2027年度介護・障害福祉報酬改定|厚労相「物価・賃金上昇を適切に反映
2027年度の介護報酬・障害福祉サービス等報酬について、厚生労働大臣が物価・賃金上昇を適切に反映するための対応を行う考えを示しました。ただし、改定率や基本報酬、具体的な加算はまだ決まっていません。
2026年9月18日、上野賢一郎厚生労働大臣は、2027年度の介護報酬・障害福祉サービス等報酬の定例改定について、 経営状況などを把握したうえで、 物価や賃金の上昇などを適切に反映するための対応を実施していく 考えを示しました。 [1]
改定率、基本報酬、加算、サービスごとの単位数、物価への連動方法はいずれも現時点では未決定です。
2027年度定例改定でも、経営状況・物価・賃金を踏まえて対応する。
賃上げ、経営安定、離職防止、人材確保を重視する。
介護・障害福祉の全体改定率。
基本報酬、加算、具体的な単位数。
物価・賃金をどの指標で反映するか。
「大幅プラス改定が決定」ではありません。
物価上昇率に報酬を自動連動する制度が決まったわけでもありません。
前日の9月17日には第2次高市改造内閣が発足し、上野厚労相は留任しました。 今回の発言は、内閣改造後の会見で示された2027年度改定への考え方です。
厚労相は何を語ったのか
上野厚労相は、介護・障害福祉の現場について、人手不足や物価上昇などによって厳しい状況に直面しているとの認識を示しました。
そのうえで、介護・障害福祉分野では、
- 賃上げ
- 経営の安定
- 離職防止
- 人材確保
を図る必要があるとして、2027年度の定例改定でも、事業者の経営状況などを把握したうえで、物価や賃金の上昇を適切に反映するための対応を行う考えを示しました。 [1]
介護では、物価・賃金上昇への対応と同時に、制度の持続可能性を確保するための給付の効率化・適正化も検討されています。 個別に引き上げられる部分と見直される部分を合わせた結果、全体の改定率がどうなるかはまだ分かりません。
補正予算→期中改定→定例改定という三段階
今回の発言は、2027年度改定だけを切り取るよりも、これまでの対応を時間軸で見ると分かりやすくなります。
賃上げ、職場環境改善、サービス継続、テクノロジー導入、協働化などを緊急支援。
本来の2027年度定例改定を待たず、介護・障害福祉とも報酬を臨時に見直し。
経営状況、物価、賃金、人材確保などを踏まえ、制度全体として具体策を検討。
大臣自身も9月18日の会見で、 「令和7年度補正予算による緊急的な対応」「令和8年度の臨時の報酬改定」、その上で「令和9年度の定例改定」という流れで説明しています。 [1]
2025年度補正予算では、すでに緊急支援が行われた
2025年度補正予算の「医療・介護等支援パッケージ」では、介護分野で職員の賃上げ・職場環境改善、事業所・施設のサービス継続、介護テクノロジー導入や協働化・経営改善などへの支援が盛り込まれました。 [2]
障害福祉分野でも、賃上げやテクノロジー導入などを含む支援が実施されています。
つまり、物価高や人材流出への対応は2027年度改定から始まる話ではありません。
緊急支援を行い、その後に期中改定を行い、さらに2027年度の定例改定へつなげていくという流れになっています。
2026年度には、異例の期中改定が行われた
全体の改定率
処遇改善分
改定率
介護報酬では+2.03%の期中改定が行われ、そのうち介護分野の職員の処遇改善分が+1.95%とされました。 [3]
幅広い介護従事者を対象とした賃上げや、生産性向上・協働化に取り組む事業者への上乗せなどが盛り込まれています。
障害福祉サービス等報酬も+1.84%の期中改定となりました。 福祉・介護職員だけでなく障害福祉従事者へ処遇改善の対象を広げています。 [4]
また、これまで処遇改善加算の対象外だった 計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援にも処遇改善加算が新設 されました。 [4]
処遇改善加算が実際の給与へどのようにつながるのかについては、 「介護職員等処遇改善加算は給与にどう届く?」 でも整理しています。
「物価・賃金を反映」は今回初めて出た方針ではない
一方、9月18日の発言を「新しい政府方針が突然示された」と捉えるのも正確ではありません。
介護報酬については、2025年12月の予算編成・大臣折衝の段階ですでに、2027年度改定に向けて介護事業経営実態調査などにより経営状況を把握し、物価や賃金の上昇などを適切に反映するための対応を行う方向が示されていました。 [8]
障害福祉についても、2025年12月の大臣折衝事項で、介護分野との収支差率や賃上げ状況の違い、障害福祉分野の総費用額の伸びなどを踏まえて対応する考え方が示されています。 [4]
したがって、今回注目したいのは「物価対応という考え方が初めて出た」ことではありません。
第2次高市改造内閣の発足後、留任した厚生労働大臣が2027年度の介護・障害福祉双方について、 定例改定でも物価・賃金上昇への対応を行う方向を改めて確認した ことにあります。
現場からは「加算だけでなく基本報酬を」という声も
では、物価や賃金への対応を、どこで評価するのでしょうか。
ここはまだ決まっていません。
2027年度介護報酬改定に向けた関係団体との意見交換では、事業者側から具体的な要望が出ています。
9月10日の第265回介護給付費分科会で、地域共生ケア全国ネットワークは、訪問介護について、一時的な補助や加算ではなく基本報酬を引き上げることを要望しました。 [5]
同じ第265回の資料5では、全国介護事業者連盟も、物価高への対応として 基本報酬と処遇改善を含む大幅な報酬増 を求めています。 [5]
同団体は9月14日の第266回でも意見を提出し、報酬増とあわせて、生産性向上、事務負担軽減、自立支援・重度化防止、科学的介護などを進める制度設計を求めました。 [6]
基本報酬の引上げや大幅な報酬増は、関係団体から出されている要望です。 厚生労働省が2027年度改定の方針として決定したものではありません。
つまり今後は、「何%上げるのか」だけでなく、
- 基本報酬で対応するのか
- 処遇改善加算などの加算で対応するのか
- 特定サービスを重点的に評価するのか
- 補助金など報酬外の支援を組み合わせるのか
という 「どこで評価するのか」 も重要な論点になります。
同じ会見で「報酬」と「利用者負担」が語られた
今回の会見でもう一つ見落とせないのは、事業者への報酬だけが語られたわけではないことです。
上野厚労相は同じ回答の中で、社会保障制度を持続可能なものにする観点から、高齢者の医療費の窓口負担割合や、 介護保険における2割負担の判断基準についても、関係審議会で検討していく考えを示しました。 [1]
物価、人件費、経営状況を報酬へどのように反映するかが議論されています。
介護保険の2割負担の判断基準など、給付と負担の見直しも同時に進んでいます。
両者は別の制度論点ですが、 必要なサービスを維持しながら、社会保障制度をどう持続させるのか という課題の中で並行して検討されています。
介護保険の2割負担については、9月18日の第136回社会保障審議会介護保険部会でも判断基準の見直しが議論されました。 新しい所得基準は、現時点ではまだ決定していません。 [7]
詳しくは、 「介護保険『2割負担』対象拡大を再検討」 で整理しています。
改定率だけを見ても、現場への影響は分からない
事業者にとって、2027年度の全体改定率は重要です。
しかし、実際の経営への影響は「プラス何%か」だけでは決まりません。
基本報酬がどう変わるのか。 処遇改善加算がどうなるのか。 サービスごとの評価や算定要件がどう変わるのか。 給付の効率化・適正化がどこで行われるのか。
それぞれを合わせて見る必要があります。
介護では、処遇改善、生産性向上、虐待防止・安全管理、BCP、ハラスメントなど複数の論点が並行して検討されています。
全体像は、 「2027年度介護報酬改定の5論点」 で整理しています。
障害福祉でも、人材確保だけでなく、地域生活、多様なニーズへの対応、サービスの質、制度の持続可能性、人口減少地域への対応などが同時に議論されています。
詳しくは、 「2027年度障害福祉報酬改定、4つの主要論点」 を参照してください。
今後、何を確認すればよい?
これから確認したいのは、全体改定率だけではありません。
特に、介護事業経営実態調査や障害福祉サービス等の経営データを、最終的な報酬設定の根拠としてどのように使うのかが重要になります。
また、賃金を考えるうえでは最低賃金との関係も無視できません。
福祉事業者は、労働市場の賃金が変化する一方で、自ら自由にサービス価格を変更できない公定価格の中で人材を確保する必要があります。
最低賃金との関係については、 「2026年度最低賃金は全国平均1,177円|物価・生活費・介護現場への影響を分析」 でも整理しています。
「何%上がるか」の前に、公定価格をどう動かすのかを見たい
介護や障害福祉の多くは、公的に決められた価格の中でサービスを提供しています。
一般の商品やサービスのように、人件費や光熱費、食材料費が上がったからといって、事業者が自由に販売価格を変更することはできません。
だからこそ、物価や賃金が上昇する経済の中で、 公定価格をどのように動かすのか という問題は、2027年度改定だけの問題ではありません。
一方、社会保障には限られた財源があり、利用者負担、保険料、税、給付の効率化とも切り離せません。
今回の会見では、その両面が同じ回答の中で語られました。 [1]
事業を続けられる報酬はいくらなのか。
働き続けられる賃金はいくらなのか。
利用者が必要なサービスを使い続けられる負担はいくらなのか。
そして、それを社会全体でどう支えるのか。
2027年度改定では、「プラス何%だったか」だけでなく、 人を支えるサービスに必要なコストを、社会保障制度がどのように捉えるのか まで見ていく必要があります。
まとめ|2027年度改定は「物価をどう公定価格へ反映するか」の具体化へ
2026年9月18日、厚生労働大臣は、2027年度の介護報酬・障害福祉サービス等報酬の定例改定でも、経営状況を把握したうえで物価や賃金の上昇を適切に反映するための対応を行う考えを示しました。 [1]
ただし、現時点で、
- 2027年度の全体改定率
- 基本報酬の引上げ幅
- 処遇改善加算の具体的な扱い
- サービスごとの単位数
- 物価・賃金を反映する方法
は決まっていません。
また、「物価・賃金を反映する」という方針自体は今回初めて示されたものではありません。
2025年度補正予算による緊急支援、2026年度の期中改定を経て、2027年度の定例改定へと議論がつながっています。
今後の焦点は、 「物価や賃金を考慮するか」ではなく、「何を、どこで、どの程度評価するのか」 へ移っていきます。
福祉教育ラボでも、改定率、基本報酬、処遇改善、サービス別の評価、利用者負担などについて、決定事項と審議中の内容を分けながら追っていきます。
一次資料
本記事は、2026年9月21日時点で確認できる厚生労働省等の一次資料をもとに整理しています。
- 厚生労働省|上野大臣会見概要(令和8年9月18日) 2027年度の介護報酬・障害福祉サービス等報酬について、賃上げ、経営安定、離職防止、人材確保、物価・賃金上昇への対応方針を確認できます。同じ会見で介護保険の2割負担の判断基準にも言及しています。 会見全文を確認する
- 厚生労働省|令和7年度厚生労働省補正予算のポイント 介護・障害福祉分野における賃上げ、職場環境改善、サービス継続、テクノロジー導入、協働化等への緊急支援を確認できます。 補正予算資料(PDF)を確認する
- 厚生労働省|令和8年度介護報酬改定について 2026年度の介護報酬改定率+2.03%、処遇改善等の内容を確認できます。 令和8年度介護報酬改定の公式ページを確認する 介護給付費分科会一覧を確認する
- 厚生労働省|令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について/大臣折衝事項 改定率+1.84%、障害福祉従事者への処遇改善の拡大、計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援への処遇改善加算新設などを確認できます。 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定を確認する 大臣折衝事項(令和7年12月24日・PDF)を確認する
- 厚生労働省|第265回社会保障審議会介護給付費分科会(令和8年9月10日) 地域共生ケア全国ネットワーク、全国介護事業者連盟などによる2027年度介護報酬改定への要望を確認できます。全国介護事業者連盟は資料5です。 第265回の資料一覧を確認する
- 厚生労働省|第266回社会保障審議会介護給付費分科会 資料12(全国介護事業者連盟) 2027年度介護報酬改定に向けた全国介護事業者連盟の意見を確認できます。 第266回 資料12(PDF)を確認する
- 厚生労働省|第136回社会保障審議会介護保険部会 介護保険の給付と負担、2割負担の判断基準など、利用者負担側の議論を確認できます。 第136回介護保険部会の資料を確認する
- 厚生労働省|第252回社会保障審議会介護給付費分科会/令和8年度予算に関する大臣折衝事項 2025年12月24日の大臣折衝を受けた介護報酬改定の内容と、その後の2027年度改定を見据えた政策の流れを確認できます。 第252回介護給付費分科会議事録(PDF)を確認する 令和7年12月24日の大臣会見を確認する


