連して、エド・ロバーツと自立生活運動、「自分で選ぶ」には何が必要かも参照してください。

第6章|2027年度改定の検討状況
2026年10月30日の第67回障害福祉報酬改定検討チームでは、①自立生活援助のサービス管理責任者とみなせる相談支援専門員の範囲拡大、②自立生活援助・地域定着支援の日常生活支援情報提供加算について情報提供先を広く病院・診療所へ拡大、③女性自立支援施設に入所する障害者を地域移行支援の対象に追加する案等が示されました。関連して拠点コーディネーターの配置要件見直しも検討されています。いずれも検討案であり、この資料だけで実施が決まったとはいえません。上の比較表は現行制度の説明です。[5:65・67・68・72頁]
一次資料
[1] 障害者総合支援法 第5条第1・17・19・21・22項等(2026年10月1日施行版)。
[2] 厚生労働省 介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領) 令和8年7月版、31~33・80・93~96・108~112頁。
[3] 厚生労働省 障害のある人に対する相談支援について「2.地域生活への移行に向けた支援」。
[4] 厚生労働省 障害福祉サービスの内容、障害者総合支援法施行規則 第6条の10の5~7、第6条の11の2、第6条の12、第6条の13、第6条の14、第15条、第34条の42等。
[5] 厚生労働省 第67回障害福祉報酬改定検討チーム資料(2026年10月30日)、報酬・基準に関する資料。
支援の選択は本人の希望を確かめながら、市町村の障害福祉窓口や相談支援事業者と相談してください。


