デイサービスの送迎減算を見直しへ|突発キャンセルと共同送迎の拡大案【2027年度介護報酬改定】
2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向けて、通所介護の送迎減算と共同送迎の見直し案が示されました。ポイントは、利用者が通所した日の突発的な送迎キャンセル、共同送迎の取扱いの明確化、児童の通園・通学や地域の買い物支援との同乗範囲の拡大です。いずれも検討段階であり、現時点で適用が決まった制度変更ではありません。通所リハビリテーションについても同様の検討が示されています。
1.送迎減算とは|片道47単位の仕組み
通所介護では、送迎に係る費用が基本報酬に含まれています。居宅と事業所の間の送迎を行わなかった場合は、原則として片道につき47単位を減算します。つまり、別途「送迎加算」を上乗せする話ではなく、送迎を行わなかった場合の減算です(資料1・30、57ページ)。
2.今回の論点①|家族が代わりに送った日も減算される?
例えば、事業所の車が利用者宅まで迎えに行ったものの、利用者や家族の都合で、当日は家族が事業所まで送ることになったとします。利用者は事業所に来て、予定していたサービスを受けています。それでも事業所は往路の送迎を行っていないため、現行の取扱いでは送迎減算の対象になります(資料1・30ページ)。
事業所は既に車両を動かし、職員の時間や燃料費を負担しています。今回の対応案は、例えば利用者宅まで迎えに行った際に生じるような「突発的な送迎のキャンセル」を、例外的に送迎減算の対象から外すことを検討するものです(同32ページ)。
ここで扱うのは、利用者が通所し、サービスが提供された場合の「送迎を誰が行ったか」という問題です。利用者が欠席し、そもそも通所サービスを提供していない場合の基本報酬とは別の論点です。また、「突発的」と判断する具体的な条件や必要な記録方法は決定していません。
資料1・22ページの調査(速報値、n=1,237、複数回答)では、送迎減算を算定する理由として「利用者・家族都合による突発的な送迎のキャンセル」を挙げた事業所が58.4%でした。この数字は、送迎減算を算定する理由について回答した事業所の割合であり、全送迎件数の58.4%がキャンセルされたことを意味しません。

3.今回の論点②|共同送迎は既に一定の条件下で可能
令和6年度介護報酬改定Q&A(Vol.1)問67では、第三者に送迎業務を委託し、受託事業者が送迎を行った場合、送迎減算は適用されないと整理されています。複数事業所による共同委託でも、費用負担・責任の所在などの条件を事業者間で合意し、利用者の利便性や各事業所の通常の事業の実施地域などの条件を満たす必要があります。障害福祉サービス事業所の利用者との同乗についても取扱いが示されています。
今回の案は、共同送迎を初めて認めるものではなく、他法人・他事業所が連携する場合の取扱いをさらに明確にするものです。
4.今回の論点③|児童の通園・通学や買い物支援への拡大案
資料1・32ページでは、雇用契約や業務委託契約などによって責任の所在を明確にすることを前提に、「送迎を実施した」と認められる同乗の範囲を広げる案が示されました。現在認められている他の介護サービス事業所・障害福祉サービス事業所の利用者との同乗に加え、児童の通園・通学、地域の買い物支援などを例示しています。通所リハビリテーションも同様に検討対象です。
同資料は背景として、地域の輸送資源を幅広く活用する方向性を挙げています。ただし、この介護報酬上の案と、地域公共交通に関する法改正は別の制度です。法改正の施行状況だけをもって同乗範囲が直ちに拡大したとは判断できません。
5.現場の負担を示す数字
資料1・20ページの調査では、送迎に関する課題として「燃料費、車両リース料・購入費、修理代、保険料等の負担が大きい」が80.7%、「運転・送迎に従事する職員の確保が難しい」が63.1%でした(n=1,511、複数回答)。

こうした課題を踏まえると、共同送迎には負担軽減の可能性があります。しかし、同乗者の安全、乗降介助、送迎時間、費用負担、事故時の責任分担は十分な検討が必要です。現行制度では、キャンセル料について説明や同意による確認などを行った上で利用者から受け取る場合があることも資料に記されています。これと送迎減算は区別して考えます。
6.福祉教育ラボの視点|送迎は地域の生活基盤
ここからは福祉教育ラボの考察です。送迎は単なる移動の効率化ではなく、本人が必要な支援を利用し、地域で暮らし続けるためのアクセス手段です。共同送迎が効率化につながるとしても、車いす利用者の乗降時の安全性や、送迎時間が長くなることによる負担に目を向けなければなりません。
関連記事:車椅子の送迎事故と安全対策/通所介護の44.8%が赤字(WAM調査)/特定地域サービスと人口減少地域の介護
人手や車両が限られる地域では、事業所を超えた協働が移動機会を守る可能性があります。他方で、共同化そのものを目的化せず、本人の希望、移動の安全、継続的に通える仕組みを考えることが大切です。
7.今後の確認点
現在示されているのは検討案であり、例外的な送迎減算の要件、共同送迎の拡大範囲、算定上の取扱いは確定していません。事業所は、現時点の報酬告示・通知・Q&Aに沿って請求し、今後の審議会、告示、通知等の情報を確認する必要があります。
同じ分科会で示された別の論点は、デイサービスの入浴だけの短時間利用をめぐる記事でも整理しています。
一次資料
厚生労働省・第270回介護給付費分科会 資料1(17~18、20、22、30、32、57ページ)
同分科会 議事次第(「令和9年度介護報酬改定に向けて」)
※2026年10月16日時点の検討資料に基づく内容であり、制度変更の決定を伝えるものではありません。


