ショートステイの長期利用減算を見直す案|31日以降の報酬と季節利用の例外【2027年度介護報酬改定】
本記事は、2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会で示された、2027年度介護報酬改定に向けた「対応案」を解説するものです。改定が決定したという意味ではありません。単位数、例外の対象地域・利用者・手続、施行時期などは、今後の審議や告示・通知を確認する必要があります。
ショートステイ(短期入所生活介護)を連続して長く利用する人の報酬を、どのように評価すべきか。厚生労働省は2026年10月14日、社会保障審議会介護給付費分科会で、現行の「31日以上」と「61日以上」で異なる長期利用の報酬上の扱いを見直す案を示しました。焦点は、31日以降の報酬をより長期の利用者と同程度にする方向と、積雪・猛暑・農繁期など、在宅生活を続けるために中長期の利用が必要になる人への例外的な配慮です。何が現行制度で、何がまだ案なのかを整理します。
1.今回の対応案は何か――二つの方向性
第一は、短期入所生活介護における長期利用の報酬水準の見直しです。現行では、連続31日から60日までの長期利用者には1日30単位の長期利用者減算があり、61日以降には「(ユニット型)介護福祉施設サービス費」と同単位数へ調整する「長期利用の適正化」が設けられています。今回示されたのは、31日以上の長期利用者について、61日以上の利用者と同程度((ユニット型)介護福祉施設サービス費と同単位数)にしてはどうか、という案です。
第二は、地域の実情による例外の検討です。積雪期、猛暑期、農繁期などに在宅での暮らしを続けるため、一時的に中長期のショートステイ利用が必要となる場合があります。厚生労働省は、こうした「季節利用ニーズのみ」の利用者について、例外的に減算を適用しない仕組みを検討してはどうかとしています。
ここで重要なのは「長期利用減算を廃止して、全員の報酬を引き上げる」という話ではないことです。現行の30単位減算という形を見直しながら、31日以降の報酬を61日以降と同程度にすることが提案の中心です。具体的な単位数が決まったわけではありません。
2.ショートステイは本来どのようなサービスか
短期入所生活介護は、利用者が可能な限り自宅で生活を続けられるよう、特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し、食事・入浴・排せつなどの日常生活上の介護や機能訓練を受けるサービスです。家族の介護負担を和らげる役割もあります。
しかし、現場には、特養への入所待ち、同居家族の介護力の低下、一人暮らしの不安、地域で利用できる支援の不足などにより、利用が長期化する事情もあります。これらをすべて同じ理由と考えることはできません。
短期入所を長期間利用することと、本人が望む在宅生活を維持することは、時に緊張関係にあります。一律に「長期利用は不適切」と見るのではなく、必要なサービスが地域に存在するのか、本人や家族にどのような選択肢があるのかを確認する必要があります。
3.現行制度――31~60日と61日以降の違い
短期入所生活介護の現在の報酬上の扱いを、連続利用日数に着目して整理すると次のようになります。
- 連続30日まで:長期利用者減算・長期利用の適正化による報酬調整の対象となる期間ではありません。
- 連続31~60日:長期利用者減算(1日30単位)を適用する仕組みがあります。
- 連続61日以降:2024年度介護報酬改定で設けられた「長期利用の適正化」により、原則として「(ユニット型)介護福祉施設サービス費」と同単位数に調整する扱いです。ただし、併設型では追加の減額を行わない場合があります。施設類型によって報酬の扱いは異なります。
施設類型による違いにも注意が必要です。令和6年度改定事項の要介護3の例では、併設型は31~60日も61日以降も715単位です。そのため今回の案が採用されても、すべての施設類型で一律に単位数が減るとは限りません。また、要支援者を対象とする介護予防短期入所生活介護は、連続31日以降にすでに長期利用の適正化が適用され、要支援1は(ユニット型)介護福祉施設サービス費の要介護1の75%、要支援2は93%に相当する単位数を算定します。今回の論点である短期入所生活介護の31~60日の30単位減算とは、取扱いが異なります。
なお、長期利用減算・長期利用の適正化という「事業所が算定する報酬単位の調整」と、短期入所サービスの「連続利用に関する介護保険給付上の取扱い」は別の論点です。現行制度では、短期入所サービスの保険給付対象となる連続利用は原則30日までで、連続30日を超える日の短期入所生活介護費は算定できません。たとえば31日目を全額自己負担で利用することで、32日目以降を再び保険給付対象として扱える場合もありますが、同一事業所への継続した入所日数を基準とする減算・適正化の評価とは区別する必要があります。こうした保険給付・自己負担の具体的な取扱いを、今回の改定案だけで変更すると読むことはできません。個々の請求では現行の告示・通知・自治体Q&Aを確認してください。
4.なぜ31日以降の見直しが議論されるのか
厚生労働省が示した2026年10月14日の資料4は、短期入所生活介護の利用実態を踏まえて長期利用の適正化を検討する資料です。同資料で示された介護給付費等実態統計の算定回数ベースの集計では、2024年度(令和6年度)に連続31日以上の利用に当たる算定は、基本報酬の総算定回数に占める割合が33.1%(資料4の表記)でした。また、連続61日以上の算定は、31日以上の算定の約8割を占めています。いずれも報酬の算定回数を基にした割合であり、利用者の人数の割合ではありません。
また、資料4の別の利用者属性集計では、31日以上の長期利用者のうち121日以上利用した人の割合が52.1%、要介護3が41.6%、要介護4が30.0%と示されています。これは前段の算定回数ベースの集計とは別の集計であり、割合を直接比較できません。こうした利用実態からは、31~60日で利用を終えず、より長く利用する人が一定数いることがうかがえます。ただし、利用日数だけでは、長期化した理由や本人の生活上の必要性までは分かりません。
長期利用の報酬を施設入所の水準に近づけるという提案の背後には、短期利用の制度目的と実際の長期利用との関係、施設サービスとの報酬の均衡をどのように考えるかという課題があります。
5.積雪・猛暑・農繁期に例外を設ける案とは
地域によっては、冬季の積雪で自宅での移動や買い物が難しくなる、夏季の猛暑によって生活環境に危険が生じる、農繁期に家族の介護力が一時的に低下する、といった事情があります。こうした時期にショートステイを利用できることが、その後の在宅生活を支える場合も考えられます。
今回の対応案は、積雪期・猛暑期・農繁期等の「季節利用ニーズのみ」の利用者を念頭に、地域の実情等に応じて、在宅生活の継続に必要な中長期利用への対応を確保するため、例外的に減算を適用しない仕組みの検討を示しています。
ただし、現段階で「積雪地なら全件対象」「農繁期なら自動的に減算なし」「何日でも減算なし」と決まったわけではありません。対象となる地域・事情・連続日数・確認資料・算定手続は未確定です。
重要なのは、通常の長期利用と、在宅生活を支えるための季節的・地域的な利用を一律に扱わないという視点が、対応案の中に置かれたことです。
6.利用者・家族・事業所への影響をどう考えるか
利用者や家族にとって、ショートステイは介護者の休息や家庭生活の維持、本人の安全確保に関わる選択肢です。一方、長期利用者の報酬水準が見直されれば、事業所は受け入れ体制や収支の見通しを改めて考える必要が生じる可能性があります。
ただし、今回の資料から「利用者の支払いが一律にいくら上がる」「すべての事業所の収入が何%下がる」と計算することはできません。施設類型、要介護度、利用日数、加算、保険給付の取扱いなどを踏まえた確定した単位数が必要です。
また、長期利用を減らせば自動的に在宅生活が実現するわけでもありません。特養の待機状況、在宅サービスの提供体制、家族の介護負担、災害や季節条件など、代替となる支援の有無が重要です。これらは今後の制度設計を評価するうえでの福祉教育ラボの考察です。
7.短期入所療養介護も同じように変わるのか
今回の分科会では短期入所療養介護(老健、介護医療院、医療機関などで提供する医療・看護を伴うショートステイ)についても別資料で議論されています。現行では短期入所生活介護と同じ長期利用減算・適正化の扱いはありません。
厚生労働省は、短期入所療養介護の利用日数に関するデータを精査したうえで、短期入所生活介護の対応を踏まえた仕組みを検討してはどうかとしています。したがって、「短期入所療養介護も31日以降の減算が決まった」とは言えません。両サービスを区別して読む必要があります。
8.介護支援専門員・相談員・管理者が今確認したいこと
現時点で事業所や介護支援専門員が新しい減算を先取りして算定する必要はありません。まず現行の報酬告示・留意事項通知・Q&Aに基づく請求と説明を維持してください。
今後の議論に備えるうえでは、長期利用の背景(本人・家族の希望、介護者の状態、代替サービスの確保状況)、季節的な必要性、在宅復帰や地域生活への支援方針、本人の意思決定支援の記録を整理しておくことが考えられます。
こうした記録を「例外を必ず算定するための新しい義務」と受け取ってはいけません。例外制度の算定要件はまだ決まっていません。本人にとって必要な支援を見失わず、今後の制度変更を検討するための実務上の準備として位置づけます。
9.今後の確認点――何がまだ決まっていないのか
今回の対応案について、①31日以降の具体的な単位数と算定構造、②季節的・地域的な例外の範囲と認定方法、③短期入所療養介護への対応、④現在の連続利用・保険給付のルールとの関係、⑤施行時期と経過措置は、いずれも今後の確認を要します。
厚生労働省の分科会資料や、その後の審議報告、告示・通知・Q&Aを継続して確認する必要があります。
まとめ――利用日数と、生活を支える必要性の両方を見る
2027年度介護報酬改定に向け、短期入所生活介護の連続31日以降の報酬を61日以降と同程度にする方向と、積雪・猛暑・農繁期などの利用について地域の実情に応じた例外を設ける方向が検討されています。現時点では、どちらも決定事項ではありません。
ショートステイの「短期」という制度目的を大切にすることと、長期利用が必要になった本人の生活背景を理解することは、対立するとは限りません。制度を適正に運用するだけでなく、必要な人が必要な時期に必要な支援へつながれるか。その視点を持ちながら、今後の議論を追いたいと思います。
一次資料
- 厚生労働省「第270回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」(2026年10月14日)
- 同「資料4 短期入所生活介護」(2026年10月14日)
- 同「資料5 短期入所療養介護」(2026年10月14日)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(短期入所生活介護における長期利用の適正化:140ページ)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム:短期入所生活介護」
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(告示第19号、短期入所生活介護の注)
- 名古屋市「短期入所サービスは連続して30日しか利用できないのか?」


