認知症対応型デイサービスの報酬見直し案|基本報酬・重度者・社会参加の3論点【2027年度介護報酬改定】
2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向けた認知症対応型通所介護の報酬見直しが検討されました。焦点は、基本報酬の在り方、重度の認知症の人を多く受け入れる事業所への評価、本人の意思決定と社会参加の機会を支える事業所への新たな報酬設定です。
注意:これらは検討段階の対応案です。基本報酬引下げや新報酬創設が決定したわけではなく、算定要件・単位数・実施時期も確定していません。
1.認知症対応型通所介護とは
介護保険法第8条第18項に規定される認知症対応型通所介護は、認知症である居宅要介護者を対象に、老人デイサービスセンター等に通い、入浴、排せつ、食事等の介護、日常生活上の世話や機能訓練を受ける地域密着型サービスです。要支援者向けには介護予防認知症対応型通所介護があります。
通常規模型や地域密着型の通所介護でも認知症のある人が利用しています。厚労省の資料1・41ページでは、認知症対応型通所介護は小規模で専門的なケアを提供するため、他の通所介護より高い基本報酬とされていることが説明されています。
2.事業所と受給者の減少が背景に
資料1・35ページによると、請求事業所数は2015年の3,787から2025年の2,716に減少(各年4月審査分)。約28.3%の減少です。同36ページでは、受給者数が2013年の約59,700人から2025年の約46,700人へと、約21.8%減りました。起点が異なる系列であり、これらの数値だけで減少理由を断定できません。

3.厚労省の対応案は3つ
① 基本報酬の在り方
資料1・41ページは、地域密着型通所介護の報酬体系や単位数も参考にしつつ、認知症対応型通所介護の基本報酬の在り方を検討する案を提示しています。事業所の収入に関わる重要な論点ですが、「引下げが決定した」という意味ではありません。
② 重度者を多く受け入れる事業所の評価
同じ対応案には、認知症高齢者の日常生活自立度からみて重度の利用者を多く受け入れる事業所への評価の検討が含まれます。対象区分、人数基準、算定方法は今後の検討事項です。
③ 「例えば」社会参加の機会を確保する事業所への新報酬
地域住民を含む多様な主体と連携しながら、例えば認知症の人が自ら意思決定し、地域で多様な社会参加の機会を確保する事業所などを評価する、新たな報酬設定を検討する案です。資料が例示としていることに留意し、要件確定と受け取らないようにする必要があります。
資料1・5ページの関係団体等意見交換会に関する記載には、日本認知症本人ワーキンググループによる、サービス利用開始後も外出・就労・地域活動を継続できるよう社会参加支援の評価・報酬を創設してほしいという要望があります。この団体の要望と上記の厚労省対応案は異なる位置付けです。
4.社会参加に取り組む割合
資料1・38ページの速報値では、「地域活動、社会参加」に取り組む事業所の割合は、認知症対応型通所介護37.0%、通常規模型通所介護19.5%、地域密着型通所介護23.9%です。認知症対応型の回答数はn=100で、確定的な全国割合として一般化しないことが重要です。

5.社会参加を「参加させること」にしない
買い物に出かける、なじみの人と会話する、地域で役割を担うなど、社会参加のあり方は一人ひとり異なります。活動の回数を増やすことより、本人が何を希望し、どう選択するかが大切です。外出しないという本人の選択にも耳を傾ける必要があります。
意思を形成し、表明し、実現するための支援については、意思決定支援の基礎解説と、「介護拒否」と本人の意思を考える記事も参考になります。
6.福祉教育ラボの考察:理念を支える条件も問われる
ここからは福祉教育ラボの考察です。本人の社会参加と意思決定を支えるためには、専門職の時間、地域との調整、移動手段、安全管理、家族との情報共有が必要です。認知症の重度な利用者を多く支える事業所の継続可能性も軽視できません。報酬評価と暮らしの豊かさを単純に同一視せず、「本人が望む形で参加できる条件」を考えていきたいと思います。
7.現場では何を確認するか
利用者が以前から続けてきた活動や地域のつながり、現在の希望、参加の障壁、支援体制、本人の意思を確認する手順を点検できます。ただし、検討段階の案を新しい算定要件として扱うことはできません。告示・通知など今後の公表を確認する必要があります。
これまでの論点全般は9月の認知症ケア全体の記事で、同日の別論点は入浴だけの短時間デイサービスの記事で解説しています。
一次資料
- 厚生労働省 第270回介護給付費分科会 資料1(5、35、36、38、41ページ)
- 同分科会 議事次第
- 介護保険法(第8条第14項・第18項)
※2026年10月16日時点の検討資料をもとに作成。制度変更の決定を伝えるものではありません。


