2027年度障害福祉報酬改定|障害児支援24論点、児発・放デイの加算再編と地域連携

【審議中】

2027年度の障害福祉サービス等報酬改定に向け、障害児支援の具体的な見直し議論が始まりました。

厚生労働省とこども家庭庁は、2026年10月5日の第65回「障害福祉報酬改定検討チーム」で、「障害児支援に係る報酬・基準について」を公表しました。

資料は全191ページです。障害児支援全般、児童発達支援・放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、障害児入所施設の5分野について、合計24の論点が示されています。

最初に確認|24項目は決定事項ではありません

今回示されたのは、2027年度改定に向けた「論点」と「検討の方向性」です。

「検討してはどうか」「どのように考えるか」とされた段階であり、新しい報酬単位や算定要件、対象者、経過措置、施行時期がすべて決定したわけではありません。

この記事では、24項目を「決まった変更」としてではなく、「国が具体的な制度設計の候補として示したもの」として整理します。

最初に結論|今回の議論で見えてきた5つの大きな方向

24の論点を横断すると、次の5つの方向が見えてきます。

  1. 職員個人の資格や配置だけでなく、事業所全体の支援体制を評価する
  2. 事業所の中だけで支援を完結させず、学校、保育所、地域の居場所、関係機関との連携を広げる
  3. 医療的ケア児、重症心身障害児、強度行動障害、高次脳機能障害など、支援ニーズの高いこどもへの対応を充実させる
  4. 家族支援や進路移行など、利用時間外・事業所外で行う支援も評価する
  5. 研修、休暇、訪問支援員の経験要件など、人材育成と人員基準を現場運営に結びつける

報酬改定というと「加算が増えるか、減るか」に目が向きがちです。しかし今回の資料は、障害児支援を事業所内のサービス提供だけで捉えず、こどもの生活、家族、学校、地域、成人期への移行まで含めて再設計しようとする内容になっています。

24の論点を5分野に分けて確認

3障害児支援全般
12児発・放デイ
1居宅訪問型
2保育所等訪問
6障害児入所

障害児支援全般|3論点

論点1 障害児支援における研修体系の創設及び制度化

「基礎・実践研修」「リーダー研修」「コア人材研修」の3階層を順次導入し、運営基準上の位置付けや受講対象を検討します。

論点2 個別支援計画作成におけるチーム協働の推進と役割の明確化

児童発達支援管理責任者が最終的な作成責任を担いながら、一般職員も情報整理や支援内容の提案などに関われることを明確にする方向です。

論点3 強度行動障害の状態にあるこどもへの段階的な支援の推進

就学児サポート調査票と強度行動障害判定基準表を整理・統合し、こどもの状態像に応じた段階的支援と自治体間でばらつきの少ない運用を検討します。

児童発達支援・放課後等デイサービス|12論点

論点1 チーム支援の推進に向けた事業所全体の支援体制の評価

児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算を整理・統合し、職員個人の資格や経験年数だけでなく、支援ニーズの高いこどもの受入れや事業所全体の体制を総合的に評価する新たな加算を検討します。

論点2 医療的ケア児・重症心身障害児の受入れ促進に向けた取組への評価の充実

新規受入れに向けた調整や環境整備に加え、事業所間での支援ノウハウの共有、外部の看護職員を活用する医療連携体制加算(Ⅳ)(Ⅴ)の取扱いなどが論点です。受入れ開始前の準備と実際の支援体制を併せて検討します。

論点3 医療的ケア児及び重症心身障害児の安全な受入れ体制の整備

多職種連携、医療安全管理、緊急時対応、医療機関等との連携を評価し、主として重症心身障害児を受け入れる事業所と、それ以外の事業所の役割の違いも踏まえて要件を整理します。

論点4 高次脳機能障害を有するこどもへの支援の充実

高次脳機能障害者支援法の施行を踏まえ、児童発達支援・放課後等デイサービスでも専門的な支援体制を報酬上評価することを検討します。

論点5 地域支援を軸とした中核機能強化加算の在り方

児童発達支援センター等について、地域支援や関係機関との連携をより重視します。中核機能強化職員の役割、専門職の活用、こども家庭ソーシャルワーカーを対象職種に含めることなども検討対象です。

論点6 児童発達支援センターにおける外部搬入による食事提供

児童発達支援センターの外部搬入による食事提供は、2027年4月からの全国展開が予定されています。今回の検討は全国展開そのものの可否ではなく、栄養・衛生管理等を含む実施要件をどう整理するかが論点です。

論点7 学齢期におけるインクルージョンの推進

未就学期の併設・兼務の仕組みを参考に、それぞれの事業の目的や基準に基づく運営を基本としつつ、放課後等デイサービスと放課後児童クラブ等の連携・交流や一体的な運用を検討します。

論点8 児童発達支援・放課後等デイサービスの地域支援機能の強化

事業所職員が保育所、学校、放課後児童クラブ等を訪問して行う助言や環境調整などを評価し、訪問中の人員配置の取扱いも見直す方向です。

論点9 地域における活動参加と居場所の充実に向けた連携強化

学校や保育所だけでなく、習い事、スポーツ、こども食堂、学習支援など地域の多様な資源との連携・協働を報酬上評価することが検討されています。

論点10 家族支援のさらなる充実

保護者等からの緊急的・突発的で対応が難しい相談に対し、関係機関との連絡調整や必要な支援の手配まで行う取組について、新しい評価を検討します。

論点11 高校卒業後の円滑な接続・移行支援

一般就労だけでなく、就労系障害福祉サービスや生活介護などへの移行も含め、学校や進路先との継続的な調整、ケース会議、情報共有、支援の引継ぎを評価する方向です。

論点12 職員の休暇に伴う人員配置の取扱い

保育士または児童指導員が法定休暇を取得し、一時的に配置基準を満たさなくなる場合について、管理者または児童発達支援管理責任者が直接支援に関与し、必要な支援体制を確保することを前提に、柔軟な取扱いを検討します。

居宅訪問型児童発達支援|1論点

論点1 医療的ケア児・重症心身障害児等への切れ目ない支援

居宅訪問型児童発達支援から児童発達支援等の通所支援へ移る際には、移行先との調整や試行利用、多職種カンファレンスなどが必要です。現在1回が上限となっている通所施設移行支援加算の算定回数を見直すことが検討されています。

保育所等訪問支援|2論点

論点1 訪問支援員の基準の見直し

現行の資格要件に加え、訪問支援員へ一定の実務経験を求めることを検討します。人材確保への影響を考慮し、経過措置を設ける方向も示されています。

論点2 併設施設への訪問に係る報酬評価

同一建物・同一敷地内に保育所等と児童発達支援事業所が併設され、日常的な連携や一体的支援が可能な場合、そのこどもへの保育所等訪問支援を算定対象外とすることなど、報酬上の評価を整理します。

障害児入所施設|6論点

論点1 こどもの状態像に応じた支援体制の整備

こどもの状態像や支援ニーズに応じた体制を整えるため、福祉型障害児入所施設の施設類型を一本化する具体案が示されています。人員配置や支援体制の在り方を含め、検討段階の内容です。

論点2 重症心身障害児に対する発達支援の充実

医療的ケアや日常生活上の介助だけでなく、こどもの発達、活動、社会参加を支える体制をどのように評価するかが検討されます。

論点3 家庭的な養育環境の充実

小規模グループケア、居室の個室化、より手厚い職員配置、サテライト型支援などを通じ、継続的な関係と家庭的な養育環境を整える方向です。

論点4 支援ニーズの高いこどもへの支援の充実

被虐待児への個別的な対応、移動できる医療的ケア児への支援、人工内耳を装用するこどもへの対応など、多様で個別性の高い支援ニーズをどう評価するかが論点です。

論点5 家族支援の充実

入所中のこどもと家族の関係を支え、家庭復帰や地域生活も見据えた相談援助・関係調整をどのように充実させるかが論点です。

論点6 関係機関との連携と地域支援機能の充実

児童相談所、自治体、学校、医療、障害福祉サービス事業所等との連携や、入所施設が蓄積した専門性を地域へ広げる機能の評価を検討します。

特に現場への影響が大きい7つの変更候補

1.加配加算と専門的支援体制加算が再編される可能性

児童指導員等加配加算の算定率は8~9割、専門的支援体制加算は5割程度です。国の資料(厚生労働省・こども家庭庁)は、財務省の予算執行調査による「インセンティブとしての役割を果たしているとは言えない」との指摘を紹介しています。

そこで、両加算を整理・統合し、単に有資格者を配置したかではなく、支援ニーズの高いこどもの受入れやチーム支援などを含む事業所全体の体制を評価する案が示されました。

今後は、どの職種を何人配置したかだけでなく、その人材がチームの中でどのように機能し、こどもの支援へつながっているかが問われる可能性があります。

2.個別支援計画は「児発管だけの仕事」からチーム協働へ

調査では、個別支援計画の作成過程で他の職員と協働している児童発達支援管理責任者は80.8%でした。

今回の案は、この実践を制度上明確にしようとするものです。一般職員がアセスメントに必要な情報を整理し、支援目標や具体的な支援内容を提案する一方、最終的な作成責任は引き続き児童発達支援管理責任者が担います。

チーム協働は責任の分散ではありません。現場の知見を計画へ集めながら、誰が全体を管理し、内容を確認するのかを明確にする仕組みです。

3.全常勤職員を対象とする研修案

基礎・実践研修は2027年度、リーダー研修は2028年度、コア人材研修は2029年度から順次導入する予定です。

制度導入時には、指定障害児通所支援、指定障害児入所支援、指定障害児相談支援に配置されている全ての常勤職員へ基礎・実践研修の受講を求める案が示されています。非常勤職員には、役割や勤務実態を踏まえた別の受講枠組みを設ける方向です。

詳しい研修内容は、福祉教育ラボの既存記事「障害児支援に新研修体系|2027年度から「基礎・実践研修」、全常勤職員の受講案」で整理しています。

4.医療的ケア児等は「受け入れた後」だけでなく準備過程も論点に

医療的ケア児や重症心身障害児の受入れには、医療機関との調整、職員研修、緊急時対応、設備や物品の確認など、利用開始前から多くの準備が必要です。

今回の資料は、安全な受入れ体制、新規受入れに向けた準備や連携に加え、事業所間のノウハウ共有や外部看護職員を活用する医療連携体制加算(Ⅳ)(Ⅴ)の取扱いを論点にしています。制度化されれば、受入れ人数だけでなく、安全に受け入れるための組織的な取組がより重視されます。

5.事業所の外にある「生活の場」との連携を評価

インクルージョンに関する論点は、単に放課後等デイサービスの利用を減らすことではありません。

学齢期のインクルージョンについては、未就学期の併設・兼務の仕組みを参考に、放課後等デイサービスと放課後児童クラブ等の連携・交流、一体的な運用が検討されています。加えて、習い事、スポーツ、こども食堂、学習支援など地域の多様な活動の場との連携も別の論点として示されています。

専門性を事業所の中へ囲い込むのではなく、地域へ持ち出し、地域側の環境を整える方向がより明確になっています。

6.家族の緊急相談と高校卒業後の移行を評価

家族支援加算は、計画的な相談援助を中心に設計されています。しかし現場では、家族の状況が急変したとき、相談を受けるだけでなく、行政、相談支援、医療、学校等と連絡を取り、具体的な支援を調整することがあります。

今回、こうした緊急的・突発的な相談対応を新たに評価する案が示されました。

また、高校卒業後についても、一般就労だけでなく、就労系サービスや生活介護等への移行を含め、進路先の探索から支援の引継ぎまでを継続的に評価する方向です。

7.人員基準は研修・休暇・地域支援との両立が課題

質の高い支援には研修や休暇が必要です。一方、児童発達支援や放課後等デイサービスでは、サービス提供時間を通じた人員配置が求められます。

今回の資料では、外部研修の受講、法定休暇の取得、学校等への訪問支援により一時的に配置へ影響が生じる場合について、必要な直接支援体制を確保することを前提に、柔軟な取扱いを検討しています。

人員基準を単純に緩和するというより、こどもの安全と支援の質を維持しながら、職員が学び、休み、地域へ出ていける体制をどうつくるかが問われています。

事業所が今から確認しておきたいこと

現時点で、新しい加算を算定したり、確定していない要件に合わせて人員配置を変更したりする段階ではありません。

ただし、次の点は今から確認できます。

  • 個別支援計画の作成が児童発達支援管理責任者だけに集中していないか
  • 職員の資格や人数だけでなく、チームとして支援を検討する仕組みがあるか
  • 医療的ケア児等の受入れ時に、医療安全や緊急時対応を組織的に確認しているか
  • 学校、保育所、放課後児童クラブ、相談支援等との連携記録を残しているか
  • 家族から緊急相談があったときの連絡・調整体制が決まっているか
  • 高校卒業後を見据え、いつから誰と移行支援を始めるか整理しているか
  • 研修や法定休暇を確保しながら直接支援体制を維持できるか
  • 保育所等訪問支援では、訪問支援員の資格だけでなく実務経験を把握しているか
  • 障害児入所施設では、障害種別ではなく一人ひとりの状態像と生活環境から体制を検討しているか

福祉教育ラボの視点|「事業所の中で完結する支援」からの転換

今回の24論点に共通するのは、支援の質を、一人の有資格者や一つの事業所だけに背負わせない方向です。

個別支援計画はチームでつくる。専門性は地域へ届ける。家族の緊急時には関係機関と動く。高校卒業後の生活へ支援をつなぐ。入所施設でも、こどもの暮らしと継続的な関係を中心に考える。

制度が整えば自動的に支援の質が高まるわけではありません。加算の要件を満たすことが目的になれば、書類や会議だけが増える可能性もあります。

大切なのは、その取組によって、こどもが安心できる場が増えたか、自分の思いを表せるようになったか、家族が孤立しにくくなったか、地域での生活の選択肢が広がったかということです。

報酬や基準は、そのための条件を整える仕組みとして見ていく必要があります。

まとめ|24論点は障害児支援の役割を地域と生活へ広げる議論

第65回障害福祉報酬改定検討チームでは、障害児支援について次の24論点が示されました。

  • 障害児支援全般 3論点
  • 児童発達支援・放課後等デイサービス 12論点
  • 居宅訪問型児童発達支援 1論点
  • 保育所等訪問支援 2論点
  • 障害児入所施設 6論点

中心にあるのは、人材育成、チーム支援、支援ニーズの高いこどもの受入れ、インクルージョン、家族支援、移行支援、地域連携です。

ただし、今回の資料は検討段階です。報酬単位、具体的な算定要件、受講期限、実務経験年数、経過措置、施行時期などは、今後の議論や告示・通知等を確認する必要があります。

福祉教育ラボでは、今後、改定の基本的な考え方、報酬単位案、基準省令・告示・通知が示された段階で、決定事項と検討中の事項を分けて更新します。

主な一次資料

  1. 厚生労働省「第65回 障害福祉報酬改定検討チーム」資料(2026年10月5日) 公式資料一覧
  2. 厚生労働省・こども家庭庁「障害児支援に係る報酬・基準について《論点等》」 論点資料PDF

本記事は2026年10月12日時点で公表されている一次資料を基に作成しています。記載内容には2027年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討案が含まれており、今後変更される可能性があります。